ロバート・H・フランクの成功する人は偶然を味方にする 運と成功の経済学の書評

わたしたちは、成功を運によるものだと思いたくないのです。年をとり、成功を重ねると、なぜか自分の成功は必然だったと思うようになります。偶然が果たす役割を認めたくないのです。(マイケル・ルイス)


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ささいな偶然のようなできごとが人生を大きく左右することは、想像以上に多い。(ロバート・H・フランク)

ニューヨークタイムズの人気コラムニストのロバート・H・フランク
成功する人は偶然を味方にする 運と成功の経済学はとても刺激的な一冊です。
世の中には、がんばっても成功しない人もいれば
がんばらなくても才能や偶然によって成功する人もいます。
すべての努力が報われるわけではないのです。

才能と努力なしに成功するのは難しいが、才能があり、努力をしても、経済的に成功する人は少ないということだ。

多くの人は信じたくはないかもしれませんが、成功には運が影響しているのです。
経済学者ブランコ・ミラノヴィッチによると
世界の人々の所得格差のおよそ半分は
自分が住んでいる国とその国の所得分布という2つの要素で説明がつくそうです。
ナポレオン・ボナパルトがかつて言ったように
すぐれた能力も、機会が与えられなければ価値がないのです。
運と能力のバランスをしっかりと取らねば、成功はおぼつきません。

また、ITの普及や経済のグローバル化がWinner takes allを押し進めたことで
ますます、運が重要なファクターになってきました。

法律、医療、スポーツ、ジャーナリズム、小売、製造、学術といった分野でさえも、同じようにして「ひとり勝ち市場」が生まれている。生産とコミュニケーションにおける新たな手法が偶然の影響を増幅し、勝者と敗者の差を著しく拡大させたのである。他者より1%がんばって働く人や、1%多く才能がある人が、1%多い所得を得るというのならばわかりやすいが、そうではない。小さな達いが伺千倍もの収入の違いにつながるのだ。だから、偶然.はきわめて重要なものになる。

同じような実力のIT企業のマーケットでの優劣が
最後は運やタイミングで決まり、成功を左右していることを
今まで私はなんども目の当たりにしてきたので、著者の主張には共感を覚えました。
マーケットが出来上がる寸前にその場にいなければ、成功は手に入らないのです。

人生よくするマタイ効果とは?

マタイ効果とはいわば人生における好循環・悪循環の原則のことで、「持っている人はさらに与えられて豊かになるが、持っていない人は持っているものまでも取りあげられる」という、マタイによる福音書の一節にちなむ。

社会学者のロバート・K・マートンがつくったマタイ効果という言葉は
とても示唆に富んでいます。
小さな運が次の運を導き、幸せな連鎖が起こるのです。
一見小さなできごとの波及によって、人生は大きく変わります。
本書のアル・パチーノや音楽ダウンロードの話
ビル・ゲイツの成功事例を読むと成功は、小さな運の積み重ねであることがわかります。

ゲイツは、プログラミングのフィードバックをすぐに得られる環境で長い時間を過ごすことができた、最初のアメリカ人のひとりだった。後年、大学入学前に似たような環境にあったティーンエイジャーが当時どのくらいいたか、と聞かれてこう答えている。「50人もいたら驚きだ。わたしはあの若さでソフトウェアを開発する機会にだれよりも恵まれた。それも幸運が続いたおかげ麓」ヘゲイツはソフトウェアの開発にくわしくなったおかげで世界有数の大富豪になった。だが、不断の努力と専門知識だけではその成功を説明できない。ほかの重要な面でも、彼は運がよかったのだ。

もし、ビル・ゲイツが1955年ではなく45年に生まれていたら?
もし、ゲイツの学校に端末を備えたコンピュータクラブがなかったら?
もし、IBMがデジタルリサーチのゲイリー・キルドールと合意に達していたら?
もし、ティム・パターソンがもっと賢く交渉していたら?
これらの偶然がなかったら、ゲイツはここまで大きく成功できなかったでしょう。
一つ一つの小さな偶然とたえまない努力
そして、本人の才能が結びつくことで、人は成功者になれるのです。

運やタイミングが人生を左右する!

誕生月や苗字の頭文字でさえ、成功に影響を及ぼすと著者は指摘します。

ある研究によると、トップテンに入るレベルの経済学部では、助教授が終身在職権を獲得するのは、苗字の頭文字が若いアルファベットであるほど早くなる。これは、論文を共同執筆した場合に執筆者の名前がアルファベット順に記される経済学会の慣習によるという。心理学ではアルファベット順の記載ではないから、そうした現象は見られない。

ホッケーでは世界トップクラスのリーグで活躍する選手では
全体の約4割が1月から3月生まれで、10月から12月生まれはわずか1割しかいません。
プロ・スポーツ選手の誕生月による選手バランスや
経済学部の教授の統計数字を見るとその偏りに驚きます。
大きな成功には努力と才能にプラスして、運も必要なのです。

「小さな偶然のできごとはきわめて重要だ」と認めることは、「成功は才能や努力とは無関係だ」と主張するのとは違う。競争が激しい分野で成功する人は、とても優秀でたいへんな努力家だ。

ある本がベストセラー入りするかどうかは、多くの要因に左右されます。
よい作品であるかどうかは、とても重要ですが
著者がいくらよい作品だと主張しても、その多くはベストセラーにはなりません。
ベストセラーを出したことのある作家による作品は
ベストセラーになる可能性のほうが高いのですが
初めてベストセラーを出した作家の作品は
たいがいニューヨーク・タイムズ紙などの有名な媒体で高い評価を得ています。
ベストセラーは、初期に批評家からたまたま気に入られた幸運な作家から生まれ
その後、ソーシャルメディアなどのネットワーク効果で売れていくのです。
何人かの評論家がリリース時に熱狂的に褒めてくれることで
新たなベストセラーが誕生します。

こう考えると他人の評価によって成功は左右されます。
仲間からの信頼を得られるように、私たちは行動すべきです。
運が成功に果たす役割を認め、周りの人に感謝することで
他者との関係をよりよくでき、ますます応援してもらえるようになります。
人から高く評価されるように振る舞い、運の力を認めることで
成功する確率が高まり、より幸せになれるのです。

まとめ

成功した人は成功の理由を自身の努力と才能に求め
成功しなかった人は不運のせいにしがちですが
著者はどちらの考え方も間違っていると指摘します。
大きな成功には努力と才能に加えて、運も求められます。
人は自分の才能と努力のみによって成功するのではなく
社会基盤が整った場所に居合わせるなど
タイミングや運も必要なのです。

今日もお読みいただき、ありがとうございました。

    

    

この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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