チームは未来志向の対話でうまくいく(ジャッキー・スタブロス, シェリ・トレス)の書評

two women taking to each other while holding pens

チームは未来志向の対話でうまくいく
ジャッキー・スタブロス, シェリ・トレス
ディスカヴァー・トゥエンティワン
 

チームは未来志向の対話でうまくいく(ジャッキー・スタブロス, シェリ・トレス)の要約

会話のない企業では信頼や創造性が育たず、やがて人材が離れていきます。アプリシエイティブ・インクワイアリー(AI)は、「肯定と感謝」「探求と問いかけ」に基づいた未来志向の対話で、組織文化を変え、成果を生む力を持ちます。生成的な質問とポジティブなフレーミングを通じて、価値ある会話が組織と人を変えていくのです。

アプリシエイティブ・インクワイアリー(AI)とは何か?

AIベースの会話を行えば、建設的で有意義なコミュニケーションができる。(ジャッキー・スタブロス, シェリ・トレス)

コミュニケーションの欠如した企業では、安定的な成長を続けていくことは容易ではありません。表面的には日々の業務が滞りなく進んでいるように見えても、その裏側では、社員同士の信頼が育たず、誤解や孤立、無関心といった負の感情が静かに広がっていきます。

対話のない職場では、本音が語られず、意見も共有されにくく、創造性が発揮される余地が失われてしまいます。やがて、課題が放置され、人材の離脱が起こり、企業は長期的な成長のチャンスを失ってしまうのです。 企業が持続的に成長していくためには、単に利益を上げることにとどまらず、社会や市場の変化に柔軟に対応しながら、ステークホルダーとの信頼を築いていく姿勢が不可欠です。

その中心にあるのが、人と人との関係性であり、質の高い対話です。社員の創造性を引き出し、協働の中で知恵を高め合うことで、組織全体の力が育っていきます。 特に今の時代は、ビジョンやパーパスに共感する仲間が集まり、自律的に動くチームの存在が、企業の成長を大きく支えるようになっています。

つまり、企業の未来は、日々の会話の質にかかっていると言っても過言ではありません。 良質な会話は、組織の文化や関係性を前向きに変化させ、やがて成果としても現れてきます。

逆に、破壊的な言葉や無関心な態度は、信頼を失わせ、組織の活力を奪ってしまいます。アプリシエイティブ・インクワイアリー(AI)は、こうした価値ある会話を育て、変化を引き起こすための有効なアプローチとして、多くの組織で活用されているのです。

チームは未来志向の対話でうまくいくの著者である二人は、その実践を50年以上にわたって積み重ね、企業や学校、地域社会など、さまざまな現場で人と組織が変化していくプロセスを見届けてきました。

本書の著者であるジャッキー・スタブロスは、ローレンス工科大学でビジネスとITを教える教授であり、30年以上にわたりリーダーシップや組織開発、チェンジ・マネジメントの分野で活躍してきた経営学博士です。

もう一人の著者であるシェリ・トレスは、教育心理学の博士であり、脳神経科学やポジティブ心理学に基づいた実践的アプローチで、組織やチームの関係性強化と成果向上を支援しています。

両者とも、AI(アプリシエイティブ・インクワイアリー)の世界的な実践者であり、多くの現場で変化を生み出してきました。

彼らの経験からわかるのは、AIが一時的なコミュニケーション技法ではなく、持続可能な変容を生み出す「対話の文化」を育む本質的なフレームであるということです。

ただ前向きな言葉を使うだけでなく、うまくいったことに注目し、そこにある価値や強みを見つめ直す。そしてその気づきを未来へとつなげていく姿勢が、組織文化に変革をもたらします。

AIの核となるのが、「アプリシエーション=肯定と感謝」と「インクワイアリー=探求と問いかけ」という2つの考え方です。これは、過去の過ちを責めるのではなく、成功体験や可能性に焦点を当て、それを対話によって深めていくプロセスです。

