本を読む人はうまくいく
長倉顕太
すばる舎
本を読む人はうまくいく(長倉顕太)の書評
長倉顕太氏は、成功者に共通する「読書習慣」の重要性を説きます。人生がつまらないと感じる人こそ、本を通じて世界と自分を知るべきだとし、読書を「地図」として活用する思考法を提示。読書は知識の獲得だけでなく、思考力や行動力、視野を広げ、人生を変える最強の投資です。「型」を学び継続することで、習慣となり、自分自身の価値やキャリアにまで影響を与えます。読書は現実を動かす知的冒険なのです。
幸福度の高い人の共通点は読書
仕事柄、いわゆる成功者と呼ばれているような人、いかにも幸福度が高そうな人に会う。その人たちに共通することがある。それは、本を読んでいること。(長倉顕太)
人生がつまらないと感じている人は、決して少なくありません。毎日が同じような繰り返しで、何かしらの変化を求めてはいるものの、具体的に何をすればいいのかわからずに立ち止まっている。そんな感覚を抱えている方に、ぜひ手に取っていただきたいのが、長倉顕太氏の本を読む人はうまくいくです。(長倉顕太氏の関連記事)
長倉氏は、28歳で出版社に転職し、編集者として数々のベストセラーを世に送り出してきました。これまでに手がけた書籍の累計発行部数は1100万部を超えており、出版業界の中でも際立った実績を持つ人物です。
そんな彼が語る「読書の価値」には、現場のリアリティがあり、単なる理論や理想論にとどまらない説得力があります。 本書の中でも特に印象深いのは、「人生とはつまらないのが大前提である」というスタンスです。この言葉は、一見すると厭世的に聞こえるかもしれませんが、実は極めて戦略的で前向きな視点でもあります。
人生がつまらないという前提を受け入れることで、ではそれをどうすれば面白くできるのかという問いが生まれ、そこから行動と変化の可能性が広がっていくのです。 人生をより面白く生きるために、長倉氏はまず「世界に何があるのかを知ること」の重要性を説いています。知らなければ、選ぶことも、動くこともできない。世界の構造や可能性を理解した上で、自分がどこで戦うべきか、どのルールで勝負すべきかを見極める必要があります。
そしてその判断の軸を持つためには、まず自分の現在地を知ること、すなわち「地図」を持つことが欠かせません。 多くの人が人生に迷いを感じるのは、この「地図」を持っていないからです。地図がなければ、どこに向かっているかも分からず、間違った方向に進んでしまうリスクが高まります。そんな時、読書こそがその地図を描く最も強力な手段になると、長倉氏は述べています。
本を読むことで、知識だけでなく、世界の構造や自分の立ち位置、さらには可能性まで見えてくるのです。 読書の力は、単なる知識の獲得にとどまりません。読書が「人生というゲームを攻略するためのチート」と呼ばれる所以は、そこに3つの特別な力があるからです。
まず、文字情報であるがゆえに、インプットのスピードと精度が高いという点。自分のペースで情報を咀嚼できるため、重要な箇所を繰り返し確認し、不要な情報は飛ばすといった柔軟な対応が可能になります。
次に、読書は思考の可動域を飛躍的に広げてくれます。本を通じて、自分では体験し得ない世界を擬似的に体験できるからです。歴史上の人物の思考や異文化の価値観、未来のシナリオまで、本は現実の枠を越えて思考を拡張する装置となります。
さらに、読書は不安を削減し、意思決定のスピードを上げてくれます。知識が増えることで、未知への恐怖が和らぎ、物事を判断するための選択肢や基準が手に入るのです。その結果、決断の質とスピードが向上し、行動にも迷いがなくなっていきます。
このように、読書には思考の質を高め、視野を広げ、不安を減らすという三拍子が揃っています。これらはすべて、人生をより面白く、より自由に生きるための土台となるのです。
また、本を読む習慣を持つことで、「知れば知るほど、知らないことに気づく」という状態に至ります。これは、知識が増えることで、より深い理解とさらなる探求心が生まれるという、極めて健全な循環です。
長倉氏は、同じ現実を生きていても、知っている人と知らない人では見えている世界がまったく異なると指摘しています。「知らない人は、暗闇の中でサングラスをかけているようなものだ」という比喩は、視野の狭さがいかに致命的かを端的に表現しています。
成功者たちの共通点として、彼らが例外なく読書家であることを長倉氏は挙げています。もちろん、読書量と年収が常に比例するわけではありません。しかし、「読書量が多い人ほど年収も高い」という傾向が存在するのもまた事実です。
