誰よりも、うまく書く(ウィリアム・ジンサー)の書評

vintage teal typewriter beside book

誰よりも、うまく書く
ウィリアム・ジンサー
慶應義塾大学出版会

誰よりも、うまく書く(ウィリアム・ジンサー)の要約

ウィリアム・ジンサーは、文章を書く際には、「簡潔さ」を重視すべきだと言います。余計な装飾や無駄な言葉を削ぎ落とすことで、読者から評価され、支持されるようになります。それは時に苦しい作業となりますが、この「削る勇気」を持つことで、私たちの文章は研ぎ澄まされ、伝えたいメッセージがより鮮明になるのです。

良い文章を書きたければ、簡潔を意識しよう!

優れた創作の秘訣は、すべての文章を最も簡潔な構成要素までそぎ落とすことにある。機能しない言葉、短い単語に換えられる長い単語、動詞にすでに意味が含まれている形容詞、読者がいったいこれは誰の言葉だろうとまごついてしまう受動態の構文など、たくさんの不要物が文章の力を弱めている。(ウィリアム・ジンサー)

私は毎日この書評ブログを書いていますが、執筆に関する悩みは尽きることがありません。言葉を紡ぐ楽しさと難しさを日々実感しています。そんな中で出会ったのが、ジャーナリストであり作家でもあるウィリアム・ジンサーの著書『ON WRITING WELL誰よりも、うまく書く)』です。

この本は、文章を書くことに迷いや壁を感じている人々に向けて、具体的かつ実践的なアドバイスを提供してくれる名著で、1976年の初版以来、時代を超えて多くの読者に愛され続けています。その普遍的な価値はどこにあるのでしょうか?

ジンサーの執筆の基本理念は「簡潔さ」に集約されています。私たちは文章を書く際、本当に伝えたいメッセージを余計な表現や飾りで隠してしまうことがよくあります。ジンサーが説くのは、不要な装飾や冗長な言葉を取り除き、必要最小限の言葉で本質を伝えることが、読者の心に響く力強い文章を作り出すということです。簡潔で無駄のない表現は、読者に明確なメッセージを届けるための最良の方法なのです。

また、短い段落を意識することも読者の関心を引きつけるポイントです。一文が長すぎたり、段落が続きすぎると、読者は疲れてしまい、文章を読む意欲を失ってしまいます。適切な間を持たせることで、文章全体のリズムが良くなり、読みやすさが大幅に向上します。

一方で、書き手にとって最も大きな試練は、「削る勇気」を持つことです。完成したと思える文章を見直し、不要な部分を削ぎ落としていく作業は、書き手にとって痛みを伴う場合があります。しかし、ジンサーが教えるように、この作業を恐れずに行うことで、文章はより洗練され、伝えたい内容が鮮明になります。 削る作業は単に文章を短くするだけではありません。

それは、文章の余分な要素を取り除くことで、読者にとって最も重要なメッセージを際立たせるプロセスなのです。この「簡潔さ」へのこだわりが、どんな文章であれ、読者の心に残る力強さを生み出す鍵と言えるでしょう。

自分の頭のなかから不要物を一掃することだ。明晰な思考が明晰な文章になる。どちらが欠けても、もうひとつは存在しない。曖昧な思考しかできない者に、良い文章を書けるはずがないではないか。段落ひとつかふたつで化けの皮が剝がれ、読者を失うことになる。読者はそう簡単に戻ってきてくれないから、これは重い罪になる。

良い文章を書くためには、自分の頭の中から余分なものを取り除くことにあります。明晰な思考があってこそ、明晰な文章が生まれるのです。この二つは切り離せない関係にあり、どちらかが欠ければもう一方も成立しません。考えが曖昧なままでは、良い文章を書くことは不可能です。

また、ジンサーは書くことを「問いかけ」と「確認」の連続と捉えています。自分が何を伝えたいのかを絶えず問い、書いた文章がその意図を正確に反映しているかを確かめる。この繰り返しこそが、読者に響く文章を生み出す鍵となります。そして、それは単なる技術的な作業ではなく、書き手自身の考えを深めるプロセスでもあります。

よりよい文章を書くために模倣を積極的に行おう!