その具体的な実践として有効なのが、「生成的な質問」と「ポジティブなフレーミング」です。生成的な質問とは、「問題は何か?」ではなく、「何がうまくいっているか?」「どんな未来を創りたいか?」といった未来を切り拓く問いを投げかけること。そしてポジティブなフレーミングは、課題や困難を前向きな視点で捉え直し、「できる可能性」を引き出す思考法です。

さらに、こうした会話の質を高めるために欠かせないのが、「チューン・イン」という自己内省の力です。

会話とは、ただ言葉を交わすだけのものではありません。そこには感情や無意識の反応が影響しています。だからこそ、会話の前に一度立ち止まり、自分自身の状態に耳を傾けることが大切です。自分の心と向き合い、相手の言葉に対して意図的に反応することで、対話はより深く、信頼に満ちたものになります。

こうした対話の積み重ねによって、組織の関係性は変わっていきます。メンバーが安心して自分の意見を言えるようになり、互いにリスペクトしながら、未来に向かって共に進んでいける環境が整っていきます。やがてその空気が文化となり、目に見える成果へとつながっていくのです。 私自身も、これまで多くの経営者が「対話の欠如」によって組織運営に苦しむ姿を見てきました。

だからこそ、ビジョンを言語化し、対話によって共有するフレームワークを独自に開発し、企業の支援を続けています。AI(アプリシエイティブ・インクワイアリー)との出会いは、その取り組みに確かな理論と実践の軸を与えてくれました。

組織を変えるのは、制度や仕組みだけではありません。小さな問いかけや、未来を見据えた一言が、人の意識を動かし、チームの空気を変えていきます。言葉が変われば、対話が変わる。対話が変われば、組織が変わる。あなたが今日投げかけるひとことが、明日の未来を形づくるきっかけになるのです。

「生成的な質問」「ポジティブなフレーミング」「チューン・イン」が重要な理由

AIにもとづく会話を始めたいなら、チューン・インをして、「生成的な質問」「ポジティブなフレーミング」という2つのシンプルな実践法を使えばいい。AIの原理に従う習慣が身につくと、生産的で有意義な会話が自然とできるようになる。

「生成的な質問」の投げかけや「ポジティブなフレーミング」の活用によって、価値ある会話を日常の中に育むことができるのです。

「チューン・イン」は、会話において自分が意図的かつ意識的でいるための手法です。私たちの認知には無意識の影響が常にあります。その無意識の声に耳をすませておかないと、会話での応答は、自分でも気づかない心身の状態に左右されてしまいます。

だからこそ、まずは自分の内側を「チューン・イン」することが重要なのです。 会話を始める前、あるいは誰かの言葉に応答する前には、一度立ち止まり、自分自身にチューン・インすると良いと著者らは述べています。

最終的な目標は、自分の内面との対話も含め、あらゆる会話の場面でチューン・インし続けられるスキルを身につけることです。それができれば、私たちは自分の人生を自在に操る「指揮者」として、どんな状況にも意図的に対応できるようになります。

この「チューン・イン」の実践は、AIの2つの実践法――「生成的な質問」と「ポジティブなフレーミング」――を日常の会話で活かすうえでも、大きな助けになります。

「肯定と感謝」を土台とするアプリシエーションと、「探求と問いかけ」によって本質を引き出すインクワイアリー。この2つは、未来志向の有意義な会話を生み出すために欠かせないコンセプトです。

AIにもとづく会話を始めたいなら、まずは「チューン・イン」を行い、自分や相手の状態に注意深く意識を向けることが第一歩です。そのうえで、「生成的な質問」と「ポジティブなフレーミング」というシンプルな2つの行動を起こすだけで、誰でも価値ある対話のプロセスを始めることができます。

これらの習慣が身についてくると、生産的で有意義な会話が自然と身につくようになります。 生成的な質問とポジティブ・フレーミングは、単なる会話技術ではありません。私たちの脳の化学反応に働きかけ、思考の柔軟性や創造性を引き出す助けとなるのです。

