GOOD ENERGY(グッドエナジー) セルフケアでつくる最強の「代謝力」
ケイシー・ミーンズ , カリー・ミーンズ
日本能率協会マネジメントセンター
GOOD ENERGY(グッドエナジー) セルフケアでつくる最強の「代謝力」(ケイシー・ミーンズ , カリー・ミーンズ)の要約
私たちの健康不調の多くは、代謝機能の乱れに起因しています。うつや糖尿病、がんさえも、根本には細胞のエネルギー生成不全があります。本書『グッドエナジー』は、食事・睡眠・運動を通じてミトコンドリアを整え、代謝を再設計する4週間プログラムを提案巣しています。私たちは食事、睡眠、運動の習慣を改善することで、健康を取り戻せるのです。
BAD ENERGYをGOOD ENERGYに!
ライオンやキリンが、肥満や心臓病、2型糖尿病に苦しんでいるという話は聞いたことがないはずです。しかし、現代の人間の死亡原因の80%は、生活習慣に起因する予防可能な病気だと言われています。(ケイシー・ミーンズ , カリー・ミーンズ)
キリンやライオンなどの自然界の動物たちは、本能的に最適な食事と行動を選び、代謝のリズムに忠実に生きています。それに対して、現代人の多くが苦しんでいる病のほとんどは、生活習慣に起因する予防可能な疾患だと言われています。
うつ病、不安症、不眠症、ニキビ、不妊症、心臓病、勃起不全、2型糖尿病、アルツハイマー病、がん——これらは一見すると無関係に思える病名ですが、実はすべて「同じ根」から派生していると、医学博士のケイシー・ミーンズ氏とトゥルーメッド社の共同創設者であるカリー・ミーンズ氏は指摘しています。その根とは、「代謝機能の不調」です。
彼らは、GOOD ENERGY(グッドエナジー) セルフケアでつくる最強の「代謝力」において、健康と長寿の鍵はこの代謝の健全性にあると断言しています。
グッドエナジーとは、簡単に言えば「細胞が正しくエネルギーを作れている状態」です。これは単なる活力の話ではなく、細胞が絶えずエネルギーを生成し、それを体中の組織に供給するという、生命の根本的なプロセスを意味します。
私たちの体には約40兆個の細胞があり、その一つひとつに存在するミトコンドリアが、まさにこのエネルギー生産の中枢を担っています。 ミトコンドリアは1秒間に数兆回もの化学反応を繰り返し、ATPというエネルギー通貨を生み出します。このエネルギーが、心拍、思考、免疫、ホルモン分泌、代謝といったすべての生理機能を支えているのです。
だからこそ、ミトコンドリアが正常に働いているとき、私たちはエネルギーを「意識せずにいられる」——それがグッドエナジーの状態です。
朝、すっきりと目覚める。食後に眠くならない。思考がクリアで感情が安定している。こうした日常の感覚は、すべてグッドエナジーの恩恵です。逆に、慢性的な疲労、集中力の低下、睡眠の質の低下といったなんとなく不調が続いているとしたら、それは細胞レベルのエネルギー生成に滞りが生じているサインかもしれません。
そして、それが長期化すれば、やがて代謝系疾患として顕在化していくのです。 つまり、グッドエナジーとは「何かをする元気」ではなく、「生きていることが自然でスムーズに感じられる状態」です。これを失うと、私たちの身体はまるで電力供給を絶たれた都市のように、あちこちで機能不全を起こし始めます。
現代社会における慢性病の増加は、まさにこの機能不全の積み重ねなのです。 にもかかわらず、私たちが日常的にグッドエナジーを意識することはほとんどありません。なぜなら、正常に機能しているとき、それは無意識であるほど自然な状態だからです。
ところが、現代社会の生活環境は、グッドエナジーを損なう要因に満ちています。私たちは知らず知らずのうちに、代謝機能に悪影響を与えるような選択を日々積み重ねています。 たとえば、加工食品に偏った食生活。現代人のカロリー摂取のうち、実に70%が超加工食品から来ていると言われています。そこには、精製糖や人工油脂、保存料や香料といった代謝を乱す物質が多く含まれています。