同時代に書かれた文章もさることながら、過去の達人が書いた文章を読む習慣を身につけよう。文章は模倣から学ぶものだ。もし、どうやって書くことを学んだのかと訊かれたら、私なら自分が書きたいことを書いている人々の文章を読み、彼らがどんなふうに書いているかを分析することから学んだと答えるだろう。

ジンサーは、文章力を高める具体的な方法として「模倣」の重要性を説いています。優れた作家たちの文章を研究し、その技術を吸収しながら自分のスタイルを築いていくアプローチは、多くの初心者にとって実践的な学びの道筋となります。

特に、過去の達人たちが残した文章を読む習慣を身につけることの価値を強調しています。 ジンサーは自身の経験を振り返り、「自分が書きたいことを書いている人々の文章を読み、彼らがどのように書いているかを分析することから学んだ」と語っています。

この言葉は、文章力向上の本質的なプロセスを示唆しています。 また、創作活動において最も重要な学びは、実際に書く過程の中にあると指摘します。「創作は、書きながら学ぶ」というシンプルな真理は、日々一定量の文章を書き続けることの重要性を私たちに教えています。

文章力の向上には、継続的な実践以外に近道はないのです。 さらに、ジンサーは文章における冒頭の重要性についても鋭い指摘を行っています。最初の一文が読者を次の文へと導けなければ、その文章全体の命運が尽きてしまうと警告します。各文が次の文へと読者を自然に誘導していく、この連鎖的な構造こそが、効果的な書き出しの本質だと説いています。

潜在意識は、思っている以上に創作を行っている。作家が、救いようのないほどこんがらがって見える言葉の藪から抜け出そうと、日がな一日苦しみ続けることはめずらしくない。ところが翌朝、改めて藪のなかに首を突っ込むと、ふと解決策が浮かんでくることがよくある。寝ているあいだも、作家の精神は眠っていない。作家はいつも働き続けている。周囲の動きに常に注意を払おう。

文章を書く際には、潜在意識が味方になると著者は指摘します。この潜在意識の力を引き出すためには、日常の中で自分の周囲に注意を向けることが欠かせません。目に映る景色、耳に入る音、人との会話、何気ない出来事のすべてが、潜在意識に蓄積されていきます。それらの断片は一見すると何の意味もないように思えるかもしれませんが、実は重要な役割を果たします。

潜在意識は、それらを独自のフィルターで濾過し、作家の中にストックしておくのです。 そして、そのストックは、いつの日か必要に応じて意識の表面に浮かび上がってきます。それは数日後かもしれませんし、数カ月後、さらには数年後のことかもしれません。忘れかけていた過去の記憶や体験が、創作の中で突然よみがえることは決して珍しいことではありません。

むしろ、それが創作の醍醐味のひとつと言えるでしょう。 この潜在意識の働きを信じることは、作家にとって大きな助けとなります。行き詰まりを感じたときには無理に出口を探そうとせず、一度その状況から離れることも大切です。そして、自分の内側で潜在意識がその問題に取り組む時間を与えましょう。その結果、より自然で効果的な解決策が見つかる可能性が高まるのです。

創作は、単なる意識的な努力の積み重ねではありません。潜在意識という見えないパートナーとの共同作業なのです。日々の生活の中で見たものや聞いたものを大切にし、それらを潜在意識の中に取り込みながら、未来の創作の糧として蓄えていく。そうすることで、創作の幅や深みが大きく広がっていくはずです。潜在意識の存在を受け入れ、その力を信じることが、書き手にとっての大きな支えとなるのです。

ジンサーのアドバイスは、文章に悩むすべての人にとって頼れる指針でありながら、同時に書くことの喜びを再発見させてくれます。「書くことは自分を喜ばせることだ」という著者のメッセージに私は何度も勇気をもらいました。

この本を手に取ることで、多くの人が文章を書くことの新たな魅力に気付き、前向きな気持ちで執筆に取り組めるようになるでしょう。 文章とは、単なるスキルではなく、私たちの内面を映し出し、他者との絆を築くための大切な道具なのです。

最強Appleフレームワーク


この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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