このような状態を保ちながら仕事や日常生活に臨むことは、多くの人が望むことでしょう。そしてその力は、人間関係や組織、コミュニティといった、あらゆる場に応用することが可能です。 AIの原理を理解してからは、内省することや、好奇心を持つこと、自分の考えや物の見方を相対化することが、できるようになってきました。この気づきが力となり、価値ある会話につながるフレームを選べるようになったのです。

自分の内面に注意深く耳を澄ませることで、無意識の影響から自由になり、意図的に会話を選択できるようになります。このプロセスを習慣化することで、日常のあらゆる場面で意識的に行動できるようになり、自らの人生を主体的に切りひらく力が養われていくのです。

生成的な質問やフレーミングは、私たちの脳の働きにも良い影響を与え、創造性や柔軟性を高めてくれます。その結果、人間関係や仕事、組織や地域社会といった、あらゆる環境にポジティブな変化をもたらすことができるのです。

AIの5つの原理と5Dサイクル

「組織は人と会話でできている」のであり、人が会話や協働を通じて、組織文化や組織風土をつくるのだ。真の組織変革は、メンバー1人ひとりが、ともに目指す未来についての建設的で価値ある会話に参加し、主体性と責任感を組織に対して持てるようになったときに始まる。組織もコミュニティも、社会的に構築されたシステムである。

既存の構造やルール、業務の流れや方針といったものは、そもそもすべて人がつくってきたものです。つまり、私たち自身が意図をもってそれらを見直し、望む成果にふさわしい形に変えていくことができるのです。

そのときに大きな助けとなるのが、アプリシエイティブ・インクワイアリーの5つの原理と、変化を具体的に進めるための5Dサイクルです。

人と組織にポジティブなエネルギーを呼び込み、未来に向けた会話を戦略的に展開するための、実践的なフレームとして機能してくれます。

AIの理論を支えるのが「5つの原理」です。
・構成主義の原理
私たちが現実だと信じていることは、言葉や会話によって形づくられています。日常のやりとりが、意味や人間関係、組織文化さえも創り出しているのです。

・同時性の原理
変化は未来に起こるものではなく、質問や言葉が発せられた瞬間に始まります。会話の一言が、感情や行動をすぐに変える力を持っているのです。

・解釈開放性の原理(詩的原理)
すべての人や組織、状況は多様な見方が可能です。一つの真実だけにとらわれず、視点を変えることで新たな可能性が見えてきます。

・予期成就の原理
人は、自分が抱いたイメージや期待に基づいて行動します。前向きな予期があれば、それが現実の行動や成果にまで影響を与えます。

・ポジティブ性の原理
前向きで創造的な質問は、人の心を動かし、行動を後押しします。良い問いかけが、持続可能な変化の原動力になるのです。 これらの原理を意識しながら会話を重ねることで、自分自身の行動も少しずつ変わっていきます。

「何を話すか」ではなく「どう話すか」が、日々の人間関係やチームの雰囲気を左右します。 たとえば、問題点にばかり目を向けるのではなく、「どんな状態が理想なのか」「今ある強みは何か」と問い直してみるだけで、会話の流れが変わります。

自分の発する言葉が、場の空気をつくり、相手の行動や感情にも影響を与えていると気づいたとき、私たちは言葉を選び直し、自らの態度を変えることができます。

AIの実践とは、ただのスキルではありません。それは、自分自身の在り方を見つめ直し、他者との関係をより豊かに育む姿勢です。今日の一言が、未来の大きな変化につながっている。そんな確信を持って、まずは自分の行動から変えてみてください。

コミュニケーションが良くない企業は成長できない。これは、私がこれまでの経験を通じて痛感してきた事実です。多くの企業では、情報の伝達はされていても、意味のある対話が生まれていません。リーダーとメンバー、部署間、さらには経営層と現場の間で、「未来を共に語る会話」が欠けているのです。