では、なぜ同じように本を読んでいても、経済的に成功する人とそうでない人がいるのでしょうか。 そこには、読書の戦略性が関係しています。一つは、自分の目標や課題に即した本を選べていないこと。もう一つは、完璧主義が災いし、読書のペースが極端に遅くなってしまっていることです。
成功者たちは、自分に必要な情報を持った本を選び、すべてのページを完璧に理解しようとするのではなく、必要な部分を抽出する柔軟性を持っています。 日本には、実は多くのチャンスが存在しています。1億円を稼ぐ人がいる一方で、まったく稼げない人がいる。この差は、能力だけの問題ではなく、「見えている世界の差」によって生まれてくるのだと著者は言います
チャンスは、本来すべての人に平等に開かれています。しかし、それに気づけるかどうかで、人生の軌道は大きく変わってしまうのです。目の前に差し出された可能性に気づける人と、そうでない人。その違いは、情報や環境ではなく、視点の持ち方にあります。
長倉氏も、「顔も頭も家柄も良くない」と自分のハンディを語っています。しかし、そんな彼が自由で豊かな人生を手に入れ、想像をはるかに超える収入を得ているのは、読書という自己投資を徹底して行ってきたからにほかなりません。繰り返し本を読み、考え、行動に落とし込む。その積み重ねが、知識となって視野を広げ、多様な人との出会いを可能にし、結果としてチャンスを引き寄せているのです。
読書とは、ただ知識を詰め込むだけの行為ではありません。それは、人とのつながりを生み出し、自分自身の価値を社会に対して発信するための準備でもあるのです。
本を読むことで、自分に何ができるかを考え、それを言語化し、共有する力が養われていく。だからこそ、読書はチャンスをつかむための土台となり、現実を変えるための入口になるのです。
読書は最高の投資である!
そもそも、読書はコスパ(コストパフォーマンス)が高い。使ったお金に対して返ってくるお金が圧倒的に高い。
読書のコストパフォーマンスは非常に高く、使ったお金に対して得られるリターンが圧倒的に大きいと、長倉氏は強調しています。
たとえば、居酒屋で一度飲む金額で、一回数冊の本が購入できます。飲み会で得られる一時的な楽しさも否定しませんが、それが翌日に残ることはほとんどありません。一方、本から得た知識や気づきは、一生にわたって活用できる資産になります。
実際に私自身も、かつては毎週のように飲み歩く生活をしていました。飲み代は月に数万円に達していましたが、断酒を機にその費用をすべて書籍購入に充てるようになりました。
サラリーマンを辞め、独立してからの私は、年間1000冊程度の本を読むようになり、知識の幅が広がっただけでなく、著者や編集者とのネットワークも強化され、ビジネスにも良い影響を及ぼしています。 知識が増えると、問題解決の手法も多様化します。そしてそれが仕事の成果となって表れ、収入も比例して上昇していきました。
読書という行為はまた、極めて能動的な営みでもあります。本を選び、読み進め、そこから何を得るかを自ら考え、応用していくというプロセスは、自分で世界と向き合う訓練に他なりません。受動的に情報を受け取るのではなく、必要な情報を主体的に取りに行く姿勢が身につくことで、あらゆる場面での行動の質がアクティブに変わっていきます。
読書によって得られる知識や視点は、人間関係にも大きな好影響を与えてくれます。多様なジャンルの本を読むことで話題の幅が広がり、会話に深みが生まれ、自然と信頼や共感を得やすくなるのです。 さらに、物語やノンフィクションを通じて他者の人生に触れることで、共感力や想像力が育まれ、対人理解も深まります。こうした「深い読書体験」は、ただの情報収集とはまったく異なるものです。
一冊の本にじっくり向き合うことで、集中力が高まり、複雑な概念にも思考を巡らせられるようになります。その結果、確証バイアスやフレーミング効果といった認知バイアスも克服しやすくなっていきます。
現代のSNSは、私たちの価値観に合った情報ばかりを届けるアルゴリズムで成り立っており、放っておけば視野は狭まりがちです。だからこそ、多様なジャンルの本を読むことが、視野を広げ、偏りを修正するために欠かせないのです。
本書の巻末に紹介されている著者オススメの101冊は、その偏りを矯正する絶好のガイドになり得ます。日々本を読んでいる私でさえ、まだ読めていない書籍が多くあり、その事実に驚かされました。
本を読む人になるから、本を読めるようになる!
