ビジネスフレームワークの教科書 アイデア創出・市場分析・企画提案・改善の手法 55
安岡寛道, 富樫佳織, 伊藤智久, 小片隆久
SBクリエイティブ
ビジネスフレームワークの教科書の要約
フレームワークを活用することの真の価値は、私たち自身の思考力や創造力が磨かれることにあります。フレームワークは思考の足場となり、より高い視点から問題を捉え、革新的な解決策を生み出す力を私たちに与えてくれるのです。早いタイミングでフレームワークを身につけることで、ビジネスの成功確率を高められます。
フレームワークを武器にしよう!
もし私が遠くを見渡せたのだとすれば、それは巨人の肩の上に立っていたからです。(アイザック・ニュートン)
本書の冒頭にはこのアイザック・ニュートンの有名な言葉が紹介されています。フレームワークを武器にするという考え方は、まさにこのニュートンの言葉を現代に応用したものだと言えます。
私たちが日々直面する問題や課題は、一見すると新しく見えるかもしれません。しかし、その本質を掘り下げてみると、過去の研究や実務の中で培われた知恵が解決の糸口となることが多いのです。
フレームワークとは、問題解決や意思決定のための体系的なアプローチや考え方のことです。これらは、多くの専門家や実務家によって長年かけて開発され、洗練されてきました。フレームワークを活用することで、私たちは「巨人の肩の上に立つ」ことができるのです。
フレームワークを自分の武器にするためには、まず既存のフレームワークについて深く学ぶことが大切です。経営戦略、マーケティング、プロジェクトマネジメントなど、様々な分野で確立されたフレームワークがあります。これらを学び、理解することで、複雑な問題を体系的に分析し、効果的な解決策を見出す力が身につきます。
しかし、フレームワークを単に知識として持っているだけでは不十分です。実際の問題に適用し、自分なりにカスタマイズしていくことが重要です。各フレームワークの強みと弱みを理解し、状況に応じて適切なものを選択する判断力も必要になってきます。
さらに、複数のフレームワークを組み合わせたり、新しい要素を加えたりすることで、より効果的な問題解決が可能になることもあります。これは、単にフレームワークを使いこなすだけでなく、創造的に応用する能力を養うことにもつながります。
フレームワークを武器にするということは、結局のところ、先人の知恵を謙虚に学びつつ、それを自分のものとして進化させていく姿勢を持つことです。これによって、私たちは新しい課題に対しても、より効果的かつ効率的に取り組むことができるようになるのです。
そして、AIの普及でインプットとアウトプットの考え方が変わってきました。フレームワークを活用しながらプロンプトを考え、AIを活用して正しい答えを導けるようになったのです。AIとフレームワークの両輪で、私たちはビジネスの生産性を高められます。
私は40年ほど前、広告会社に入社した際にマトリックス分析やSWOT分析といったフレームワークを徹底的に学び、それを自分の強力な武器とすることができました。関連書籍を読み込み、実際のビジネスで活用しながらスキルを磨き続け、その結果、ベンチャー企業の取締役や大学教授の立場に就くことができました。(参考拙著・最強Appleフレームワーク)
フレームワークを活用することの真の価値は、私たち自身の思考力や創造力が磨かれることにあります。フレームワークは思考の足場となり、より高い視点から問題を捉え、革新的な解決策を生み出す力を私たちに与えてくれるのです。早いタイミングでフレームワークを身につけることで、ビジネスの成功確率を高められます。
本書は55の多様なフレームワークを【基本】【図解】【事例】の構成で、体系的かつわかりやく学べるようになっています。本書を活用することで、私たちはさまざまなビジネスシーンでフレームワークを効果的に活用できるようになります。
リーンスタートアップやビジネスモデルキャンバスやモデルなど起業のためのフレームワークも紹介されているので、イノベーションや新規アイデア創出の課題に取り組むビジネスパーソンにもおすすめです。
今日は、本書の55のフレームワークからアナロジー思考と回転寿司のケースを紹介します。
回転寿司もアナロジー思考というフレームワークで説明可能
アナロジー思考とは、異なる2つ以上の事柄から「類似性」や「特徴」「機能」を抽象化によって見つけ出し、それらを「借りとくる」ことで新しいアイデアを創出する発想法です。アナロジー思考の強みは、抽象化することによって、まったく異なる分野から特徴や機能を借りてくるところにあります。
私たちはアナロジー思考によって、新たなアイデアを生み出せます。新しいビジネスアイデアを生み出す際、単なる模倣を避け、革新的なアプローチを取ることが重要です。この考え方は、異なる分野からアイデアを借用することで実現できます。
例えば、パン屋が他のパン屋の成功例を真似るのではなく、スポーツ興行の手法を取り入れることで、独自性のあるビジネスモデルを構築できる可能性があります。
このプロセスでは、アイデアの源泉となる「ベース」と、解決したい課題である「ターゲット」の間の距離が重要です。両者の距離が遠ければ遠いほど、より斬新なアイデアが生まれる可能性が高まります。ただし、この際に注意すべきは、ベースとターゲットの間に適度な共通点を見出すことです。
共通点が多すぎると新規性が失われ、少なすぎると関連性を見出すことが困難になります。理想的には、2〜3個程度の共通点があることが望ましいとされています。 また、共通点を探る際には、表面的な類似性ではなく構造的な類似性に着目することが重要です。
表面的類似性は見た目や音など、外見的な特徴に基づくものです。一方、構造的類似性は機能や仕組みなど、より本質的な部分に着目します。例えば、猫と猫のぬいぐるみは表面的には似ていますが、機能的には全く異なります。
この考え方の実例として、回転寿司の誕生を挙げることができます。回転寿司は、元禄産業の白石義明が1948年に開発しました。元々、立ち食い寿司店として人気を博していた元禄寿司は、繁盛するにつれて人手不足に悩まされていました。
この課題を解決するヒントを、白石氏はビール工場の見学から得たと言います。 ビール工場のベルトコンベアを見た彼は、寿司皿をベルトコンベアで運ぶというアイデアを思いつきました。
このプロセスを分析すると、「立ち食い寿司の業務効率向上」がターゲットで、「ビール工場のベルトコンベア」がベースとなっています。 立ち食い寿司を抽象化すると、回転率重視、人による調理、皿での提供、人への負担が大きいといった特徴が浮かび上がります。
一方、ビール工場のベルトコンベアは、機械式、大量生産対応、物の自動搬送、物が部屋内を循環するといった特徴を持ちます。
これらの特徴を比較すると、回転率重視と大量生産対応、皿での提供と物の搬送といった構造的類似性が見出せます。この類似性に基づき、機械式と物の循環という属性を借用し、「機械式装置で寿司皿が店内を循環する」という革新的なアイデアが生まれました。
このように、異分野からのアイデア借用と適切な抽象化プロセスを通じて、画期的なビジネスモデルを創出することが可能になります。回転寿司の例は、アナロジー思考法の有効性を示す典型的な成功事例と言えます。
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