また、長時間座りっぱなしの生活、スマートフォンによる夜間のブルーライト曝露、慢性的な情報過多による交感神経の過緊張も、すべてミトコンドリアの働きを鈍らせます。
さらに、睡眠の乱れと慢性ストレス。これらはホルモンバランスを破壊し、自律神経系を混乱させ、代謝のリズムを狂わせます。こうした環境要因が複雑に絡み合い、エネルギーの生産と利用のプロセスを慢性的に妨害しているのです。これこそが、現代人の病の土壌です。
しかし、ミーンズ博士らは、現代人に希望があると言います。代謝機能は、後天的に回復可能なため、私たちの努力によって、健康を取り戻せるのです。
グッドエナジーのための4週のプログラム
グッドエナジーは、生まれつきの体質ではなく、日々の習慣によって再構築できる「可変資産」なのです。重要なのは、病気の治療ではなく、日々の習慣の改善なのです。
エネルギー代謝を改善することで、あなたは自分の可能性を最大限に発揮し、前向きで、頭が冴え、パワフルで、何でもできる自由を感じられるようになります。
グッドエナジーを手にした人々は、現代の主要な疾患から一歩引いたところで生きているような印象すらあります。アメリカで死因の1位とされる心臓病、2位のがん、5位の脳卒中、7位のアルツハイマー病、8位の2型糖尿病、10位の肝臓病──いずれも、代謝機能の低下と深く関わる病です。
グッドエナジーを保っている人たちは、これらの疾患の発症リスクが著しく低下することが研究で示されています。また、感染症である肺炎(9位)、COVID-19(3位)、慢性下気道疾患(6位)からの回復力においても、代謝が整っているかどうかが回復率を大きく左右するというのが近年の研究結果です。
心臓病患者の約70%、アルツハイマー病患者の約80%に血糖異常が見られるというデータも、代謝こそが健康の中枢にあるという事実を裏づけています。
エネルギー代謝とは、私たちの体内にある40兆個の細胞が、食事から得た栄養と酸素を使ってATPというエネルギーを生み出すプロセスです。この仕組みが乱れれば、どれだけ意志力があっても、どれだけ前向きな思考をしても、身体は動いてくれません。
逆に、細胞がスムーズにエネルギーを生み出せるようになると、心も体も驚くほど軽やかに整っていきます。 代謝の健全性は、単なる医学的数値の話ではなく、「人生の手応え」を決める要因でもあります。エネルギーが満ちているとき、私たちは前向きで、集中力が高く、感情が安定し、日常の小さなストレスに対しても柔軟に対処できます。
つまり、グッドエナジーは病気の予防という消極的な目的にとどまらず、自分の可能性を最大限に発揮し、「何でもできる感覚」を取り戻すための前提条件でもあるのです。 では、どうすればこのグッドエナジーを取り戻せるのか。
著者は、まず代謝の現状を数値で把握することを推奨しています。血糖値、中性脂肪、HDLコレステロール、血圧、腹囲、空腹時インスリンなど、5つの主要な代謝指標は、自分の細胞がうまく働いているかを測る「エネルギーの温度計」です。 そのうえで、具体的な改善戦略として提示されているのが「4週間プログラム」です。
第1週は、血糖値を安定させるために、食物繊維→タンパク質→炭水化物の順で食べる、加工食品を避ける、食前の酢を取り入れるようにします。
第2週は、睡眠と概日リズムを整えるため、朝の光を浴び、デジタルデトックスを行い、同じ時間に就寝・起床します。
第3週では、1時間に一度の軽い運動、サウナと冷水浴、マインドフルネス呼吸でストレスを整えます。第4週は、環境とマインドセットの調整を行います。化学物質を避け、感謝の習慣を持ち、不安や恐れとの向き合い方を変えていきます。この段階的な再設計が、代謝の深部にアプローチしていくのです。
私自身もアイスバスを試したり、マインドフルネスや呼吸法を日常に取り入れ、睡眠と集中力の質が少しづつ改善していることを実感しています。また、感謝日記を書くことで不安な気持ちを減らせています。つまり本書で語られる手法は、単なる理論ではなく、確かな実践知として作用するものであり、私たちの生活に効くアプローチだと捉えています。
食事、睡眠、運動の質を改善しよう!
