Project Management進化論(後藤智博, 渡瀬智,西郷智史)の書評

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Project Management進化論 クリティカルチェーン・プロジェクトマネジメント――目的を達成するために、組織を動かし、“時間的余裕”を生み出す実践法とは?
後藤智博, 渡瀬智,西郷智史
プレジデント社

本書の要約

プロジェクトマネジメントは、プロジェクトを計画し、組織やリソースを適切に調整し、期日や予算を守りながら成果物を生み出すための体系的なアプローチです。これによりプロジェクトのリスクを最小限に抑え、クオリティを高めることで、クライアントとの信頼関係を築けます。

問題構造マップがなぜ重要なのか?

問題点を改善するためには、根本原因を特定して、そこに対策を打たなければ成果は出ない。それをしなければ、問題の再発は当然である。表面化している問題のほとんどは、ごく僅かな根本的な要因が発生源となって誘発されているケースがほとんどである。だからこそ、そこに目を向けずに改善活動を進めることは、無意味といえる。(後藤智博, 渡瀬智,西郷智史)

企業活動を続けていくと、日々さまざまな問題が発生してきます。これらの問題を正確に定義し、特定することは極めて重要です。なぜなら、問題を正しく解決しない限り、業務は停滞してしまうからです。 ここで問題構造マップが役立ちます。

問題構造マップを使うと、問題の真因を特定することができます。この手法では、問題とその背後にある原因との関係性を因果関係の線で結ぶことで、問題の本質を明らかにすることができます。 人々は通常、過去の経験や手をつけやすい問題に対処しようとしますが、これでは本当の問題の真因を見落としてしまうことがあります。

ですから、問題構造マップを活用することで、問題の本質的な要因に的確にアプローチすることが重要です。例えば、売上が低下しているという問題が発生した場合、多くの人はHOW(どうやって解決するか)に焦点を当てて効果のない解決策を試みがちです。

しかし、このアプローチでは本質的な問題解決にはつながりません。 問題を解決するためには、効果的なアプローチとしてWHAT(何が起きているか)、WHERE(どこで問題が起きているか)、WHY(なぜ問題が起きているか)、HOW(どうやって問題を解決するか)の順番で考えることが重要です。

WHATでは具体的な問題の状況や現象に焦点を当てます。売上の低下が起きているという事実を明確にし、問題の範囲を把握します。 次に、WHEREでは問題が発生している場所や部門、製品カテゴリなどを特定します。売上が低下している具体的なセグメントや地域を特定することで、問題の発生源を特定する手助けとなります。

そして、WHYでは問題の原因を探ります。なぜ売上が低下しているのか、顧客のニーズや市場の変化、競合状況など、問題の根本原因を特定することが重要です。

最後に、HOWでは問題を解決するための具体的な手法やアクションプランを考えます。根本原因を解決するための戦略や施策を検討し、適切な解決策を実施することで問題解決が可能となります。

その際、MECE(Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive)のフレームワークを活用することで、抜け漏れや重複を防止することができます。MECEは、ロジカルシンキングの基本的な概念であり、ビジネスやマーケティングなどの分野でよく活用されます。MECEの考え方を取り入れると、問題や課題をより深く理解し、優れた解決策を導くことができます。

問題構造マップを活用し、MECEを実施することで、競合他社の新製品による影響、顧客のニーズの変化、販売チームのスキル不足などが、売上低下の問題の真因として浮かび上がるかもしれません。 問題構造マップとMECEを使って問題の真因を特定することで、より効果的な解決策を見つけることができます。

この問題構造マップは私の大学の授業でも繰り返し教えていますが、問題構造マップを習得することで、ビジネスの課題に対して冷静かつ論理的なアプローチが可能となります。

問題の本質的な要因に焦点を当て、適切なアプローチを取ることができます。これにより、無駄な時間や労力を削減し、ビジネスの成果を最大化することができるのです。

ODSCのフレームワークで目的を明確にしよう!

プロジェクトをスタートする際には、目的を明確にする必要があります。この時に使えるのがODSCのフレームワークになります。ODSC(Objectives, Deliverables, Success Criteria)は、プロジェクトの計画段階で完成イメージを共有するために作成される重要なツールです。

1,ODSCの「O」は目的(Objectives)を表しています。プロジェクトの目的は、何を達成したいのかを明確に定義することです。目的は具体的で測定可能なものでなければなりません。例えば、新製品を開発すること、売上を10%増加させることなどが目的となるでしょう。目的はプロジェクトの骨格を形成し、進行方向を示す基盤となります。

