ロルフ・ドベリのThink Smart 間違った思い込みを避けて、賢く生き抜くための思考法の書評


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Think Smart 間違った思い込みを避けて、賢く生き抜くための思考法
著者:ロルフ・ドベリ
出版社:サンマーク出版

本書の要約

人は多くの「思考の誤り」に陥り、幸せを逃しています。優秀な部下がいたら、出世を邪魔するのではなく、彼を推薦することで、よい結果を得られます。また、人は楽観的に未来を描きがちで、時間やコストの予測を間違える「計画錯誤」に陥りやすいので、事前にしっかりと見積もるようにしましょう。

自分より優秀な人を推薦すべき理由。

Aクラスの人は、Aプラスの人を採用するものだ。つまり、自分よりももっと優秀な人を雇おうとする。だがBクラスの人は、自分の部下としてCクラスの人を採用する。そのCクラスの人は自分の部下にDクラスの人を採用し、そのDクラスの人はまた自分の部下にEクラスの人を採用する。そうすると結局、その会社は数年後にはZクラスの社員ばかりになってしまう。(ガイ・カワサキ)

getAbstract」の創業者、コラムニストのロルフ・ドベリは、「Think Smart」の中で「社会的比較バイアス」を紹介しています。人は自分より優秀な人を推薦するのを嫌がります。能力のある人の後押しをすれば、長い目で見れば成功に近づけますが、人は幸せな未来を予測できずに、短期的な損得で「思考の誤り」を起こします。

心理学者のスティーヴン・ガルシアと共同研究者たちは、「あるノーベル賞受賞者が、自分が勤める大学のポストに将来性のある若い研究者が応募するのを阻害したケース」を紹介しています。後進の優れた研究者を支援したくない気持ちはわかりますが、長い目で見れば、この行動が逆効果であることがわかります。

若く才能のある人間がほかの研究グループに入ることで、若い知性が別の研究のために活かすことになります。自分の研究に優秀な力を活用したほうが、結局は自分のためになるのです。ガルシアは、長期間継続して世界のトップにある研究グループがほとんど見られないのは、「社会的比較バイアス」が原因だろうと推測しています。

「社会的比較バイアス」は、スタートアップ企業が犯しがちです。アップルで4年間、チーフ・エバンジェリストをつとめ、著者としても活躍するガイ・カワサキの冒頭の言葉を読めば、スタートアップこそ優秀なメンバーを雇うべきであることがわかります。私の周りの成功者たちは、自分より優秀な部下を雇うことを厭いません。漢の劉邦のように、力のあるメンバーを集めることが成功するためには必要です!

自分より優秀な人を採用することをルールにしなければ、やがてあなたの会社はそのうち、能力の低い人しかいなくなってしまいます。そのうえ、そうした人たちには「ダニング=クルーガー効果」によって、誤った選択をします。能力の低い人は自らの発言・行動などについて、実際よりも高い評価を行ってしまいます。この優越の錯覚が、組織の成長を阻害します。ダメな組織を作らないために、自分より優れたメンバーを採用し、失敗を避けるようにしましょう。

その時点では自分の地位がおびやかされるように感じるかもしれないが、長い目で見ればプラスになる。優秀な人は、どのみちあなたを追い越していく。だからそれまでのあいだは、彼らとよい関係を築き、彼らから学んだほうがいい。(ロルフ・ドベリ)

25歳のアイザック・ニュートンが、自分が余暇を利用して行った研究を教授のアイザック・バローにすべて見せるとバローは自らの職を辞して、教え子であるニュートンを後任に指名したという逸話があります。自分より適任者がいたからという理由で、バローは即座に教授職を辞退し、ニュートンに席を譲ったのです。長い目で見ると、バローはニュートンに機会を与えた人として、歴史に名を残します。優秀な若い世代を見つけたら、彼らの支援をし、彼らとともに人生を歩んだほうがよい結果を得られます。

失敗を導く「計画錯誤」を避ける方法。

これまでに立てた計画のほとんどは楽観的すぎたとわかっているのに、今日だけは例外で、予測したとおりにことが運ぶのではないかとあなたは毎回大まじめに思い込む。ダニエル・力ーネマンはこの現象を、「計画錯誤」と呼んでいる。(ロルフ・ドベリ)

本書にはいくつもの「思考の誤り」が紹介されていますが、「計画錯誤」も多くの人が陥ります。カナダの心理学者、ロジャー・ビューラーと彼の研究チームは、最終学期の卒業論文を控えた学生たちにふたつの質問をしました。 学生たちは、論文を提出できる(a)”現実的な”期日と、(b)”最悪の事態が起きた場合”の期日を答えました。しかし、結果的に”現実的な”期日を守れた学生は、全体のわずか30パーセントにすぎませんでした。平均すると学生たちは論文執筆に見積もりの倍近くの時間を要していて、それは”最悪の事態が起きた場合”の期日よりさらに一週間長かったのです。

この「計画錯誤」は学会、経済界、政界など様々な現場で起こります。プロジェクトに必要な時間は楽観的に見積もられ、そのメリットも過大評価されます。その一方で、プロジェクトのコストとリスクは過小評価されがちです。

シドニーのオペラハウスは、1957年に計画され、竣工予定は1963年でした。工費は700万ドルと見積もられていましたが、実際に建物が開館したのは1973年で、かかった総工費は1億200万ドルになっていました。工期は余計に10年かかり、コストは14倍に膨れ上がっていたのです。

私たちはなぜ、「正確に計画を立てること」ができないのでしょうか?理由は2つあると著者は言います。
1、人は現実を無視した「希望的観測」で計画を立てる傾向がある
2、「プロジェクトだけ」に意識が向いてしまい、それ以外の影響を考慮しようとしない

自分の実力を顧みず、希望的観測を作れば、目標達成は難しくなります。電車が遅れたり、風邪を引くなど、私たちの生活には「突然起きた予想外の出来事」が起こります。予想外の出来事のために計画が妨げられることは十分にありえます。

綿密な計画を立てても、予定どおりに物事が進むわけではありません。細かく計画を立てると、「計画錯誤」は一段と強くなると著者は指摘します。プロジェクトだけに意識が向き、予想外の出来事をよけい考慮しなくなるからです。

しっかりとしたプランを作りたければ、あなたの目を「内側」(つまりあなた自身のプロジェクト)ではなく「外側」に向けて、類似の計画だけを見るようにすべきです。過去の同じようなプロジェクトに 3年を要し、500万のコストがかかったなら、いまのプロジェクトにもおそらく同じだけ、あるいはそれ以上の時間とコストがかかります。

そして、もっとも重要なのは、プロジェクトにゴーサインが出る少し前に、いわゆる「死亡前死因分析」をして、想定できる失敗への対応策を計画に盛り込んでおくことです。アメリカの心理学者、ゲイリー・クラインは、プロジェクトの関係者を集め、「死亡前死因分析」を行うことを推奨しています。

いまが1年後だと想像してください。私たちはこの資料に書かれている計画を実行しましたが、結果は大失敗に終わりました。5分から10分、時間をあげますから、計画が失敗に至るまでの過程を書いてみてください。(ゲイリー・クライン)

自分が書いた架空の物語は、プロジェクトがどんな経過をたどる可能性があるかを示してくれます。希望的観測をできるだけ排除し、様々なトラブルを考慮することで、最適な工期とコストを算出できます。計画を成功させたければ、人が陥りがちな「計画錯誤」を避けるようにすべきです。

この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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