ブリッツスケール:劇的な成長を遂げる唯一の方法 (リード・ホフマン)の書評

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ブリッツスケール:劇的な成長を遂げる唯一の方法
リード・ホフマン
ダイヤモンド社

ブリッツスケール (リード・ホフマン)の要約

ブリッツスケールは、企業を飛躍的に成長させる戦略の一つです。この戦略は、従来のビジネス戦略とは異なり、スピードを重視し、大量の経営資源を投入することで指数関数的な成長を実現します。 経営リーダーはリスクと不安に耐え忍びながら、大きな成果を目指す必要があります。

企業を飛躍的に成長させるブリッツスケールとはなにか?

世界規模の市場に製品・サービスを提供することを目的に、短時間で企業を築き上げるるための理論と実践がブリッツスケールです。その最終目的は、一定規模を持つ、その世界の先駆者となることです。(リード・ホフマン)

リード・ホフマンはリンクトインの共同創業者であり、フェイスブックやエアビーアンドビーの初期投資家のひとりとしても知られています。彼はビジネス界で非常に成功した経歴を持ち、その成功は彼の人脈と経験によって支えられています。

ホフマンはリンクトインを創業し、ビジネス特化型のオンラインソーシャルネットワークとして成功を収めました。彼のビジョンとリーダーシップによって、リンクトインは急速に成長し、2016年にはマイクロソフトによって買収されるほどの規模にまで育ちました。それを牽引したのが、本書の著者のリード・ホフマンなのです。

その彼がベンチャー経営者に提案しているのが、ブリッツスケールという考え方です。 ブリッツスケールは、迅速な成長を目指すビジネス戦略です。ホフマンは、シリコンバレーで成功した企業や経営者の話を聞き、共通のパターンを見つけました。そして、ブリッツスケールを成功させるためには、4つの成長要素が必要だと結論づけました。

まず、成長に十分な市場規模が必要です。ビジネスが成長するためには、需要がある市場が存在しなければなりません。次に、最適な流通経路が必要です。効率的な流通経路を確立することで、製品やサービスを顧客に届けることができます。

さらに、高い利益率が見込めることも重要です。利益率が高ければ、企業は成長に必要な資金を確保することができます。そして、ネットワーク効果も成長要素の一つです。ネットワーク効果があれば、顧客やパートナーが増え、ビジネスがさらに成長することができます。

一方で、成長を妨げる制限要素も存在します。まず、製品や市場への適性が欠如している場合、成長は難しいでしょう。また、オペレーションの急激な拡大の限界も制限要素となります。適切なオペレーション体制を整えることが重要です。

ホフマンは、ブリッツスケールを実現するためには、これらの成長要素を最大限に活用し、これらの要素を克服する必要があると述べています。彼の経験と知識は、多くのベンチャー経営者にとって貴重な指針となるでしょう

アマゾンは「eコマース」という産業を創出し、15万人以上の直接雇用を生み出すだけでなく、アマゾン上の売り手やパートナーを通じて間接的な雇用も創出しました。

また、グーグルは情報検索の方法に革命を起こし、6万人以上の従業員を雇用し、アドワーズやアドセンスを通じてさらに多くの雇用を生み出しました。 現代社会は「ネットワーク時代」として描かれており、これにはインターネットの普及だけでなく、グローバル化の進展も含まれます。

グローバル化は、物流、商取引、支払い、情報の流通といった領域においても、世界規模のネットワークを形成しています。このような環境では、企業は迅速に動く必要があり、世界中のどこからでも競合他社が現れる可能性があるため、規模の大きさによる競争優位を早期に確立することが重要になります。

なぜ、規模の拡大時にスピードが求められるのか?

ソフトウェアは本質的に、ブリッツスケールに親和性があります。製品やサービスを提供する市場の規模がどれほど大きくなっても、限界費用は実質的にゼロだからです。

ほぼ全ての産業において、ソフトウェアが重要な役割を担っており、AIの進歩により、これらの産業はさらに高速に動くようになっています。AIによる機械学習が加わることで、ビジネスの進展がより加速されます。

この高速化の結果、ブリッツスケールと呼ばれる現象が増えていきます。これは、スタートアップ企業が非常に迅速に成長し、市場での優位を確立する戦略です。

ブリッツスケールは、攻撃面では事業を成功させるために一定規模を達成する必要があるため、また守備面では最初に市場に参入し、顧客を囲い込むために必要となります。

当然、急速な成長戦略には大きなリスクが伴いますが、グローバル化した市場では、真の競争相手が誰かも常に明確でないため、迅速な行動が求められます。 要するに、テクノロジーの進歩によりビジネス環境はよりダイナミックで競争が激しくなっており、スタートアップ企業は素早く規模を拡大し、市場での地位を確立するためにブリッツスケールという戦略を取る必要があります。

ホフマンは企業の規模拡大に関する戦略と考え方に焦点を当てています。
・規模拡大の3種類
企業の規模拡大には「収益の拡大」、「顧客基盤の拡大」、そして「組織の拡大」の3種類があります。収益と顧客基盤は基本的ですが、組織の拡大もまた、長期的な成功には不可欠です。

・規模の異なるステージ
企業の規模は、家族レベルから国レベルまでの異なるステージに分けられます。従業員数は目安であり、資金調達、従業員の採用・維持、製品のマーケティングなどのビジネスの側面は、ステージによって大きく変わります。

