なぜハーバード・ビジネス・スクールでは営業を教えないのか?
フィリップ・デルヴス・ブロートン
プレジデント社
本書の要約
成功するセールスマンの共通の特徴は、打たれ強さと楽観主義です。顧客は自分の話を聞いてくれる人を信頼します。コミュニケーションを重ねながら、顧客の課題を発見し、それを解決する方法を提案しましょう。他者を理解し、自分を理解してもらう相互理解が進めば、営業がうまくいくようになるのです。
偉大なセールスマンは拒絶と失敗を受け入れ、それを糧にする。
打たれ強さはセールスマンだけでなく、人生での成功を望む人すべてに必要な資質でもある。それは、逆境で心の平穏を保つ能力だ。(フィリップ・デルヴス・ブロートン)
フィリップ・デルヴス・ブロートンは、デイリー・テレグラフの記者として25カ国以上で報道に携わった後、ハーバード・ビジネス・スクールでMBAを取得します。その後、彼は世界中を飛び回って、ハーバード・ビジネススクールでは学べない営業の本質を明かにしました。
マーケティングとセールスを上手に掛け合わせると売上がアップします。マーケティングを学ぶプログラムは世の中に数多く存在しますが、ビジネスで最も重要な「営業」について教えるMBAプログラムは、ほとんどないと言います。
ハーバードビジネススクールのハワード・アンダーソン氏は「セールスは、結果が測れる唯一の分野だ。それがMBAの学生には死ぬほど恐ろしいんだよ」と述べています。世の中で活躍している多くのビジネスマンはビジネススクールになど行かずに、日々の努力によって結果を出していたのです。
著者は世界中の営業のプロフェッショナルをインタビューしたり、さまざまな研究結果からどうすれば営業で成功できるのかを明らかにしています。
偉大なセールスマンはみな、拒絶と失敗を受け入れ、それを糧にして最終的な成功へとつなげている。彼らは拒絶から顔をそむけず、それを受け入れて抵抗力をつけ、セールスマンが職業柄受ける打撃に耐えている。
フランス人心理学者のクロテール・ラパイユ は、優秀なセールスマンを「ハッピーな負け犬」と呼びます。彼らは拒絶を勝利への第一歩と受け止めています。ラパイユは、数企業で毎週セールスマンたちとミーティングを持ち、その週に受けた「ノー」の数を調査しました。すると受け取った「ノー」の数が多いほど、売上の金額も多いことがわかったのです。
「ノー」の多いセールスマンほど、顧客への訪問回数が多く、新たなことを試し、失敗も重ねていました。ノーを何度も受け取りながら、アポイントを取った顧客との人間関係を彼らは構築していました。優秀なセールスマンは商談を重ねながら、顧客の課題を発見、解決していったのです。
セールスマンの共通の特徴は、打たれ強さと楽観主義。
優秀なセールスマンは、いちばん重要な顧客の特性を掴み、売上を伸ばし、頭のなかのピラミッドに確信を持ち、その結果ますます顧客を見る目が冴えてさらに成功を重ねるという好循環を繰り返す。
営業を成功させるためには、以下の3つのスッテプを実践するとよいでしょう。
1、聞き手の関心を惹きつける段階。
顧客とのコミュニケーションを通じて、課題を明らかにしていきます。聞き手である顧客は危機意識を抱き、解決策を知りたくなります。
2、問題を解決しようともがいたり、敵(人間的、感情的、現実的な障害)に勝つために努力する段階。
3、解決法を提案し、顧客を行動に駆り立てる段階。
セールスマンは、さまざまな状況のなかで顧客にどうアプローチするかを決める前に、相手がどんな人間で何を望んでいるかを見極めなければなりません。顧客の動機を正しく察すること、宣言的知識(治療前の診断を行う)を得ることで、セールスマンは、正しい商品やサービスを顧客に提案できるようになります。
テキサスA&M大学でマーケティングを教えるデビッド・シマンスキ教授は、「競争が熾烈で、顧客の要求を満たす商品が数多く存在する環境では、顧客に合わせて売り方を変えるセールスマンがライバルに勝るでしょう」と述べ、個人営業における宣言的知識の重要性を指摘します。
ギルバート・チャーチル、ニール・フォード、スティーブン・ハートリー、オーヴィル・ウォーカーのセールスについての論文によると、自分の行動とその理由を理解し、どんな見返りがあるか、また誰をよろこばせればいいかをはっきり認識しているセールスマンが、成功していることが明らかになりました。優秀な営業マンは、顧客に共感し、彼らの課題を解決することに注力すると同時に、成功したいという意欲を持っていたのです。
逆に、仕事に対してあいまいな気持ちや葛藤が大きい人ほど、成績が振るわなかったのです。自分を見失ったり、目的がないと感じている場合も、売上はあがっていませんでした。
マーティン・セグリマンの保険外交員の研究によると 営業スキルと知識を身に付けた後には、楽観派の売上が悲観派の売上を2割も上回っていました。楽観的な人は営業に成功すると自信を深めていきます。彼らはますます楽観的になってさらに成功していったのです。自信のある人は、自分はみんなに好かれ、ものごとはうまくいくと考えていました。
成功するセールスマンの共通の特徴は、打たれ強さと楽観主義であると著者は指摘します。 営業とはノーと断られても、決してあきらめないことです。彼らはコミュニケーションを重ね、相手との良好な関係を構築し、貢献することを目指していました。自分の思いを相手にしっかりと伝えて、相手の心を動かすことで、やがて商品やサービスが売れるようになります。
顧客は自分の話を聞いてくれる人を信頼します。対話を通じて、顧客の課題を発見し、それを解決する方法を提案すれば、顧客は行動を起こしてくれます。他者を理解し、自分を理解してもらう相互理解が進めば、営業がうまくいくようになるのです。
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