デザインを、経営のそばに。(八木彩)の書評

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デザインを、経営のそばに。
八木彩
かんき出版

デザインを、経営のそばに。(八木彩)の要約

ブランディングの目的は「好きになってもらうこと」であり、マーケティングの目的は「売ること」です。ブランドコンセプトは、この2つの目的を達成するための重要な要素となります。 デザイン経営を取り入れ、ブランディングとマーケティングを上手に使い分けることで、組織の成長と競争力の向上を図ることができます。

ブランディングデザインが重要な理由

ブランディングデザインとは、ブランドの思想と世界観(=らしさ)に独自性と、一貫性をつくること。そして、ブランドに関わる全員が、ブランドの思想と世界観を理解し、共創できる状態をつくることです。ブランドの「らしさ」を可視化し、ブランドの機能的価値と情緒的価値を高め、お客様にブランドを「好き」になってもらうことを目指していきます。(八木彩)

電通出身のアートディレクター、八木彩氏によると、デザインはビジネスにおいて有用な力を持っているにもかかわらず、現状ではその活用が十分ではないとのことです。この問題を解決するためには、デザイナー自身がデザインの重要性や活用方法を論理的に説明し、プロジェクトに関わる全ての人が理解できるように伝えることが重要だと考え、本書を執筆しました。

私も広告会社出身なので、デザイン経営の重要性を絶えずクライアントやパートナーに説いてきましたが、デザイン経営によって2つの効果を得られるという著者の主張には共感を覚えました。

・ブランド力向上
・・・デザインを通じて、企業のビジョンやコンセプトを可視化できます。
・イノベーション力向上・・・デザインを活用することで、潜在的なニーズを発見し、誰のために何をするかという基本的な問いに立ち返ることができます。これにより、既存の事業に囚われずに新しい事業を構想する能力が向上し、結果としてイノベーションの力が強化されます。

「好き」と感じさせ、「これがいい」と選ばれる商品を作るためには、「ブランディングデザイン」を採用することが効果的です。ブランディングデザインによって目指すべきことは主に2つあります。

1つは、ブランドの思想や世界観に一貫性と独自性を持たせることです。そしてもう一つは、ブランドに関わる全員がブランドの思想と世界観を理解し、共に創造する環境を作ることです。その際、ブランドに人格を持たせることで、ブランド力を高められます。

ブランドの人格を確立することは、ブランドの魅力を高めるために欠かせない要素です。明確な人格を持ち、他のブランドと差別化することで、消費者の共感を得ることができます。ブランドが「好きだな」「仲間になりたいな」と思われるためには、自分たちの個性をしっかりと確立し、それを伝えることが重要です。

企業や商品のブランド人格が確立できていれば、その考えに共感する人々を引き寄せられます。そのためには、ブランドが独自の個性を持ち、明確な人格を確立することが重要です。 しかし、イメージがバラバラで、言っていることがその都度変わるようなブランドの人格では、印象に残りませんし、信用もされません。ブランドの人格は、一貫性を持たせる努力が求められています。

多くの人から共感を得ることに成功し、かつ長く愛されているブランドには、明確な人格があります。例えば、おしゃれで洗練されたイメージや、質素で地道なイメージ、優しいやさしいイメージなど、ブランドが持つ個性が明確に伝わることが重要です。

・ナイキ・・・スポーティでアクティブ、自分の主張をきちんと持っている人
・スターバックス・・・オシャレで都会的、自分の時間を大切にする人
・無印良品・…清楚でまじめ、丁寧に生活している人
・資生堂・・・上品で美しく、自信に満ち溢れた人

ブランドを「好き」だと思ってもらうためには、競合ブランドが簡単に真似できない、明確な「らしさ」を持つことが求められます。自分たちのブランドの特徴や強みを明確にし、それを活かした戦略を立てることが重要です。例えば、高品質な商品やサービスを提供すること、独自のデザインやスタイルを追求することなど、他のブランドと差別化する要素を持つことが欠かせません。

また、ブランドの人格を確立するためには、一貫したコミュニケーションも重要です。ブランドのメッセージや価値観を明確に伝えることで、消費者との共感を生み出すことができます。SNSや広告などの媒体を活用し、ブランドの人格を効果的に伝えることが必要です。

ブランディングデザインを成功させるための4つのポイント。

デザインには4つの力があると著者は言います。
①問いを見つける力
②想像を可視化する力
③整理しわかりやすくする力
④心を動かすカタチをつくる力

まず、問いを見つける力について考えてみましょう。問いは新たな視点をもたらし、課題や認識の固定化を打破することができます。問いを見つけることで、問題や課題の本質を探求し、解決策を見つけることができるのです。この新たな問いが人々の共感の入り口になるのです。

次に、想像を可視化する力です。デザインはアイデアや概念を具体的な形にすることで、人々に伝える力を持っています。想像を可視化することで、アイデアやコンセプトをより具体的に表現し、共有することができます。

また、整理しわかりやすくする力も重要です。デザインは情報を整理し、わかりやすく伝えることができます。複雑な情報をシンプルにまとめることで、人々にとって理解しやすい形に変えることができるのです。

最後に、心を動かすカタチをつくる力です。デザインは感情を喚起し、人々の心を動かすことができます。美しいデザインや感動的なエクスペリエンスは、人々に深い印象を与えてくれます。伝えたいことを独自性のある形に変えることができれば、他にはない価値を提供できます。

ブランディングデザインを成功させるための4つのポイントを著者は紹介しています。
①トップが思いを持つ
②強みを発見し、世の中のニーズと照らし合わせる
③「らしさ」に一貫性をつくる
④続けられる仕組みをつくる 

『ブランドコンセプトは、暗闇からブランドを照らし出す「サーチライト」に例えることができる』と著者は述べています。このサーチライトは、イノベーションが起こる時に変化するものと言われています。

古いサーチライトの上から新しいサーチライトを当てると、中心にある事実は変化しませんが、新しい常識が照らし出されます。つまり、イノベーションを起こしたいのであれば、「ブランドコンセプト」を見つけることによって、常識を覆す必要があります。

ブランドコンセプトは、ブランドの核となるアイデンティティや方向性を表すものです。それは、ブランドが提供する価値や魅力、顧客に対するメッセージを明確にする役割を果たします。ブランドコンセプトがしっかりと定まっていないと、ブランドの魅力や差別化が不明瞭になり、消費者に訴える力が弱まってしまいます。

また、ブランディングの目的は「好きになってもらうこと」であり、マーケティングの目的は「売ること」です。ブランドコンセプトは、この2つの目的を達成するための重要な要素となります。 デザイン経営を取り入れ、ブランディングとマーケティングを上手に使い分けることで、組織の成長と競争力の向上を図ることができるのです。

※本書を八木さんから献本いただきました。


この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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