2,ODSCの「D」は成果物(Deliverables)を表します。成果物はプロジェクトの結果として提供される具体的な成果物やアウトプットです。成果物は目的の達成に向けた一連のタスクやアクティビティを通じて生み出されます。例えば、プロジェクト計画書、設計ドキュメント、製品の完成品などが成果物として考えられます。成果物はプロジェクトの進捗状況や品質を評価するための基準となります。

3,ODSCの「SC」は成功基準(Success Criteria)を示しています。成功基準はプロジェクトの成果物が期待通りに達成されたかどうかを判断するための評価基準です。成功基準は成果物の品質や要件を明確に定義し、成果物が顧客のニーズを満たしているかどうかを判断するための指標となります。

例えば、製品の性能要件、顧客満足度の指標などが成功基準として考えられます。成功基準はプロジェクトの成果を客観的に評価するために重要です。 ODSCを活用することで、プロジェクトの計画段階で関係者間で明確な共通理解を築くことができます。目的の明確化により、プロジェクトの方向性が明確になります。

ODSCはプロジェクトのスムーズな進行と成果の達成に 不可欠です。ODSCを適切に作成し、関係者と共有することで、以下のようなメリットが得られます。
・目的の明確化
・成果物の明確化
・成功基準の設定:

ODSCはプロジェクトの計画段階でのみ使用されるものではありません。進行中のプロジェクトにおいても、ODSCを見直し、必要に応じて修正や追加を行うことが重要です。これにより、プロジェクトの進捗状況や成果物の品質に対する関係者の共通理解が保たれます。 

経営幹部やマネージャーは、マネジメント・アテンションを割いて、意思決定をする。だからこそ、経営幹部・マネージャーが動くべきプロジェクトを明確する必要がある。

マネジメント・アテンションは有限であり、経営者やマネージャーは、それを最も重要なタスクや意思決定に集中させる必要があります。しかし、経営者やマネージャーは、多くのタスクや意思決定に同時に対処していることがよくあります。これにより、マネジメント・アテンションが分散してしまい、意思決定のスピードが遅くなる可能性があります。

経営者やマネージャーが動くべきプロジェクトを明確にすることで、意思決定のスピードが格段に上がります。経営者やマネージャーは、最も重要なタスクや意思決定に集中できるようになり、より良い意思決定を行うことができるようになります。また、意思決定のスピードが上がることで、企業は競合他社に先んじ、ビジネスの機会をより早く活用することができるようになります。

パイプラインマネジメントで組織のリソースを最適化しよう!

組織のリソースには限りがあるため、効果的なプロジェクト運用が必要です。このような状況から脱出する方法として、「パイプラインマネジメント」が考えられます。パイプラインマネジメントは、「組織にとって最適なプロジェクトの投入タイミング」を決定する手法であり、以下のステップで行います。

①組織の制約となる投入基準タスク(仮想ドラム)を特定する: 組織内でリソースの制約となっている特定のタスクを特定します。このタスクは、プロジェクトの進行を妨げるボトルネックとなっているものです。仮想ドラムと呼ばれるこのタスクを特定することで、プロジェクトの投入基準を明確にすることができます。

②投入基準タスクの適正負荷を決める: 投入基準タスク(仮想ドラム)には、一定の負荷がかかることが想定されます。その負荷を評価し、適正な範囲を決定します。これにより、リソースのオーバーロードやボトルネックの発生を回避できます。

③投入基準タスクの適正負荷を維持できるタイミングで、プロジェクトを投入する: プロジェクトを投入するタイミングは、投入基準タスクの負荷が適正な範囲内に維持されるタイミングです。リソースの使用率やタスクの優先度を考慮し、適切なバランスを保ちながらプロジェクトを進行させます。これにより、組織のキャパシティ以上のプロジェクトを避け、効率的なリソースの活用が実現されます。

パイプラインマネジメントは、組織のリソース制約に適切に対処し、プロジェクトの投入タイミングを最適化する手法です。組織内のリソースを最大限に活用しながら、納期遵守を行うことがリーダーの役割です。効果的なプロジェクトの運用を実現し、クライアントからの信頼を得るためには、この手法を活用することが重要です。

本書は、故エリヤフ・ゴールドラット博士の提唱した「クリティカルチェーン・プロジェクトマネジメント(CCPM)」を基盤とし、株式会社ビーイングコンサルティングのコンサルタントが20年以上にわたる知識・経験・ノウハウを加えて開発されたプロジェクトマネジメントの理論と手法をわかりやすくまとめたものです。

ODSC、段階的フルキット、計画工程の作成、残日数報告による進捗実行管理、パイプラインマネジメント、できる人の感覚値を言語化するなどのメソッド正しく使うことで、ビジネスに成功がもたらされます。

※なお、本書は献本いただき、記事にしております。



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