BRAIN WORKOUT ブレイン・ワークアウト 人工知能(AI)と共存するための人間知性(HI)の鍛え方 (安川新一郎)の書評

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BRAIN WORKOUT ブレイン・ワークアウト 人工知能(AI)と共存するための人間知性(HI)の鍛え方
安川新一郎
KADOKAWA

本書の要約

「ブレインアスリート」は、スポーツのアスリートのように、持てる知能と知性を最大限に発揮し、結果を残し、自身の人生を成功に導く人々を指す言葉です。著者は運動、睡眠、瞑想、対話、読書、デジタルの6つのブレインモードと20のメニューを提唱しており、これらを実践することで、ヒューマンインテリジェンスを鍛えることが可能です。

生成AIによって人間の仕事が奪われるのか?

周辺の外部情報が爆発的に増える度に、脳はそのソフトウェアをアップグレードし、新たな脳のモード(ブレインモード)を確立させてきました。それらのモードを正しく理解し、そして鍛えることで、AI(人工知能)やロボットと共存する時代に備え、未来を逞しく楽しく生きよう。(安川新一郎)

マッキンゼー、ソフトバンク社長室長を経て、東大未来ビジョン研究センター特任研究員を担う安川新一郎氏は、人類が環境の変化に適応し、何度も脳をアップデートしてきたと言います。

最近では、生成AIによって人間の仕事が奪われるという論調が見受けられますが、それは本当に正しいのでしょうか? 著者は、AIは人間の知性を上回ることはできても、人間の知性を置き換えることはできないと主張しています。AIは、膨大な量のデータを処理し、高速に計算することができますが、人間には、AIにはない創造性、柔軟性、直観力、共感力などの能力があると指摘しています。

人間の知性には、創造性があります。AIは過去のデータから学習し、予測を行うことができますが、新しいアイデアや創造的な解決策を生み出すことは難しいです。人間は問題解決において、独自の視点やアプローチを持つことができます。

また、柔軟性も重要な能力です。環境の変化や予期せぬ事態に対応するためには、柔軟に対応することが求められます。AIはプログラムされた範囲内でしか動作できないため、予測不能な状況には対応できません。

さらに、直観力や共感力も重要な要素です。直観力は、経験や感覚に基づいた判断や意思決定を行う能力です。共感力は、他者の感情や状況を理解し、適切な対応をする能力です。これらの能力は、人間の間柄やコミュニケーションにおいて重要な役割を果たします。生産性を高めるためにAIを使い倒し、自分らしい価値提供をすることで、人間とAIは共存できるのです。私たちは人工知能(AI)と共存するためのヒューマンインテリジェンス(HI)を鍛える必要があるのです。

著者はアクションを起こす時、3つの方向から自問することで、正しい選択ができるようになると言います。
①それが人間が長い歴史を通じて行ってきた行為であるか?
②その行動が脳細胞(ニューロン)を強化するか、逆に弱める可能性があるか?
③感情的に「反応」しているのか、それとも論理的に「思考」しているのか?

たとえば、仲間とのBBQ、トレイルランニング、登山、旅行などは、人間が古代から行ってきた活動であり、身体と脳に良い影響を与えると考えます。「友人と共通の趣味や興味について語り合う」という行為も、ソクラテスや孔子の時代から続く人間の本質につながり、楽しみながら重要な時間を過ごすことができます。『論語』に記された「朋あり遠方より来たるまた楽しからずや」という言葉が示すように、人間との対話は貴重な時間です。

デジタルツールの使い方にも注意を払う必要があります。SNSの利用やリモート会議ツールの活用は、目的を明確にし、視覚や脳への負担を考慮しながら取り組む必要があります。Twitterやリール動画を無目的に眺めることは避け、リモート会議ツールもその便利さを享受しつつ、使用による負担に留意していると言います。

これらのツールは人間が近年始めた行為であり、長時間の使用が脳にどのような影響を及ぼすかはまだ完全には解明されていません。そのため、これらのツールを利用する際には十分に注意を払う必要があります。テクノロジーを使い倒すことが近道だとしても、脳に必要以上な負担をかければ、パフォーマンスを下げてしまいます。私は夜はなるべく早く寝るようにし、朝時間を最大限活用することで、生産性を高める努力をしています。

運動と睡眠が脳のパフォーマンスを高めてくれる!