・ブリッツスケールの対応
ブリッツスケールでは、これらの変化に対する一般的な法則は存在せず、経験則に基づいて迅速に行動し、適応する必要があります。

・組織の性質と部門別の規模拡大
組織の規模は従業員数だけでなく、企業の性質によっても決まります。全部門を同じタイミングやペースで規模拡大する必要はなく、初期段階では顧客サービスや販売が優先されるかもしれませんが、最終的には他の部門も拡大する必要があります。

・組織全体の戦略
企業は、人材配置、社内文化の維持、意思疎通、競争環境の分析など、会社全体の視点から戦略を考える必要があります。 要するに、企業の規模拡大は単純な従業員数の増加だけではなく、組織の性質やステージに応じた複雑な戦略が必要であり、特にブリッツスケーリングを目指す企業には、柔軟性と迅速な対応が求められます。

ホフマンはブリッツスケールの開始するタイミングと注意すべき点を整理しています。スタートアップ企業は集中とスピードを活かして既存企業や他の競合に対抗する必要があり、この戦略を成功させるためには迅速な行動と適切な戦略が重要です。

通常、ブリッツスケールは企業が一族レベルから村落レベルへ移行する段階でスタートします。この時点で、製品が市場にフィットしている(プロダクト・マーケット・フィット)ことが確認され、一定のデータと競争環境の全体像が把握されています。

魅力的な市場カテゴリーが存在し、そこに大きなチャンスがあることが明確になると、さまざまなタイプの競合が出現します。一部は他のスタートアップが製品やサービスを模倣して市場に投入し、他の一部は既存の大手企業が市場シェアを奪おうとします。

スタートアップ企業の強みは集中力とスピードです。既存の大手企業はこれらの面で動きが鈍く、他のスタートアップも同じ「加速度」を持っていない可能性が高いです。しかし、集中力とスピードだけでは不十分な場合もあります。

グルーポンはブリッツスケールを試みた典型的な例ですが、迅速な規模拡大や長期間の製品開発に失敗し、あっという間に競合が乱立し、最終的には市場での優位性を確立できませんでした。 要は、ブリッツスケールは特定の成長段階で、市場の機会と競争圧力が高まるタイミングで開始されます。

企業ステージの成長段階に応じて、戦略も変化する!

ホフマンはベンチャー企業の経営者が直面する多様な課題と、企業の成長段階に応じた戦略の変化を指摘します。
・専門性の向上
経営者はエンジニアリングやマーケティングなど、多岐にわたる部門での専門性を高める必要があります。顧客と市場の情報を理解し、分析手法や評価基準を用いて部門ごとの実情を把握することが重要です。

・信頼性の向上と組織の進化
村落レベルからブリッツスケールする際、以前は許されていた能力不足が許されなくなります。ウェブサイトの安定稼働や新製品の慎重な市場投入など、信頼性の高い運営が求められます。

・組織構造の進化
企業の規模が拡大するにつれて、単線の組織から複線の組織へと進化します。一族レベルでは全員が一つの課題に集中しますが、村落レベルになると複数の分野に焦点を当て、実験を始める時期になります。例えば、新しい部門の設立や他社の買収などが考慮されます。

・複線化とグローバル化
都市レベルになると、主力製品が複数存在する場合もあり、製品ごとの位置関係を定めることが重要です。シリコンバレーの多くの企業は、村落レベルから都市レベルに拡大する際にグローバル化しますが、中には初日からグローバルな存在としてスタートする企業もあります。

リンクトインの事例のように、創業時からグローバルな視野を持ち、世界各国のユーザーを考慮することが、企業の成功に不可欠です。グローバル市場に対応するためには、多様な国々や文化に適応する柔軟性が求められます。

ベンチャー企業の経営者は、成長段階に応じて多岐にわたる専門性を高め、信頼性のある運営を行い、組織構造を適切に進化させることが求められます。また、グローバルな視野を持ち、世界各地の市場とユーザーに対応する能力が重要になります。

ブリッツスケール中の企業が直面する課題はいくつもあり、スピーディにそれを解決する必要があります。しかし、同時にすべてを解決することは不可能です。緊急度に基づいて問題の優先順位を決定する「トリアージ」が必要になります。

その際、投資家からの追加資金を得るための問題を優先的に解決します。新規資金により、他の問題解決のための時間を得ることができます。

通常の経営原則では、チーム内の人間関係のトラブルをすぐに解決することが推奨されますが、ブリッツスケール中はこれが四六時中発生し、組織の高速変化により、今日の問題が明日には変わっている可能性があります。

ブリッツスケール中の組織は常に変化しており、つぎはぎだらけで不格好な状態が続きます。機能不全は一時的に放置されることもあります。

例えば、エンジニアの生産性向上のためのツール開発などの問題は、組織の規模が大きく変わり続けるため、解決を待つことがあります。

ブリッツスケール中の多くの組織は、内部に不満を抱え、職務と責任が曖昧で、シミュレーション用のサンドボックスがないなど、カオスな状態が続くことがありますが、その恐怖に怯えず、事業の成長を目指すべきです。その際、ビジョンやパーパスが従業員を鼓舞します。

ペイパル、グーグル、イーベイ、フェイスブック、リンクトイン、そしてツイッター。みんなそうです。どの会社も空中分解せずにやってくることができた理由は一つ。目の前で起きていることへの興奮、そして素晴らしい将来像に対する興奮の気持ちです。

要するに、ブリッツスケール中の企業は、問題の優先順位を適切に定め、一時的な問題の放置や組織内の不満とカオスに対処しながら、経営を進めています。重要なのは、ブリッツスケールの速さと変化に適応する柔軟な経営戦略を持つことです。GAFAと言われる企業もこの壁を乗り越えてきたのです。社員が離脱しないための壮大なビジョンを示すことがリーダーには求められています。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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