書評 えらいてんちょうのしょぼい起業で生きていく

サラリーマンが嫌になったら、辞めてしまえばいい。簡単なことです。休んでいてもお金がもらえることになっている規則があるなら、休みましょう。あなたは会社のルールに従った結果、会社のことが嫌になったのですから、せめて会社のルールに従って、会社からもらえるものはもらいましょう。それも無理になったら、辞めてしまいましょう。(えらいてんちょう・矢内東紀)


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嫌な仕事をやらない?新しい起業スタイルのしょぼい起業とは何か?

しょぼい起業で生きていくを読むと、起業が簡単なものに思えてきます。難しいと思いがちな起業も嫌なことから逃げる選択肢の一つだと捉えれば、自分ごと化できます。私たちは嫌なことをやる必要はなく、好きなことを仕事にできるのです。無理にサラリーマンをしているのなら、いったん自分をリセットしてみるのも手だと思います。その時、本書は相当役に立つと思います。

まず、「いつもやっている行為をお金に換える」という考え方を身につけましょう。著者のえらいてんちょうは「しょぼい起業」には、「生活の資本化」(コストの資本化)が欠かせないと言います。電車の定期を持っているなら、それを活用してビジネスをスタートするのです。地元の野菜を仕入れて、都内の店に運べば、いつもの行為でお金を稼げるようになります。この生活の資本化でビジネスをスタートすることが、しょぼい起業のコンセプトです。

しょぼい起業には、「事業計画」も「資金調達」も、「経験」もいりません。例えば、飲食店を開きたければ、まずは自分の生活から、マネタイズを始めてみるのです。 人は毎日ごはん食べますが、自分のごはんを作るのにもお金がかかります。ひとりぶん料理を作るところを、10人ぶん作ったとしても、10倍の材料費はかからないし(肉を100g買うより1㎏まとめて買ったほうが単価は下がります)、10倍の労働力も必要ありません。余った9人ぶんを売ってしまえば、自分ひとりぶんの食事が実質無料になります。食費という、生きているだけで絶対にかかるコストを利益に換えてしまうという最強のシステムで、飲食店をスタートしましょう。

いくつかの資本を組み合わせて複数の事業を行うことで、リスクも回避できます。起業を難しく考えるのをやめ、まずは、生活の中で自分のやれること、日常やっていることを事業化できないかを考えてみましょう。しょぼい起業はつぶれにくいもので、失敗が少ない起業なのです。

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えらてんメソッドを活用して、しょぼい起業を始めよう。

おせっかいな人はいるもので、どんなことにも「それをやるには大金がかかるから覚悟しろおじさん」が登場します。店をやるということについてもそうですが、結婚、子育てなどについてもそうです。

「覚悟しろおじさん」は何にでもお金がかかるといいます。行動のハードルを高めることが、覚悟しろおじさんの重要な仕事です。お金はかけようと思えばいくらでもかかるし、かけないと思えばそんなにかからないものだと著者は述べています。

店舗を開く場合もおじさんの常識を信じなければ、ローリスクで開業できます。池袋界隈でも家賃8万円の店舗物件がたくさんあります。敷金は3カ月ぶんくらいとられますが、初期費用50万円くらいで店舗を借りられると言うのです。そして著者は借りた店に引っ越し、そこで自分の資産の販売(リサイクルショップ)をスタートしたのです。

自宅に服を置いておいても売れないのに、店を自宅にしたら服が売れた。家賃の足しになる!と喜んでたら、訳のわからないものがいっぱい売れて、初月には40万円くらいの売り上げがありました。意味不明で笑えます。「同じ家賃なら家より店借りたほうがいいだろ」と思ってたら、「おっ、結構売れる!家賃浮くー!」となって、「むしろそれだけで生活できるくらい儲かった!」になったわけです。まったく謎ですが、「せっかく店に住んだので、開けておいたら何か売れて儲かった」ところからすべてが始まりました。

著者はとりあえず、自宅兼用の店を開けておくことで、キャッシュが入ることに気づきました。当然、家を借りていたら、家賃は払わなければなりません。しかし、店に住むことで赤字ではない状態を作り出せます。販売で得たキャッシュはすべて利益だと考えるのが、しょぼい起業の特徴です。

