スカンクワークスがイノベーションを起こす理由


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ボールド 突き抜ける力
著者: ピーター・H・ディアマンディス&スティーブン・コトラー
出版社:日経BP

本書の要約

スカンクワークスでは少数精鋭のメンバーを官僚組織から隔離し、MTP(Massive Transformative Purpose)という目標に集中させます。メンバーを本部から隔離することでリスクテイクが助長され、突飛で大胆なアイデアが奨励され、短期間で壮大な目標を達成できるようになります。

スカンクワークスとは何か?

われわれの研究の結果、モチベーションや生産性を最大限高めるには、大きな目標ほど効果的であることがわかった。大きな目標は、小さな目標、中くらいの目標、曖昧な目標のいずれをも大幅に上回る成果をあげた。最終的に重要なのは集中力と粘り強さで、この2つがパフォーマンスを決定する最も重要な要因だ。大きな目標ほど作業者を集中させ、粘り強くする。この結果、作業がより効率的になり、失敗しても再び挑戦しようという意欲が高まる。(ゲーリー・ラサム)

トロント大学の心理学者ゲーリー・ラサムとメリーランド大学の心理学者エドウィン・ロックが、モチベーションを高め、パフォーマンスを向上させる最も簡単な方法の一つが目標設定であることを突き止めました。MTP(Massive Transformative Purpose)という大きな目標を設定することは、集中力やモチベーションを高め、目標を達成するのに役に立つことが明らかになっています。(MTPの関連記事

このような高く困難な目標が本当にその威力を発揮するには、いくつかのモデレーターの存在が不可欠になります。モデレーターの最も重要なものがコミットメントにあると2人は指摘します。

自分のしていることは正しい、と信じる必要がある。当人の価値観と目標のもたらす成果に整合性があるときに、大きな目標は最も威力を発揮する。すべてに一貫性があると完全にコミットできる。結果としてさらに集中し、粘り強く、生産的に取り組めるようになる。

ピーター・H・ディアマンディス&スティーブン・コトラーの2人はボールド 突き抜ける力の中で、 「スカンクワークス(Skunk Works)」というイノベーションを生み出す方法を紹介しています。スカンクワークスは1943年にロッキード社内にできた秘密開発部門の通称で、ナチスを打ち負かすというMTPを実現するために作られた特殊任務を担う別働部隊です。スカンクは会社の官僚組織から隔離することがポイントとなります。

スカンクを隔離する目的は以下の2つになります。
1、軍事機密を守ること
2、隔離することでリスクテイクが助長され、突飛で大胆なアイデアが奨励され、組織の硬直化に対抗できます。

現在でもイノベーションを起こすためにこのスカンクワークスが使われています。スティーブ・ジョブズは、初代のマッキントッシュをつくる際に、シリコンバレーのレストラン「グッドアース」の背後にあるビルを借りました。そこに、優秀なデザイナーを20人集め、ジョブズ自身が自ら指揮を執ったと言います。スカンクワークスによって、MTPを短期間に実現することをいくつものプロジェクトが証明しています。

ケリー・ジョンソンのスカンクワークスの14カ条

ナチスを打破するためのスカンクワークスを率いていたのは、ロッキード社のケリー・ジョンソンでした。彼は会社の官僚機構からスカンクを隔離することをルールの基本にしました。

「ケリーのルール」は以下の14カ条からできていました。(以下DNAから引用します)
1. スカンクワークスのマネージャーには計画のあらゆる面について、完璧に近いコントロールを託さなければいけない。また報告の相手は部門長かその上の階級の者だけですむようにすること。
2. プロジェクト事務局は官民の協力によって小さく保たれるべきである。
3. 計画に関わる人数は厳しく制限しなければならない。優秀な人間を選び、一般的な組織と言われるものの10%から25%に人数を絞るべきである。
4. 設計はシンプルに、そして設計の変更のための手続きは多分に柔軟なものでなければならない。
5. 報告書の数は最小限に。しかし重要な仕事はしっかり記録されるべきである。
6. ひと月ごとの予算レビューにおいては、これまでの出費内容を確認するとともに、将来のコストを予測すべきである。
7. 請負契約において大きな権限と責任を認めることで、よい入札価格を得ることができる。一般的に民間の入札システムは軍のものよりもよくできている。
8. スカンクワークスの査察システムは空軍と海軍の認証を受けている。軍の要求に耐える水準であり、今後のプロジェクトでも適用すべきである。責任を下請け企業やベンダーと共有し、同じ査察を難度も繰り返さないことだ。
9. 設計者は最終製品のテストに関する権限を与えられるべきだ。さもなければその設計者は他の製品を設計する能力も失ってしまうだろう。
10. ハードウェアの仕様に関しては、その根拠を含めて契約の以前にきちんと合意に至るべきである。
11. 資金提供は迅速にし、請負企業が政府のために銀行に走らずに済むようにすべきである。
12. 軍の計画組織と請負企業は互いに信頼すべきである。より緊密に協力し、日毎情報共有することで誤解と連絡の必要を極小まで下げることができる。
13. 部外者による計画への接触は、適切な保安手段によってコントロールされなければならない。
14. プロジェクトに参加する人数は少なく絞らなくてはならない。よって報奨を与えるにあっては、部下の数を基準にしてはならない。

ルールのうちの7つはプロジェクトをしっかりと隔離するためのものです。少数な優秀なメンバーを集め、本部と隔離することで、組織の硬直化を防ぐようにするのです。イノベーションの芽はたいがい既存組織に摘まれてしまい、日の目を見ないものです。

組織に当てはまることは、起業家にも当てはまる。成功したスカンクワークスにおいてイノベーションチームが組織全体から切り離されていたのと同じように、成功を目指す起業家は社会との間にバッファ(緩衝装置)を設ける必要がある。(ピーター・H・ディアマンディス&スティーブン・コトラー)

スカンクワークスの考え方はベンチャー・スタートアップ企業にも適用できます。スカンクワークスでは、メンバーに早くたくさんの失敗することを求めます。真の進歩を遂げるには山ほどのアイデアを試し、実験の感覚的を縮め、結果から導き出された蓄積していかなければなりません。この失敗からの「素早い反復」によって、小さな組織がイノベーションを起こせるようになるのです。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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