トランジション ――人生の転機を活かすために(ウィリアム・ブリッジズ)の書評

time lapse photography of square containers at night

トランジション ――人生の転機を活かすために
ウィリアム・ブリッジズ
パンローリング

本書の要約

トランジションは、「何かが終わる時期」「混乱や苦悩の時期」「新しい始まりの時期」の3つに分類されます。何かが始まるときには、別の何かが終わりを告げています。そして、新しいスタートを切るためには、 「今まさに手放すべきもの」を実際に手放していくという「終わり」から始めなければなりません。

トランジションとは何か?

「変化」とは状況が変わることであり、一方、「トランジション」とは心理的に変わることである。トランジションとはそうした外的な出来事ではなく、人生のそうした変化に対処するために必要な、内面の再方向づけや自分自身の再定義をすることである。トランジションを伴わない変化は部屋の模様替えにすぎない。トランジションが起こらなければ、変化は「受けとられない」ので、機能しないのだ。(ウィリアム・ブリッジズ)

本書のタイトルのトランジションとは、人生の転換点のことで、多くの場合、乗り越えるべき壁が目の前に立ち塞がります。この転機や節目のタイミングは、辛い経験が待ち構えていますが、これを越えるたびに本当の自分が見えてきます。

トランジションは、「何かが終わる時期」「混乱や苦悩の時期」「新しい始まりの時期」の3つに分類されます。何かが始まるときには、別の何かが終わりを告げています。

「終わり」はトランジションの第1局面で、第2局面は「喪失・空白」の時期であり、やがて納得できる生活パターンや方向性が見いだされます。そして第3局面が新たな「始まり」になります。まず、何かの終わりがあり、次に始まりがあります。始まりと終わりの間には、重要な空白ないしは休養期間が入ります。

たいていの人は、新しい状況を作り出し、将来への新しい希望を抱き、それを実現するための新しい方法も生み出します。このような人生のイメージは、次々と成果が上がっていくような右肩上がりのものではなく、複数のサイクルが折り重なっていくらせん形になります。そして、その際重要になるのが、喪失・空白の時期で、この時間をしっかり確保することで、自分との対話ができるようになり、内面の変化が起こります。

しかし、現代人は忙しく、自分との対話の時間を持てなかったり、他者に相談できないために、トランジションが起こると苦しむことになります。本書を読むことで、そんな痛みを軽減できます。

ヒンドゥー教の「四住期」では、人生を学生期・家住期・林住期・遊行期の4つにわけて、それぞれのステージにおける規範に即した生き方をすることで、幸せに生きられると説いています。このように一つのサイクルが終わると、新たなサイクルが始まります。

自分の能力や興味にぴったりであった仕事が、やがてつまらなくなったり、やりがいを感じなくなります。高収入の仕事で成功していても、多くの人々が、しばしば期せずしてトランジションを迎えます。子供の頃にやりたかったことを突然思い出し、自己の内側から変化を求めることもあります。

トランジションは、個々人の人生や職場における外的変化によって突然引き起こされることもあります。それが意味のあるトランジションの場合は、人は新たな選択をします。

過去の自分を捨て、スペースを空け、新たなことにチャレンジしよう!

職業生活におけるこうした再方向づけの時期の混乱の度合いは、2つの要素によって決定される。第1の要素は、トランジションのきっかけとなる変化に内在する重要性である。第2の要素は、それらの変化が、自分自身の中で起こっている発達上の時期と重なるかどうかである。  

トランジションのプロセスには、新しい状況に慣れていくことが必要になります。人はいくつかの苦しい変化を体験しますが、本当の問題はこれらの変化から生じるのではなく、かつての自分を「終わり」にして、新しい状況の中で自分の立ち位置を発見するプロセスから生まれます。トランジション・プロセスでの苦しみが本当の問題なのです。 

トランジションが起きた場合には、人は手放すことから始めなければなりません。「今何を手放すべきか」を見つけることによって、トランジションを有意義に推し進めていく道が開かれます。新しいスタートを切るためには、 「今まさに手放すべきもの」を実際に手放していくという「終わり」から始めなければなりません。

「手放す」プロセス、すなわち「終わらせていく」プロセスが重要なのは、二番目のプロセス=「人生の次なる章を開始する」プロセスに進んでいくためのスペースをつくる作業が欠かせないからです。スペースを空けなければ、新たな自分のやりたいことにチャレンジできません。

トランジションの体験は、新しい状況へ自分を調整することよりもまず苦しみをもたらすのである。人々が抵抗感を示すのも、そうした変化に対してではなく、トランジションそのものに対してである。これは偶然の一致ではない。

著者は人生を90歳の時点から振り返ることで、仕事でのトランジションに対応できるようになると言います。90 歳から今の自分を観察すると、現時点のあなたの人生は、それまでと同じ方向に歩み続けるべきなのか?変化を選択すべきかを考えてみるのです。

後者を選択した場合には、どう変化をすれば良いかを考えてみましょう。90歳という地点から振り返ってみると、あなたは人生のこの時期に取るべきであった方向を示しているサインに気がつけます。未来から振り返ってみて、あなたは現在の自分自身の状況をどのように感じるだろうかを考えることで、正しい答えを見つけられるようになるのです。

過去の自分を手放すことで、新しい自分を手に入れられます。私は15年前に体調を崩したために断酒という選択をし、大好きだったお酒をやめました。断酒によって飲み仲間や大騒ぎする時間を失いましたが、それ以上のものを手に入れることができました。家族との時間、やりがいのある仕事、新たな人脈によって、私は15年前よりはるかに良い人生を過ごせるようになったのです。


この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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