店に誰かが来て、コミュニケーションを重ねるうちに新たな仕事の依頼も来ます。ここから、ビジネスのアイデアが膨らみ、キャッシュポイントが増えていきます。事業計画を綿密に作り、資金を集めて店を借り、許可をとって設備を整えてから営業するのではなく、店に人が集まって来てから計画を作るのです。ここで初めて設備を整え、必要な許可をとるようにします。「しょぼい起業」では、行動が先で、計画は後になって考えるものなのです。

事業は、アイデアから入るというより、人とのつながりや置かれている環境などの条件から、自分ができそうなことを発見して事業化していくものなのだ。

えらいてんちょうはみんなでカラオケに行くなら、自分たちのバーを開いた方がよいというアイデアをすぐに実行しました。その後、食品衛生責任者をおき、営業許可をとったのです。普通とは逆のステップを踏むことで、事業がうまくいったのです。

しょぼい起業は人も雇いません。協力者を集めるという考え方で、出費を最低限に抑えます。

「しょぼい起業」は固定費も含めて、あらゆる出費を限界まで抑えることが大原則ですので、よほど何店舗も抱えないかぎり、人を雇って従業員にするという選択肢はそもそもありません。

お金以外の対価を用意し、居心地の良い場所を作ることで人がお店に集まってきます。生活・資産の労働力化が起こり、人が勝手に事業を手伝ってくれるようになるのです。自主的に販路開拓してくれる人や、掃除や店番をしてくれるスタッフが現れ、利益が出せるようになるのです。ブラック企業のように間違った方法で、やりがいを搾取するのではなく、正しいやり方でやりがいを搾取すればよいのです。好きなことで人に動いてもらうノンストレスの環境を作ることが、利益につながるのです。ノンストレス環境=居心地のよい場所を用意することが労働問題を解決する鍵なのです。

また、こういった居心地の良い店、必要とされる店には口コミが起こります。お客さんに好き勝手に宣伝してもらうのです。その投稿をRT(リツイート)することが経営者の仕事になります。先にSNSで話題になることを目指し、自分らしい投稿をはじめましょう。

SNSでフォロワーを増やし、商圏を広げれば、ファンが店に集まり、商売が繁盛します。店に活気を作ることが重要で、SNSで居心地のよい雰囲気を最初に作るのです。SNSの空間を楽しくし、そこを店舗にしてしまうぐらいの気持ちで投稿しましょう。

店というのは不思議なものでして、誰も来ない店には誰も来ませんし、たくさんの人が来る店にはさらに人が集まってくるという現象があります。これはもうビックリするほど本当の話で、人が来なくなってつぶれる店は、少し前に訪ねるとすぐわかりよどます。本当に閑散として、空気が淀んでいる。いわゆる「死臭」がするんですね。反対に盛り上がっている店は、どんなに外観がボロかろうが、店の一部が壊れていようが、活気というか生命力にあふれています。

私もそうですが、暇な人には仕事を頼みたくありません。人は忙しい人と仕事をしたいですし、繁盛店に行きたいものなのです。仕事をしている感や楽しい場所を作ることで、人は引き寄せられてきます。てんちょうのマーケティング力で。店は4店舗にまで増え、ついには最初に始めたリサイクルショップをMAでお客さんに譲渡してしまいます。

えらいてんちょうは行動を起こしてから、仲間と一緒に次のストーリーを考えます。経営は理論よりも実践が重要であることを本書から学べます。今では「しょぼい起業コンサルタント」を名乗り、「えらてんメソッド」によって、しょぼい起業家を養成しています。周りに人を増やし、元気にさせることが本当に重要だと今回、著者に教えてもらえました。

まとめ

日常生活の中で自分の不要なものを売ったり、店舗で寝泊まりして家賃を下げるなどして、コストを利益に換える起業がしょぼい起業です。居心地のよい場所を作れば、店に人が集まり、面白いことが次々に起こります。少額資金で始められる新しい起業の形を本書から学べます。

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この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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