昔から人が大切にしてきたことを行い、脳に良いことを意識的に行っていれば、私達は永遠に賢くなり、仕事に恵まれ、友人に必要とされ、楽しく豊かに善く生きることができる、私はそう信じてブレインワークアウトを実践しています。

運動習慣を取り戻すことは、私たちの脳の働きに良い影響を与えます。運動によって、脳の機能が向上するだけでなく、旺盛な食欲や快適な睡眠を得ることもできます。 まず、運動によって脳の働きが良くなる理由を考えてみましょう。

運動は血液の循環を促進し、酸素や栄養を脳に供給します。また、運動によって脳内の神経伝達物質や成長因子が活性化され、脳の細胞の成長や回復を促す効果があります。特に、脳由来神経栄養因子(BDNF)という物質が、運動によって増加し、脳の健康をサポートします。

さらに、運動によって得られる旺盛な食欲や快適な睡眠も、脳の働きに良い影響を及ぼします。運動によって消費されたエネルギーを補給するために、食欲が増します。適度な食事を摂ることで、脳に必要な栄養素が供給され、脳の機能が向上します。

また、運動によって身体が疲れるため、深い眠りに入ることができます。十分な睡眠をとることで、脳は日中の記憶や感情を整理し、スッキリした状態で朝を迎えることができます。 さらに、運動によってクタクタに疲れて深い眠りに落ちることは、体力回復だけでなく、脳の回復にも良い影響を与えます。

睡眠中に脳は休息し、修復や再生が行われます。運動によって疲れた身体は、睡眠中に効率的に回復することができます。また、睡眠中に脳は不要な情報を整理し、新しい情報を処理するためのスペースを作り出します。その結果、脳はより効率的に働くことができます。

人類は日常生活において情報の質と量が爆発的に増える事態に何度か直面してきました。言語能力の獲得による複雑な情報交換、文字の発明と普及による過去の情報へのアクセス、さらには印刷書籍やデジタルテクノロジーによる時空を超えた膨大な情報の生成と伝達です。

そして、それらの情報爆発を体験する度に、私達の先祖は当初混乱しストレスを感じつつも、それらの情報を自分と人類のために正しく活用できるように、脳に新しい運転様式(モード)を開発追加し、自分達の脳のソフトウェアアップグレードの努力を続けてきたと著者は指摘します。

情報化社会の進展により、私たちの日常生活はますます多様化し、情報の質と量も飛躍的に増えてきました。言語能力の向上によって、複雑な情報のやり取りが可能となりました。

人類は、生存本能の知能に加えて、ソクラテス(そしてプラトン)やブッダが体系的に理論化したとされる自分自身と向き合う「瞑想モード」と、他者との本質的な対話を通じて、より善く生きること、真善美について考える「対話モード」という知性を持つようになったのです。このような知性を持つことで、人々は自己探求や他者との共感を深めることができるようになりました。

その後、印刷技術の発達により、自分が必要とする叡智を持った他者との「対話」を、時空を超えて拡張することができるのが「読書モード」であるとも言えます。本を通じて、過去の偉人たちの知恵との対話をすることができるのです。読書は、個人の知識や視野を広げるための重要な手段であり、人々の成長や発展に欠かせない存在です。過去の多様な著者との対話を通じて、私たちは脳をアップグレードできるようになったのです。

さらに、情報のデジタル化とネットワーク化、そして生成AIの登場によって、入力情報(インプット)も豊富になり、自らの出力(アウトプット)の方法の選択肢も増えました。個人は世界中の様々な情報を入手し、自身の知的生産活動を大きく拡張することが可能になりました。これが「デジタルモード」です。

人間知性(HI)を鍛えるための6つのモードと20のメニュー

人間知性(HI)を鍛えるための6つのモードと20のメニューを著者は以下のように整理します。
①運動モード
・全ては低強度の運動を週3回やることで解決する
・距離移動と非日常空間で脳の働きは活発に学習する

人間の脳は「場所移動」による感覚情報の変化に伴ってニューロンを活発化させ、思考と行動を行うということです。すなわち、家の中に引きこもっているのではなく、外に出て移動し、時に運動し、様々な刺激に出会う時に、脳の働きが最も活性化するように人間の脳は作られているということです。 私達の知的生産のための脳の働きにも密接に関係しています。

②睡眠モード
・深い睡眠で記憶を固定化し、浅い睡眠で感情を整理する
・睡眠を徹底してパーソナル化する(睡眠体質、仮眠、入眠ルーティン) 
・夢を意識して自分の心の中の本当のメッセージに気づく

③瞑想モード
・観察による「今、ここ」への意識の集中と自己との対話
・瞑想と家事でDMNを落ち着かせひらめきを得る

ジェフ・ベゾスビル・ゲイツは、世界で最も成功した起業家であり、その成功の秘訣は、常に新しいアイデアを生み出すことにあると言われています。彼らは、瞑想や散歩などのリラックス方法で、脳を休息させ、新しいアイデアを生み出す環境を整えています。

皿洗いや掃除などの家事も、リラックス方法の一つです。これらの家事は、単純な作業であり、頭を使わなくてもできます。そのため、脳を休息させ、新しいアイデアを生み出すことができます。 また、家事は、自分や家族のために役立つという満足感を得ることができます。この満足感は、脳を活性化し、新しいアイデアを生み出すきっかけとなります。

瞑想や散歩などのリラックス方法に時間が取れない場合は、皿洗いや掃除などの家事を率先して行いましょう。家事は、家庭円満以外にブレインワークアウト効果も得られるかもしれません。

