橘玲氏の事実 vs 本能 目を背けたいファクトにも理由があるの書評

①日本人のおよそ3分の1は日本語が読めない。②日本人の3分の1以上が小学校3~4年生以下の数的思考力しかない。③パソコンを使った基本的な仕事ができる日本人は1割以下しかいない。④65歳以下の日本の労働力人ロのうち、3人に1人がそもそもパソコンを使えない。(橘玲)


Background photo created by freepik – www.freepik.com

ファクトが重要な理由

橘玲氏の事実 vs 本能 目を背けたいファクトにも理由があるを読了しました。冒頭の驚くべき調査結果はPIAACのもので、先進国の学習到達度調査(PISA)の大人版によって明らかにされました。OECD(経済協力開発機構)加盟の先進国を中心に24力国・地域の約15万7000人を対象に実施された調査結果でしたが、日本ではほとんど話題になりませんでした。

日本人の数学やITの知識は惨憺たるものでしたが、さらに驚くことにほぼ全ての分野で日本が先進国で第一位の成績だったのです。私たちの多くはパソコンやIT、数学のスキルがあまり高くないという事実と他の国よりもレベルが高いというファクトがこの調査から読み解けます。

しかし、若者の成績だけを切り出すと、隣国韓国に負けています。 これは完全に教育の失敗で、日本の教育業界は国民(納税者)に対して重い説明責任を負っています。

また、この調査からは、より重い問題が明らかになりました。日本経済のいちばんの問題は労働生産性が低いことで、これは数字からも明らかになっています。日本の労働者が生み出す一人当たりの利益(付加価値)は8万4027ドル(約924万円)でしかなく、アメリカの労働者(12万7075ドル/約1398万円)の7割以下しかありません。日本はアメリカに比べ、生産性が3割も劣っているのです。

OECD加盟36力国中20位、先進7力国のなかではデータが取得可能な1970年以降、ずっと日本は最下位が定位置になっています(2018年)。知識社会では知的な職業スキルが高いほど生産性が高くなるはずですが、日本はまったくそうなっていません。

PIAAC報告書には、「イタリアとスペインは大卒者の得点が日本の高卒に及ぼない」と記されていますが、生産性に目を向けるとイタリアやスペインの方がはるかに高い数値を上げています。

OECDの報告書は、PIAACの得点が生産性に反映されない理由を、日本では労働者の高い能力が仕事で活かされていないからだとしています。男女の社会的な性差を示すジェンダーギャップ指数で日本は世界最底辺の110位ですが、OECDの分析でも、女性のスキルを活用できていないことが男女の収入の大きな差につながっているとされています。

ファクトとして言えることは、日本人はたしかに知的には優秀かもしれませんが、その能力を無駄にしているのです。それは日本人の働き方がまちがっているからであり、さらにいえば、日本社会の仕組みに大きな欠陥があるからだと著者の橘氏は指摘します。日本は先進国のふりをした身分制社会で、学歴がない人は、この身分を打ち破れないようになっています。メディアはこのファクトを報道しませんが、日本は上級国民と下級国民に分断されています。(参考 上級国民に関するブログ

本書には認めたくない多くのファクトが紹介されています。数字や調査をもとに考えることで、世の中の本質が見えてきます。

世の中には、縮尺や方位のちがう地図を手に右往左往しているひとが(ものすごく)たくさんいます。そんななかで、正しい地図を持っていることはとてつもなく有利です。これが、事実(ファクト)にこだわらなければならないいちばんの理由です。

世の中を正しく理解するためには、事実を積み重ねる事が必要ですが、私たちの本能がそれを邪魔します。日本社会は同調圧力が働き、自分の頭で考えずに、空気で動いてしまう人が多いのが実態です。メディアや政治家の話を鵜呑みにせず、論理的思考とファクトをしっかりとチェックしないと痛い目にあいます。

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

事実 vs 本能 目を背けたいファクトにも理由がある [ 橘 玲 ]
価格:1540円(税込、送料無料) (2019/10/23時点)

楽天で購入

 