健康に影響を与えるすべての機関、病院から製薬会社、医学部、そして保険会社でさえ、人々が「病気であるとき」に、より多くの利益を得る。そして、人々が健康になればなるほど、彼らの利益は減るということです。
生命を脅かす感染症や骨折などの急性疾患を患った場合には、医療システムの意見に耳を傾けるべきです。しかし、私たちを長年にわたって悩ませる慢性疾患に関しては、栄養や生活習慣についてのアドバイスにおいて、ほとんどすべての医療関連機関に対して疑問の目を持つことが大切です。
医療システムの裏側では、「お金」と「インセンティブ」が複雑に絡み合っているという現実を忘れてはなりません。 健康に関わるあらゆる組織——病院、製薬会社、医学部、そして保険会社などは、実は人々が「病気であるとき」にこそ大きな利益を得ています。
逆に、人々が健康であればあるほど、これらの組織の利益は減少するという構造があります。この現実を知ることが、私たちが本当の意味での健康を考えるきっかけになるのです。
環境に配慮したヘルシーな食品は、「高過ぎて、ほとんどの人には手が届かない」と思っている人もいるかもしれません。しかし、健康的な食品に前もってお金をかけるか、予防可能なはずの病気の治療費や病気に伴う収入減に対して将来お金を払うかの二択なのです。
実際、アメリカでは破産の原因の約70%が医療費の負担によるとされています。肥満の人は、そうでない人と比べて年間の医療費が2倍になり、さらに体重の増加とともに医療費も増加する傾向があります。
例えば、2型糖尿病の患者は年間で平均約1万7000ドルもの医療費を要します。また、心代謝性疾患などの慢性疾患を抱える人は、年間で最大80時間の労働を休まざるを得ず、その結果として収入が年間で数万ドル減少する可能性があります。さらに、肥満の人はそうでない人と比較して、仕事を休む割合が1.4倍高いというデータもあります。
グッドエナジー食品として推奨されるのは、ビタミンやミネラルなどの微量栄養素、抗酸化物質、オメガ3脂肪酸、食物繊維、発酵食品、タンパク質といった、細胞を健やかに保つ栄養素を豊富に含む食品です。反対に、精製糖や工業的に精製された植物油、種子油、精製穀物などは「バッドエナジー食品」として、エネルギーの質を損なう原因になります。
私たちは、細胞の働きとエネルギー産生の関係性を理解し、「太陽の光」「睡眠」「食事のタイミング」の3つの要素を意識することが、グッドエナジーを生み出す鍵になるのです。
ここで、「食の6つの原則」に触れておきたいと思います。まず第1に、「食」は細胞とマイクロバイオームの設計図であるという考え方です。私たちが何を食べるかによって、体内の微生物環境が決まり、そのバランスが免疫系や脳、さらには感情にまで影響を及ぼすのです。つまり、食は単なる栄養摂取ではなく、生命活動を司る根本的な設計そのものです。
第2に、食事とは、細胞のニーズに合ったものを、口から摂り入れる行為であるという視点です。空腹だから食べるのではなく、自分の細胞が必要としている栄養素は何かを意識して選ぶことが大切です。体調や季節、活動量に応じて、食べるべきものは変わるはずです。
第3の原則は、食品は細胞へのメッセージであるという点です。何を選んで食べるかが、細胞にどんな信号を送るのかを常に意識する必要があります。
例えば、ビタミンCが豊富な果物を摂ることで、抗酸化システムが活性化し、細胞が修復モードに切り替わります。逆に、加工食品ばかり摂れば、細胞に誤った指令が伝わり、慢性的な不調につながってしまいます。