本を読むから「本を読む人」になるのではなく、「本を読む人」になるから本を読めるようになる とにかく型が先だ。
読書習慣の構築において、多くの人がある根本的な誤解をしています。「たくさん本を読めば、いつか自然に読書家になれる」という考え方です。しかし、これは順序を取り違えた発想にすぎません。
実際には、「本を読むから本を読む人になる」のではなく、「本を読む人になるから本を読めるようになる」と著者は指摘します。
どのような分野でも成果を出している人たちは、まず型を身につけることから始めています。読書においても、それは変わりません。読書家になりたいのであれば、まずは読書家としての型を徹底的に学ぶ必要があります。
最初は意識して型をなぞることになりますが、それを繰り返すうちに、行動は無意識に変わっていきます。やがて、その型は習慣となり、そしてアイデンティティの一部へと変わっていきます。型が身につくと、まわりの目が変わってきます。
かつての私は、毎晩のようにお酒を飲み歩き、自分のパーソナルブランディングなど意識することもありませんでした。周囲からの評価も、自分自身の在り方を映し出すように、どこか曖昧で、決して前向きなものではなかったと思います。
しかし、著者としての活動を始め、アクションリーディングという読書のスタイルを取り入れ、読んだ本の内容を実践し、自分の言葉でブログに書くようになってから、流れは明らかに変わっていきました。 読書を通じて得た知見を継続的に発信するうちに、周囲の目は確実に変化していきました。
元アルコール依存症がmいつしか「書評家」として認識されるようになり、読書がキャリアや社会的な評価にまで影響を及ぼすものであることを、私は実体験として理解することになったのです。 読書は、単なる知的活動にとどまりません。それは、日々の暮らしに自然と溶け込み、やがて習慣となり、そして自分という存在の輪郭そのものを変えていきます。
読書家として生きる姿勢は、他者の記憶に残る新たな人格を形成し、静かに、しかし確実に社会との関係性を変えていく力を持っています。これは決して誇張ではなく、読書の本質的な可能性に他なりません。
SNSを活用して、自分の読書スタイルや感想を発信し、「読書家」というキャラクターを社会の中に設定することも大きな効果を生みます。他者の記憶に残る存在として、自分自身の価値を少しずつ積み上げていく。それは読書によって可能になる、非常に現実的で戦略的なブランディング手法なのです。
本から得た知識や視点は、時間が経っても色あせることなく、自分の中で熟成され、再び使える「思考の資産」として機能し続けます。読書は投資であり、そのリターンは他のどの投資よりも確実で、かつ圧倒的なのです。 さらに、読書によって培われる思考力や表現力、想像力は、仕事における企画力の向上、人間関係における理解力の深化、問題解決における柔軟性など、さまざまな分野で応用が利きます。
こうした副次的効果は一つひとつは目立たないかもしれませんが、継続的に蓄積されることで、人生そのものの質を押し上げてくれます。 読書を続けることによって、「知識の複利効果」が生まれます。最初の一冊が次の一冊の理解を助け、その理解がまた次の一冊での気づきを深めてくれる。この連鎖は、継続的に本と向き合っている人にしか得られない知的体験です。
そしてこの積み重ねは、やがて自分自身の視野と行動を根本から変えていく力になります。 読書と行動というサイクルを回し続けることは、結果として環境適応能力を大きく高めてくれます。情報を取り入れ、それをもとに思考し、行動し、またフィードバックを得て改善する。こうしたプロセスに慣れることで、自分の思考の柔軟性や行動のスピードが、以前とは比べものにならないほど研ぎ澄まされていきます。
