作佐部孝哉氏のミドルマネジメントの正解: 不確実な時代を乗り越えるための5つのアップデートの書評

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ミドルマネジメントの正解: 不確実な時代を乗り越えるための5つのアップデート
著者:作佐部孝哉
出版社:河出書房新社

本書の要約

今までの常識が通用しない時代、現代のような不確実な時代には、ミドルマネジメントは現場経営者に自らをアップデートし、組織を強くしなければなりません。チームとメンバーの力を最大限に引き出すリーダーになることで、あなたの市場価値は高まり、より豊かな人生を送れるようになります。

ミドルマネジメントが現場経営者に変わらなければいけない理由

資源の限られた日本において、企業の生産性を高める源泉は「人」しかありません。(作佐部孝哉)

コロナ禍の中で、中間管理職の居場所がなくなっています。テレワークで仕事をすることが当たり前になる中で、組織のあり方が見直されています。現場の社員は、自分が与えられた目標に集中することで、結果を出せますが、マネージメント層は今までのルールで働くことはできません。以前のミドルマネージメントの仕事は野球のキャプテンのようなもので、監督である経営者の指示に従っていればよかったのです。ウイズ・コロナの時代のマネージャーはサッカーのキャプテンのようにチームにビジョンを示し、メンバー個々の力を引き出していかなければなりません。

ウイズ・コロナの時代のミドルマネージメントは絶えず不確実な状況に対処し、チームをまとめなければなりません。経営側の判断を待っていては、競争相手に負けてしまいます。PwC コンサルティング合同会社パートナーの作佐部孝哉氏は、ミドルマネジメントは時代の変化に適応するために、今こそ働き方を変えるべきだと言います。メンバーの個性を最大限に引き出し、チームを強くするためには、まず自らをアップデートする必要があります。

中間管理職のマインドセットを捨てて、現場経営者にアップデートすることで、ウイズ・コロナの時代でも結果を出せるようになります。ビジョンのない組織は、やらされ感満載で、主体的に動けません。ミドルマネジメントの仕事は、チームのビジョンを示し、人間が持つポテンシャルに目を向け、彼らのパフォーマンスを引き出すことになっていくはずです。

あなたが手にするのは仕事の「成果」だけではありません。将来に不安を感じない人生・信頼できる大切な仲間、揺るぎない「あなた」というブランドも同時に手にし、環境や会社の動向に振り回されることなく、自分で自分の人生をコントロールすることができるようになります。

新しいミドルマネジメントのマインドセット=現場経営者の資質を手に入れることで、世の中に貢献できるようになります。著者は5つのアップデートによって、自分の市場価値を高められるようになると言います。

変化のための5つのアップデート

1、組織のあり方をアップデート
個人のスキルアップではなく、チームとしてのレベルアップをはかります。ピラミッド組織からサークル型組織へ早いうちにシフトし、現場に権限を移譲するようにしましょう。現場が主体的に動くことで、リーダーは次の戦略を考えることができるようになります。指示型(インストラクション型)から、交流型(インタラクション型)の風通しのよい組織を目指し、メンバーが主体的に動けるチームを作るべきです。

2、リーダーとしての心得をアップデート
リーダーはスーパースターになるのではなく、メンバー個人の力をチームの力に変える存在になるべきです。ガバナンスで組織をまとめるのではなく、エンパワーメント(後押し)することがミドルマネジメントの仕事になります。

ダニエル・キムの有名な組織の成功循環モデルを採用し、結果の質より関係の質を高めるようにしましょう。周りの専門性を理解し、それをまとめあげることで、主体的なチームが生まれ、結果が出せるようになります。 著者のリーダーの心構えはとても参考になりますし、本ブログの主張と近く、とても共感を覚えました。

