天才たちの未来予測図
成田悠輔
マガジンハウス
本書の要約
AIやロボティックスに人間の仕事が置き換えられる中、新たな仕事が次々と生まれています。今までは仕事だと思なっかたことお金を稼ぐ人が増えています。仕事と遊びの領域が曖昧になる中、今までの常識を捨て、何をしているかが説明できないような仕事を選択することで、自分のチャンスを広げられます。
既存教育が機能しない時代にどう生きる?
うまく人に説明できないような仕事や遊びにあえて首を突っ込むようにしています。(成田悠輔)
50歳までは広告会社に勤務していたので、自分の職業を説明しやすかったのですが、今は自分の肩書が増えたため、人に自分のビジネスを説明することが難しくなりました。広告会社でサラリーマンをしていたときも幸せでしたが、自分でも何をやっているかわからなくなった50代後半の時間が、私にとってはかけがいのないものになっています。
イェール大学助教授で半熟仮想株式会社の代表成田悠輔氏は、何をしているかがわからないことに興味を持つことの重要性を本書で指摘します。AIやロボティックスに人間の仕事が置き換えられる中、新たな仕事が次々と生まれています。今までは仕事だと思なっかたことお金を稼ぐ人が増えています。そんな状況に今の教育システムは機能しなくなっています。
成田氏はのニューヨークのエリート高校の実態を明らかにします。入学には厳しい学力基準が課せられますが、ボーダーラインにいた人達のその後を追いかけました。合格点のボーダー付近の人たちは、ちょっとした偶然が合否を分けているので、学力はほとんど同じだと捉えることができます。
彼らの将来の学力や進学先を比較することで、「学歴の効果」を調べられます。実は、進学校に入った人と普通の高校に入った人の間でその後の学力に違いがほぼなかったのです。
データの分析によって、私たちが当たり前に受け入れている常識が間違っていることに気づくことができるのです。 常識を壊したうえで、社会制度や資源配分の仕組みをゼロベースで虚心坦懐に考え直していく。
日本はデータやエビデンスの力を使って制度をつくっていくことに関して、後進国だと著者は指摘します。アメリカでは、自治体が子どもたちの学習履歴などのデータを外部の研究者と共有する取り組みが盛んに行われていますが、この分野で日本はアメリカから大きく差をつけられ、30年くらいは遅れています。
逆張り戦略が効果的な理由
世界が複雑化し、子どもでもいろいろな情報が手に入る今の社会では、古い建前は誰の目にも無理がある。職種や生き方によって求められる知識はまったく異なります。どんな人生を歩むかによって必要な学習はさまざまとなると、教育を受ける目的自体、人によって変えざるを得ない。教育の目的やカリキュラムなどを個別最適化していく必要があります。
義務教育の中学やその後の高校の授業では、偏差値40から60程度の子どもたちにフォーカスしています。偏差値が低い子供は授業についていけず、上の子たちも内容が簡単すぎて退屈な時間を過ごします。今の日本の教育は、上の子も下の子も不幸になっています。
最近では学歴よりも、経験を重視すべきだと言われ始めていますが、ここにも落とし穴があります。親がお金持ちであれば、様々な経験が積めて、受験で有利になります。
アメリカの有名大学では試験がなく、経験値を総合的に判断して入学できるので金持の子供が優遇されているといいます。 イェール大やハーバード大では、入学者の親の平均年収が2000万円となり、日本よりも格差が大きくなっています。
アメリカのように経験を受験の基準にしてしまうと、貧富の差が合否を決め、格差を拡大する恐れがあります。逆に親にお金があろうがなかろうが、学力試験というゲームを乗り越えさえすれば、入学が保証されるという日本の制度は悪くないのかもしれません。それでも塾や予備校に通える富裕層が有利になることは間違いありませんが・・・。
日本が貧しくなる中で、どこに資源を投入するかを決めることも大事になってきました。かつてのような競争ルールで戦っているとお金と人材に余裕のあるアメリカや中国には勝てなくなっています。悲しい現実ですが、日本は自分が勝てる領域で勝負していくべきです。
今の日本は、二重に厳しくて、お金という面でも人材という面でもトップランナーになれる分野はほぼありません。そういう状況でとれる戦略というのは、逆張り路線しかないかもしれない。みんなが注目していない、なんでこんなところにお金を割くんだという領域を切り拓いていくしかありません。
その上で、著者は誰も行こうとしない方向に全力で進んでいくという逆張り戦略が効果的だと言います。中途半端に賢い人たちが考えると戦略では、他人と同じような結論にたどり着き、競争には勝てなくなります。
高等教育や研究者支援は基本的に真逆で、人がやっていることはやらないようにしたり、すでにカリキュラムの中にあることとは違うことをやることが重要になります。
何のために存在しているのかわからない人、何をしているのかわからない人の強みは、真似できないし憧れられないので簡単に置き換えられないことです。もっと不真面目に、遊びや趣味の延長線上をふらふらと続けている人こそが競争力を持ち、将来幸せを手にできるのかもしれません。
YouTuberやTiktokerといった仕事は過去には存在品物でしたが、今はこういった仕事で稼いでいる人が増え、人気になっています。このような職業は昔の基準で考えれば、遊びに分類されます。今後はこの流れが主流になり、「今はまだ名前のない仕事」が増えていくはずです。
今までの教育システムに頼るのではなく、人とは異なる価値観を持つことが大切になります。多様性の中で考え、レバレッジを掛けながら行動するうちに、正しい答えが見つかります。自分のやりたいことと提供価値、世の中が求めていることと稼げることが重なり合う部分を見つけることで、私たちは自分を幸せにできるのです。
しかし、圧倒的な成果を出す可能性を秘めた人を、寄ってたかって潰しているのが今の日本です。新しいことや変なことを始めた人を別に応援しなくてもいい。ただ、過剰にバッシングをしたり、スキャンダルを探し回ったりするのをやめるだけで十分です。
未来を担う若い世代の人たちは周りの人が何をやっているかなんて気にせず、堂々と「意味のわからないこと」に取り組んだほうがよいと著者は言います。
一つの会社に所属するだけでなく、いくつものコミュニティに属しながら、その都度興味のある仕事や遊びを同時にやり続けるのです。それを繰り返すうちに、本当に自分のやりたことが見つかります。私もサラリーマンを辞めてから、さまざまなビジネスに首を突っ込んでいますが、新しいことを選ぶたびに仕事の幅が広がり、仕事を楽しめるようになりました。仕事と遊びの境界線をなくし、今を楽しむことで幸福度が高まっています。
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