若い男性が社会的弱者になる現実

すべての親にとって残酷な事実でしょうが、「子育てに終わりはない」のです。1990年代後半の「就職氷河期」から20年が過ぎ、80歳の親が50歳の子どもを養う「8050問題」が現実のものになってきました。そのあとに来るのは「9060問題」ではなく、親がいなくなったあと自宅に取り残された60代のひきこもり問題です。彼らの多くは無職か非正規の仕事しかしたことがなく、じゅうぶんな年金を受け取れないでしょうから、生活保護を申請する以外に生きる術がありません。

ひきこもりによる事件が今年は話題になりました。若い男性が社会的弱者となり、ひきこもりが長期化することで彼らが40代、50代となり、将来を悲観しています。80歳の親が50歳の子どもを養う「8050問題」がニュースを賑わしていますが、この問題を解決することはますます難しくなっています。

日本の高齢化率はピークに達しており、年金制度が破綻しないまでも保険料の負担は重くなり、受給額が減らされるのは避けられないでしょう。ひきこもりの憎悪が増し、日本でもテロのような殺人が増加する可能性が高いのです。

ヨーロッパでは移民問題が深刻化し、「極右」政党が台頭しています。ひとびとの不満は、(働かない)移民が手厚い社会保障制度に「ただ乗り」していることにあります。 それに比べて日本は移民の受け入れに消極的で、保守派はこれによって社会の安定と治安が保たれてきたと主張しています。しかし、日本では別の移民問題(ひきこもり)が深刻化していたのです。

あまり指摘されませんが、繰り返されるテロの実行犯にはもうひとつ共通点があります。それは犯人のなかに高齢者や若い女性がいることは稀で、ほぼ全員が「若い」「男性」だということです。いま起きているのは、高度化する知識社会から大量の「若い男」が脱落していることなのです。

すでに、アメリカでも銃の乱射事件が多発していますが、多くの場合、犯人は若い男性です。さまざまな調査から学業においては、女性が優位であることが明らかになりました。小学校から大学まですべての学年において女子は男子より成績がよく、2011年には男子生徒のSAT(大学進学適性試験)は過去40年で最低になり、成績表の最低点の70%を男子が占めました。女子生徒が生徒会や優等生協会、部活動などに積極的に参加する一方、多くの男子生徒は停学や留年でドロップアウトしていきます。女性が優秀なのはアメリカに限ったことではなく、先進国共通の課題で、男子が落ちこぼれる傾向にあるのです。

アメリカでは、ドロップアウトした黒人の若者はギャングスターに憧れ、下っ端のドラッグディーラーになって人生の大半を刑務所で過ごします。ヨーロッパでは、移民の二世、三世の「アラー世代」の若者たちが社会のなかに居場所を見つけられず、「神」と「正義」の名の下にテロリストに変貌していくのです。日本ではひきこもりとなった男性が、子供などの弱者を襲う事件が起こっています。

確実なのは、知識社会が高度化するにつれて、ドロップアウトする「若い男」がますます増えていくことです。そしてもうひとつたしかなのは、この問題にどう対処すればいいかだれも知らないことです。

日本のひきこもりは親の老化によって、ますます問題が深刻化します。親無しでは生きられない彼らを閉じ込めるのではなく、サポートする方法を見つけなければ、予期せぬ事件が今後も起こっていくはずです。アメリカやヨーロッパ、日本などの先進国は若い男性による様々な移民問題を抱えていますが、残念ながらその解決策は見つかっていないのです。

まとめ

調査データをしっかりと読み込むことで、ファクトを知ることができますが、意外なことに真実には、不愉快なことが隠されています。人間の本能はファクトを拒みがちですが、正しく世界を理解し、人生をよりよく生きるためには、ファクトから目をそらしてはいけないと著者は指摘します。

ブロガー・ビジネスプロデューサーの徳本昌大の5冊目のiPhoneアプリ習慣術がKindle Unlimitedで読み放題です!ぜひ、ご一読ください。

 

 

 

 

 

 

Loading Facebook Comments ...

コメント