ここで重要になってくるのが、このブログでもお馴染みのキャロル・S・ドゥエックの提唱する「グロースマインドセット」の視点です。能力は固定されたものではなく、努力と学びによって伸ばすことができるというこの考え方は、まさに読書に象徴される自己成長の姿勢そのものです。未知のことに直面しても「自分はまだ知らないだけだ」と捉え、成長の余地を信じて読み、考え、試すことが大切です。(キャロル・S・ドゥエックの関連記事)
読書を習慣とする人は、この成長志向を自然と身につけていきます。 大切なのは、完璧を目指さないことです。すべての本を頭から最後まで読み切る必要はありません。むしろ、多くの本に触れ、自分にとって価値ある部分を見つけ出す読書力を磨くことこそが重要です。読書の「型」を身につけていくことで、この選別力も自然と高まっていきます。
読書家と呼ばれる人たちは、もはや読書を特別な行為とは捉えていません。それは、食事や睡眠と同じように、日常に欠かせない営みとして組み込まれています。
本がそばにあることが自然であり、そこには「努力」や「義務感」といった感情すら存在しません。この段階に達すると、読書のペースは無理なく、むしろ快楽的に加速していきます。私自身も、移動中や隙間時間にKindleやAudibleを活用し、日々の読書を楽しんでいます。
読書を続けるうちに、自分がいかに多くを知らないかに気づくようになります。いわゆる「無知の知」の状態に至ることで、知的好奇心は一気に加速し、「知りたい」という動機が読書をさらに深めていきます。何を学ぶべきか、どの分野を掘り下げたいのかが明確になり、本を選ぶ眼も洗練されていきます。「読まなければならない」から「読みたい」へと動機が転換されると、集中力も高まり、情報の吸収効率は格段に上がっていきます。 こうした変化は、一朝一夕には訪れません。
幅広い読書を通じて情報のハブとなり、さまざまな相談に応じられるようになる――そんな著者のアドバイスに、私は強く共感しました。なぜなら、私自身も日々、ジャンルを問わずさまざまなビジネス書を紹介しながら、人と人、知識と行動をつなぐ役割を果たしたいと願っているからです。
特に心に響いたのが、マーク・グラノヴェッターの「弱い紐帯理論」を読書に応用し、人的資本を可視化・活用していくという視点。これは、まさに私が日常の中で意識的に取り入れている実践であり、「読書が人と人とのつながりを生む」ということを、あらためて実感させてくれました。(マーク・グラノヴェったーの関連記事)
さらに、「移動中に本を読むことで知識が定着する」という考え方や、「読書を始める儀式」として朝一番の15分間を読書にあてる、「積ん読からヒントを得る」などという知識を行動に変える22のプランも秀逸です。読書初心者の方でもすぐに取り入れられる、実践的で再現性の高いアイデアが満載で、「読みたい気持ち」を自然に行動へとつなげてくれます。
読書家としての「型」を意識的に取り入れ、日々の実践を積み重ねていくことで、読書は単なる情報収集を超えた、人生を豊かに変える知的習慣へと進化します。気づけば、ただ情報を消費していた毎日が、明確な構造をもった知的営みへとシフトしている――それが読書の持つ、驚くべき力なのです。
だからこそ、大切なのは「今この瞬間から始めること」。まずは、騙されたと思って、一冊の本を手に取ってみると良いでしょう。そして、「本を読む人になる」と自分に宣言し、SNSで発信すること。それだけで、あなたの人生は確実に変わり始めます。 読書は、思考を磨き、自分自身を再構築し、世界の見え方すら変えてしまう力を持つ、壮大な知的冒険なのです。
コメント