人を動かす「正論」の伝え方(藤井聡) の書評

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人を動かす「正論」の伝え方
藤井聡
クロスメディア・パブリッシング(インプレス)

本書の要約

お金と力は強者が独占しています。それに対して言葉に関しては強者も弱者も関係ありません。基本的には誰もが自由に使うことができ、弱者も言葉を活用することで、強者に対抗できるようになります。弱者にとって、「正論」こそが、唯一無二の武器になります。

人を動かす最強の力が正論である理由

正論とは弱者が強者に立ち向かう唯一無二の武器。(藤井聡)

京都大学大学院工学研究科教授の藤井聡氏のラジオ番組を毎週楽しみに聞いています。藤井氏は権力に対して忖度することなく、正論で戦います。維新の大阪都市構想も正論を説き続けることで、世論を動かし、2度の否決を勝ち取りました。財務省の増税路線が間違いであると言う指摘も一貫しており、その姿勢に共感を覚えます。

人を動かすためには何が必要なのでしょうか?

藤井氏は以下の3つが必要だと指摘します。
1、お金
2、力(権力)
3、言葉

お金と力は強者が独占しています。それに対して言葉に関しては強者も弱者も関係ありません。基本的には誰もが自由に使うことができ、弱者も言葉を活用することで、強者に対抗できるようになります。弱者にとって、「正論」こそが、唯一無二の武器になります。

政治や行政の世界では、特定の方向に人々を誘導しようとわざと難しい言葉を使ったり、わかりにくい説明を多用します。彼らは一見、正論を吐いているようですが、実は邪論で世の中を煙に巻き、自分の都合のよい世界を築いているのです。

政治家や官僚は専門的な領域における情報、そして権限を自分たちで独占して、優位性を保とうとします。専門用語や業界用語などを多用して、わざと一般人に情報を伝わりにくくしています。

一般の人はそれらの議論を聞いて、「なんだかわからないけど、この人は正しいことを言ってるんだ」と思ってしまいます。特に役所の文章は一般の人たちにはわかりにくい、とても不親切な文章で構成されます。

その典型が、財務省が後生大切にしている「プライマリーバランス(PB)規律」です。これは政府支出を税収以下に抑え、国債発行額をゼロにしようとする規律ですが、多くの人はこの中身や世の中にどう影響を及ぼすのかを知りません。

実は、この規律のせいで、政府は必要な支出が軒並みできなくなってしまい、行政、そして国民生活に甚大な影響を及ぼしているのです。

この規律があれば、あらゆる省庁、政治家、そして各種民間組織を財務省に対して「隷属化」させることになり、財務省が圧倒的に強力な影響力、政治力を獲得することができるのです。これを打破するために、藤井氏は正論を様々なメディアで発信し、味方を増やそうとしています。

正論を広めるために必要なこと

正論を作るには、理想についての強い思いを持ち、その理想と現実のギャップを見つめ続ける(だからこそ対機説法が可能となる)という二つが必要です。

正論を通して、少しでも理想に近づくためには、多くの人に賛同してもらわなければなりません。徐々に共感者を増やすことで、正論が力を持ち始めます。

あるべき姿と現実とのギャップを埋めることで、正論が力を持つようになります。何とか埋めようとする努力が不可欠です。これは問題解決能力のメソッドと同じですね!

この30年日本はデフレ経済から脱却できずにいます。以前の日本は活力を持っていましたが、人口減少を放っておいたこと、社会保障費にメスを入れてこなかったころ、賃金を低く放置したこと、積極財政をとらなかったことなどのなどいくつかの要因が重なり、全く成長できずにいます。自民党や官僚は自分たちの利権を守るために政策変更を行わず、多数の日本国民を貧しくしています。

こんな状態が続き、多くの日本人が希望を見失い、二極化が進んで社会が分断されています。他国に比べ、日本の若者は未来に希望を感じていないことがデータでも明らかになっています。藤井氏は経済成長を促すためには、積極財政が欠かせないと言い、その考えを広げる努力を重ねています。

正論が世の中に認められるかどうかも、限界質量=閾値が関係しています。

それまでは多くの人に否定されていたり、無視されていたりする考え方も、それに賛同する人たちがある一定の人数を超えると、それが正論として、一気に世間全体に広がり、スタンダードな世論になる。

藤井氏や一部の政治家や経済学者が積極財政への転換を促す中で、財務省の考えに反対する人たちも増えています。

正論を広めるためには、「敵方」の説得に力を入れるよりも、「仲間」を拡大していく方向に力を割くべきだと言います。

仲間を拡大していく上で最も効果的なのは、中立の一般の人たちに納得してもらうことが重要になります。多くの無党派層を巻き込むために、こちらの正当性を主張し、こちらの正しさを理解してもらい味方になってもらうことが効果的です。財務省や権力者がメディアを使って情報をコントロールする中、正論を広めることには多くのハードルが存在しますが、諦めたら終わりです。


 

この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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