奥村聡氏の社長、会社を継がせますか?廃業しますか? 誰も教えてくれなかったM&A、借金、後継者問題解決の極意の書評


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社長、会社を継がせますか?廃業しますか? 誰も教えてくれなかったM&A、借金、後継者問題解決の極意
著者:奥村聡
出版社:翔泳社

本書の要約

会社の終わり方を決断することが、社長の最後の仕事になります。60歳以上の中小企業の経営者は廃業という選択肢から逆算し、自分の会社の終わり方をシミュレーションするとよいでしょう。最後に残る数字(生産価値)から会社の出口戦略を考え、自分の会社の終わり方を早めに決断すべきです。

大廃業時代の正しい出口戦略とは?

世の中小企業の社長は、人知れずずっと悩んでいます。困っています。どうやったら、会社を手放すことができるのか。いつになったら社長をやめられるのか。そして、その時まで会社の命運はもつのか。(奥村聡)

先日、事業承継デザイナー・司法書士の奥村聡氏のセミナーに参加しました。奥村氏は平成21年、自らが立ち上げた地域最大の司法書士事務所を事業譲渡し、現在では社長業のおわりに寄り添うコンサルタントとして活躍しています。今までに800社以上の中小企業を支援し、NHKスペシャル「大廃業時代」でも特集されたほどです。

日本には、今、およそ400万社の中小企業があると言われていますが、その社長たちの平均年齢は60歳を超えています。 高齢の社長は自分の出口戦略で悩みながら、会社の経営を続けています。著者の奥村氏は多くの社長たちの悩みをヒアリングし、会社の手放し方を指南することで、社長たちから感謝されています。

以下の質問に答えることで、会社の終わり方の解決策が見えてくると奥村氏は言います。

2個以下…横綱相撲ゾーン 
ゴールまでのスケジュールとタスクを詰めることで、上手に会社を手放せます。
■6個以下…逃げるが勝ちゾーンor時間が味方ゾーン 
後ろ向きな態度は改め、出口に向けて積極的に取り組むようにすべきです。複数の専門家と相談し、エグジットの方法を検討しましょう。
■7個以上…墜落回避ゾーン 
状況を改善するための作戦を立てられる参謀役を探し、すぐに行動を起こすべきです。

60歳以上の社長は、現状の会社の状況を把握し、出口戦略を専門家とともに考えることが重要です。1人で悩むのをやめ、できるだけよい状態で会社を手放すことを検討しましょう。今後5年で高齢社長の事業承継が大きな課題になります。

廃業という着地から事業を見直そう!

着地の基準にすべきが「廃業」であり、廃業は「自らの意志で潔く撤退する」という姿勢なのです。

中小企業庁によると、2025年までに、70歳(平均引退年齢)を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人 となり、うち約半数の127万(日本企業全体の1/3)が後継者未定であることが明らかないなっています。 この現状を放置すると、中小企業・小規模事業者廃業の急増により、2025年までの累計で約650万人 の雇用、約22兆円のGDPが失われる可能性があると言うのです。社長の事業承継を真剣に考えないと、日本経済はより酷い状況に陥ります。 

実は、中小企業の社長には廃業という選択肢があるのです。中小企業の社長が事業を終わらせたければ、次の3つの方法から最適なものを選ぶべきです。
■会社を廃業する(自らの意志で潔く撤退)
■社長を交代する
■会社を売却する

最悪なのは、事業を閉じることを先延ばしし、倒産まで追い詰められてしまうことです。廃業と倒産は天と地ほどの差があります。

廃業は、社長が会社を「自主的に」たたむことです。積極的な撤退という意味合いがあります。一方の倒産は、追い込まれて「強制的に」潰されるケースをイメージしてください。飛行機で例えるならば、未来を見据えてあえて着地することが廃業。一方で、無理に飛び続けようとして墜落してしまうのが倒産です。

倒産する前から、未来の会社の状態をイメージし、廃業を選択肢の一つに加え、様々な専門家と相談し、会社を上手に閉じる方法を考えましょう。

廃業視点で社長が腹を括れば、ビクビクしなくてすみます。廃業する前提で考えれば、M&Aも可能になりますし、若い社員に会社を譲れるようになります。廃業することを考えれば、高望みもなくなり、会社を売却するハードルも低く設定でき、買い手との交渉もスムーズに行えます。

著者は「廃業した時に残る数字」を重視すべきだと言います。会社を廃業する際には資産を売却してお金を作り、そのお金で負債を返済できます。最後に残る数字こそが、本当の会社の価値(清算価値)です。この数字は社長や関係者にとって、重要な数字になります。会社の終わり方をシミュレーションし、廃業と比較しながら、承継への一歩を踏み出しましょう。その際、決算書の数字を鵜呑みにするのではなく、自社の本当の価値をしっかりと把握すべきです。

現状の利益と会社をやめた時に利益が出るかを計算すれば、自社の状況が明確になり、出口戦略も立てやすくなります。
■横綱相撲ゾーン 利益が出ていて、廃業したらお金が残る
■逃げるが勝ちゾーソ 利益が出ておらず、廃業したらお金が残る
■時間が味方ゾーソ 利益が出ていて、廃業したら借金が残る
■墜落回避ゾーン 利益が出ておらず、廃業したら借金が残る

資産・負債と利益の有無で自社の立ち位置を認識し、専門家と相談し、会社の終わり方を真剣に考えましょう。本書には4つのゾーンの出口戦略が書かれていますから、会社の終わり方を考えている社長には参考になるはずです。著者の経験した事例を読めば、自分がやるべきことが見えてきます。

自社の立ち位置にそった正しい決断をすることが、社長の最後の仕事なのかもしれません。本当に追い込まれる前に正しい対策を打たないと取引先だけでなく、家族にも迷惑をかけることになります。苦しくなった社長が、迷惑をかけてよいのは銀行までだと言う著者のメッセージが響きました。

何かを捨てれば、新しい何かが手に入ります。人生100年時代、会社と言う重い荷物をおろし、人生の後半戦を楽しみましょう!

ブロガー・ビジネスプロデューサーの徳本昌大の5冊目のiPhoneアプリ習慣術がKindle Unlimitedで読み放題です!ぜひ、ご一読ください。

 

 

 

この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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