だからこそ、『チームは未来志向の対話でうまくいく』という本書のメッセージには、深く共感しました。 会話のない経営者が苦しんできた姿を、私はこれまで何度も見聞きしてきました。そのたびに私は、独自に開発したフレームワークを用いて、ビジョンを可視化し、共有するメソッドで彼らを支援してきました。

ビジョンが言語化され、メンバーと共有されると、組織には自然と活力が宿ります。この体験からも、本書の核心的なメッセージには大きな説得力を感じています。

私自身、これまでビジョンやパーパスを紙に書き出し、自らの夢を言語化してきました。そのプロセスは、単に目標を明確にするだけでなく、他者との共有を通じて協力や応援を引き寄せる力にもなりました

AI(アプリシエイティブ・インクワイアリー)の5Dサイクルは、まさにこの個人のプロセスを組織全体に広げる仕組みだと感じました。

この5Dサイクルは、Define(定義)、Discover(発見)、Dream(夢)、Design(設計)、Deploy(展開)という5つのフェーズで構成されています。各フェーズは、組織に内在する強みと可能性を掘り起こし、未来の理想像をメンバー全員で描きながら、実現に向けた具体的なステップへと落とし込んでいくプロセスです。

たとえば、フェーズ1のDefine(定義)では、組織として何を探求するのかを明確にします。これは単なるテーマ設定ではなく、会話の方向性をポジティブにフレーミングする大事な出発点です。ここで設定される問いが、以後のすべての会話の質を決定づけます。

次に、Discover(発見)では、インタビューや対話を通して、組織にすでに存在する「最高の状態」や「うまくいっている要因」を明らかにしていきます。これは、問題を探すのではなく、可能性の種を見つけ出すプロセスです。メンバーが自ら語る成功体験の中に、組織の強み=ポジティブ・コアが存在します。

そしてDream(夢)では、発見した強みを土台に、未来に向けた大胆なビジョンを描きます。このフェーズでは、論理よりも感性が求められます。ワクワクする未来のイメージを共有することで、組織全体のエネルギーが高まります。ここでの対話が、組織文化の根本を変える原動力になるのです。

Design(設計)は、夢を現実に近づけるフェーズです。ここでは理想を実現するための具体的なアクションや仕組みを設計します。メンバーの創造力と主体性を活かして、「こうなったらいいな」を「こうすれば実現できる」へと進化させるのです。

最後のDeploy(展開)では、プロトタイプを試行しながら、実行と学習のサイクルを回していきます。ここで重要なのは、完璧さではなく、柔軟性と継続性。行動しながら学び、修正しながら進める姿勢が、組織に持続可能な変化をもたらします。

この5Dサイクルを導入することで、社内のコミュニケーションは活性化し、社員一人ひとりが組織の未来に自分事として関われるようになります。会話を通じて生まれる共感と信頼が、企業文化を形づくり、やがては業績にもつながっていくのです。

代表的な5つのAI的質問も非常に示唆に富んでいます。「あなたが経験した、組織での最高の瞬間は?」「あなたにとって最も大切にしている価値は?」「組織がいきいきしている理由は?」など、これらの問いは、答える人の記憶や感情、誇りを引き出しながら、対話を価値あるものへと導きます。

また、「3年後、理想の状態になっているとしたら、どんな組織になっているか?」という問いは、想像力を刺激し、未来志向の会話を育てるためのきっかけになります。そこから、「その未来に向けて、自分ができる3つのことは何か?」と続ければ、ビジョンは行動へと結びついていきます。

このように、AIの5Dサイクルは、単なる理論やフレームワークではなく、現場で使える実践的なコミュニケーションの道具です。

私自身、これまで「書くこと」「言葉にすること」を通じて夢をかなえてきましたが、その言葉が組織全体の中で価値を持つには、会話として共有される必要があるのだと再認識できました。

AIは、組織のパーパス(存在意義)とビジョンを明確にし、それを全員で実感しながら動き出すための強力なエンジンです。本書は、その設計図をわかりやすく、具体的に提示してくれる貴重な一冊だと思います。

最強Appleフレームワーク


 

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