第4に、加工食品への極度の食物渇望は、混乱したメッセージを細胞に送っているサインであるということです。ジャンクフードがやめられない、という状態は、単なる意志の弱さではなく、細胞が混乱し、誤った情報に振り回されている証でもあります。こうした渇望に気づくこと自体が、自分の状態を知る第一歩となります。
第5の原則では、食事法の議論に惑わされず、未加工の食品を選ぶことの重要性が語られています。流行のダイエットやスーパーフードに目を奪われがちですが、基本はあくまで自然に近い形の食材を選び、自分の体の声に耳を傾けることです。
そして第6は、マインドフルイーティング——つまり、「食」に対して畏敬の念を抱きながらいただくという姿勢です。どんなに栄養価の高い食材でも、無意識に流し込むような食べ方では、心と体に響くエネルギーは生まれません。一口ひとくちを味わい、感謝をもって食べることで、食事は「儀式」となり、グッドエナジーの源になります。
睡眠時間に関しても、1晩7時間未満または9時間以上の人は、全死因死亡率および2型糖尿病のリスクが高まるという研究結果があります。そのため、自身の平均睡眠時間を把握し、7〜8時間を目標に睡眠をとることが勧められます。
実際、人は自分の睡眠時間を実際より長く見積もる傾向があり、5時間しか眠っていないのに、80分も多く眠ったと錯覚しているケースもあるのです。このギャップを埋めるためには、ウェアラブル端末を活用して、睡眠時間だけでなく睡眠の質やリズムも記録することが重要です。夜間に何度目が覚めたか、深い睡眠がどの程度とれたかといった情報は、睡眠の質を把握するうえで有益です。
さらに、体をこまめに動かすことは、血糖値を安定させるうえでも効果的です。デスクワークの合間に5分程度の散歩やエアスクワットを行うだけで、グルコースチャネルが細胞膜に移動し、血糖が効率よく処理され、ATPの生成が促されます。
また、運動によってミトコンドリアの機能や数が向上し、抗酸化タンパク質の増加によって酸化ストレスから体を守ることができます。
こうした運動は、エネルギー代謝の向上に直結し、脂肪の蓄積を防ぎ、インスリン抵抗性を低減させる効果も期待されます。 日々の歩数を記録し、1日あたり7000歩を目標に、最終的には1万歩を目指す。これに加え、週に150分以上、心拍数を上げる運動を行うこと、主要な筋肉群を定期的に鍛えることが推奨されています。こうした習慣は、単なる運動の域を超えて、エネルギーの循環を促す重要な行動となるのです。
私も1日1万歩程度、歩くことを習慣にしていますが、体調が良くなるだけでなく、脳が活性化し、アイデア作りにも効果があることを実感しています。
そしてこれら習慣の改善は、私たちの未来の病気を防ぐだけでなく、日々のパフォーマンスや幸福感にまで波及していくのです。 グッドエナジーは、特別な人だけのものではありません。それは誰もが生まれながらに持っていたもの。ただ、現代の生活環境のなかで、その声が聞こえにくくなっているだけです。
もしあなたが、「もっと冴えたい」「もっと楽に動きたい」「もっと気分よく過ごしたい」と感じているのなら、その答えは意志や気合いではなく、代謝の再設計にあります。私も食事、睡眠、運動を意識することで、健康体を取り戻せました。
私たちは、より長く生きる方法ではなく、「よりよく生きる術」を求めるべき時代に生きています。グッドエナジーは、その問いに対する、静かで力強い答えなのです。
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