・自己と世界との一致自我(エゴ)から自己(セルフ)へ

④対話モード
・人々の意識を変えていく「声の力」を再認識する
・「対話」を理解し、「聞く」と「聴く」を正しく使い分ける
・同じ目線で傾聴し、目的なく語り合う時間を作る

⑤読書モード
・興味のあるテーマを決めて、積読から始める
・同テーマの複数の本を、同時に読むシントピカルリーディングメニュー
・紙の本に「徹底的に書き込む」ことで著者と対話するメニュー
・著者と格闘し、脳細胞を鍛え、独自の思考様式を手に入れる

⑥デジタルモード
・メモ帳アプリで情報を「固定化」し、「規格単位化」する
・習慣情報の一元管理+発酵で、「自分だけの知の生態系(ビオトープ)」構築
・単位化された情報を組み合わせ、アウトプットし、共有する
・マルチスクリーンとSNSでアウトプット作業を効率化
・生成AIの活用で、インプットとアウトプットの幅を広げ、効率化する

これらの6つのモードは、すべて脳の健康とパフォーマンスに重要な役割を果たしています。健康的な生活を送るために、これらのモードをバランスよく取り入れることが大切です。結果、自分のパフォーマンスをアップできます。

私がブレイアンスリーとを目指す理由

「ブレインアスリート」は、スポーツにおけるアスリートのように、持てる知能と知性を最大限に発揮し、結果を残し、自身の人生を成功に導く人々を指す言葉です。

ブレインアスリートは、知的な挑戦に立ち向かい、脳の潜在能力を引き出し、それを活用して生活をより良いものにするために、日々努力しています。著者の6つのブレインモードを実践することで、私たちはブレインアスリートとして最高のパフォーマンスを発揮できるようになります。脳のトータルワークアウトの方法が本書には書かれています。

「知能」とは、具体的な問題に対して迅速に適切な解答を導き出す能力を指します。 一方、「知性」は、明確な答えが存在しない問題に対して、探求し、理解し、独自の解を見つける能力です。 これら二つは切り離せない関係にあり、一方が他方を補完し、強化する形で働きます。

知能と知性を最大限に発揮することで、私たちは困難に対処し、新たなアイデアを生み出し、自己の可能性を広げることができます。AIに置き換えられない知性を養うために、自分の脳を鍛え続けましょう。

私も著者のように社外取締役やアドバイザー、大学の特任教授として働いていますが、絶えず目の前のパートナーに付加価値を提供する必要があります。そのために、絶えず脳を最高の状態にしておく必要があります。私は大量に本を読み、それをこの書評ブログを通じてアップデートしています。

クライアントの課題を日々考え、何をインプットすればよいかを考え、読書とブログ、プランニングを行うことで、脳の中でシナプスがつながるようになり、顧客体験をアップできるようになりました、

ここまで見てきたように、脳は私たちの身体に欠かせない生命の中枢であり、その働きは物質的な生理反応によって成り立っています。脳の働きを最大限に引き出し、より豊かな知性を発揮するためには、生物としての物理的な身体性を大切にすることが重要です。

まず、運動モードや睡眠モードなど、身体的な活動に意識を向けることで、脳の健康状態を保ちます。運動は脳の機能を刺激し、新しいニューロンの生成を促進します。睡眠は脳をリセットし、学習や記憶の定着に重要な役割を果たします。 また、人間の知性において欠かせないのが知覚です。感覚器を通じて身体への意味を瞬間瞬間に感じる行為は、知識の獲得に欠かせません。

このような知覚を高めるためには、瞑想モードにおいて身体感覚の「今、ここ」に意識を集中させることが重要です。 さらに、対話モードでは他者とのコミュニケーションが大切です。情報交換だけでなく、言語化されない意識を交換することで、より深い理解とつながりが生まれます。このような意識の共有は長期記憶にとっても重要であり、価値のある情報を長期記憶に転送します。

そして、読書モードにおいては経験と概念を結びつけた意味記憶が重要です。言葉や概念を深く理解し、頭の中に持つことで思考の深さが変わります。静かで集中的な読書モードを心掛けることで、より豊かな知識を獲得できるでしょう。

最後にデジタルモード。これは現代社会において欠かせないものです。インターネットやSNS、ナレッジマネジメントツール、生成AIの活用によって、情報収集や知識の共有が大きく拡張されました。このデジタルモードはセカンドブレインとも呼べる存在であり、自らの脳の外側から情報や示唆、洞察を得ることができます。しかしその一方で、デジタルモードにのみ頼りすぎることによって、生体知や他の6つのモードが薄れてしまう恐れもあります。

バランス良くこれらのモードを鍛え続け、活用することが重要です。 生成AIの活用によって仕事の効率化や時間の節約が可能となり、人類は再び生命としての身体知の世界に回帰できるでしょう。デジタルモードの恩恵を享受しつつ、私たちの身体と脳を大切にし、全てのモードを活かしてヒューマン・インテリジェンス(HI)を高める努力を続けるべきです。今後も本書の20のメニューを日々意識し、実践していきます。


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