まずリーダーとして結果責任はすべて負う覚悟を持つことです。うまくいったら自分の手柄、失敗したらメンバーのせいでは、すぐに愛想をつかされます。才能あるメンバーに活躍してもらう場面が増えていく中で、うまくいったときこそ、メンバーの手柄として社内に宣伝し、逆にうまくいかなかったときには自分がすべての責任を負う度量は必要です。また変化に対応して新しいことにチャレンジすればするほど、当然失敗も増え、社内外から非難や批判の声を浴びるのが常ですが、きつい場面でこそ先頭に立ち、チームメンバーを鼓舞して前へ進んでいける胆力を兼ね備えておくことも必要でしょう。そして、何より「利他の精神」でいることです。「自分の数字や出世のため」という姿勢が先に立つリーダーでは人はついてきません。

リーダーは「インティグリティ(誠実さ)」を持つこと、利他の心で接することで、メンバーとの一体感を作れるようになります。

3、仕事の進め方をアップデート
チームの方針はリーダーが決めるのではなく、メンバー全員で話ようにします。メンバーのスキルをマトリックスで整理し、マリアージュを考え、それぞれのパフォーマンスを高めるようにするのです。
①新しいビジネスアイデアは起業型とサポーター型で考えます。
②立ち上げは起業型と参謀型が担当します。
③ビジネスを固める際には、サポーター型と番頭型が担当します。
リーダーは自分がやらないことを決め、メンバーに仕事をまかせ、次の成長戦略を考えるべきです。

4、メンバーの伸ばし方をアップデート
リーダーはメンバー内なるエネルギーを引き出すべきです。デビッド・ロックの「SCARFモデル」を参考にして、メンバーの成長をサポートしましょう。
S=認められている(Status)  
C=将来が見通せる(Certainty)  
A=自分が主体的に動ける(Autonomy)  
R=仲間意識、周囲の人を信頼できる(Relatedness)  
F=公平性、公平に扱われている(Fairness)
このうえで、著者は次の3つの方法を実践していると言います。
①リーダーは仲間の貢献に感謝の言葉を伝える。 
②自分の成長を体感してもらう。
③この先の成長を予感してもらう。

リーダーは自分も含め、全員が学び続ける環境を用意しましょう。良質なフィードバックを感謝の言葉と共に伝え、それぞれのメンバーの異能を伸ばすことで、組織は強くなれます。人を中心に置いたマネジメントをリーダーが心がけることで、メンバーがワクワクし、自ら動けるようになるのです。目標設定の「SMARTの法則」に現場視点の「HEARTの法則」を掛け合わせ、メンバーに経験の楽しさを実感してもらいましょう。
■SMARTの法則
S=明確・具体的(Specific)
M=計測可能(Measurable)
A=役割と権限の範囲でできること(Assignable)
R=現実的なこと(Realistic)
T=期限を踏まえていること(Time-related)

■HEARTの法則
H=ワクワクするか(Heartfelt)
E=思い入れがあるか(Engaging)
A=情熱的になれるか(Aspirational)
R=自分にあっているか(Reflective)
T=チーム志向か(Team-Oriented)
リーダーはSMARTの法則だけでなく、HEARTの法則を使い、メンバーが自ら動きたくなるよう共に目標を考えましょう。目標は与えるのではなく、チームで一緒に作ることで、組織に責任感が芽生え、良いフィードバックを行うことで、目標を達成できるようになります。

5、自分のあり方をアップデート
感情に左右されずに、心の状態をよくしなければ、的確な判断ができなくなります。そのために、自分のコンディンションを最高の状態に保つべきです。食事・睡眠・感情コントロールに気をつけ、自分のパフォーマンスを高め、組織に貢献しましょう。

現場経営者マインドというポータブルスキルによって、転職や独立も視野に入ってきます。できる経営者と多様な視点を持ち、視座を高めることができる人だと私は捉えています。私も社外取締役として、優秀な経営者に接することで、自分の視点と視座を広げられ、経営者マインドを手に入れることができました。著者のアドバイスを実践することで、経営者マインドを養えるだけでなく、自分ブランドも確立できるようになります。

今回、著者から献本していただきましたが、本書から多くの刺激と学びを得られました。著者の作佐部氏には、この場を通じてお礼を申し上げたいと思います。良書をありがとうございました。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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