POSITIVE DEVIANCE(ポジティブデビアンス)―学習する組織に進化する問題解決アプローチの書評


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POSITIVE DEVIANCE(ポジティブデビアンス)―学習する組織に進化する問題解決アプローチ
著者: リチャード・パスカル、ジェリー・スターニン、モニーク・スターニン
出版社:東洋経済新報社

本書の要約

ポジティブデビアンス(PD)とは、同じコミュニティや組織などで、問題が発生している悪条件の現場のなかで良い結果を出している「逸脱者」です。悪条件の中でも成功する「ポジティブな逸脱者」を発見し、彼らに焦点を合わせ、正しい答えを見つけましょう。

ポジティブデビアンスとは何か?

ポジティブデビアンス(PD)とは、同じコミュニティや組織などで、問題が発生している悪条件の現場のなかで良い結果を出している「逸脱者」です。このPDが成果を出したプロセスを問題解決につなげるのがPDアプローチです。(リチャード・パスカル、 ジェリー・スターニン、モニーク・スターニン)

PDアプローチは、世界41ヶ国で、複雑で解決が困難な問題を解決しています。私も今までに何度か他の書籍で、このPDアプローチを学んできましたが、本書の3人の著者がそれを体系化し、まとめてくれました。

まず、「ポジティブデビアンス」の成功事例をいくつか紹介します。特にベトナムの事例は有名で、ここからPDアプローチはスタートしました。
・総人口230万人のベトナムの22の省で、子どもの栄養失調が65~80%減少。
・世界41カ国のコミュニティにおける子どもの栄養失調が30~50%減少。
・米国の3つの病院でMRSA(Methicillin‐Resistant Staphylococcus Aureus:メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)の感染が30~62%減少、その過程で病院の階層間の格差が是正。
・パキスタンにおける新生児の死亡率と罹患率の劇的な減少、および明確な性役割の曖昧化と女性 の発言力の増加。
・アルゼンチンのミシオネス州で参加した小学校の就学率が50%増加、それに伴って教師と非識字者である親との間の社会的障壁の削減。
・コミュニティのあらゆるレベルのメンバーを動員し、危険にさらされている少女への警戒を強化し、東ジャワの貧しい農村の900人の子どもに影響を与えていた少女の人身売買を30%削減。
・過去8年間、エジプトでは何千人もの女性の割礼(女性性器切除、またはFGM)が回避され、その結果、割礼のないコミュニティが数十になり、物言う女性の代弁者の集団が生まれた。

PDアプローチはそのコミュニティのパワーを信じ、彼らとの対話を繰り返します。解決策はそのコミュニティの中に存在し、それを傾聴と質問によって、見つけていくのです。
①一見手に負えないような問題の解決策はすでに存在している。
②それはコミュニティ自身によって発見される。
③これらのイノベーター(個々のポジティブな逸脱者)は、他のメンバーと同じ制約や障害に直面しているにもかかわらず成功している。

PDとベストプラクティスは以下の点で異なります。

PDは、同じ環境の下にある「私と同じような人」から学び、実践を通じてチームで拡散していこうとするものです。現場主導で問題を解決し、現場がさらに自ら考える組織に進化させることがPDの考え方で、この手法がビジネスでも注目されています。

PDアプローチを成功させる7つのステップ

ベトナムの貧しい村の子供たちの63%が重度の慢性的栄養失調に陥っていましたが、その中には貧しいにも関わらず、栄養失調を免れがれていた子供がいました。著者たちは観察、質問、傾聴、を通じて、その「秘密」を明らかにし、解決策をベトナムに広げていきます。

「1,000回聞くことは1回見てみるほどの価値はなく、1,000回見ることは1回行なうほどの価値はない」と言うベトナムの諺を信じ、諦めずに行動を続けるうちに、彼らはPDアプローチを体系化しました。悪条件の中でも例外的に課題を解決する「ポジティブな逸脱者」が存在しますが、彼らの正しい行動を見過ごさないようにすべきです。

著者たちは、PDアプローチを成功させる7つのステップを紹介しています。
①適応課題に対処するための実証済みのアプローチとしてPDを紹介する。
②何が間違っているのか、何が欠けているのかではなく、あらゆる困難を克服してうまくいっていること(ポジティブな逸脱者)に焦点を合わせる。
③コミュニティのメンバーがオプトイン、オプトアウトできるような信頼できる招待でプロセスを開始する。
④重要性、具体性、測定可能性を確保するために、コミュニティに問題をリフレーミングするように促す。
⑤共通のプラクティスが確立され、その後PDが特定されるようなグループ会話を実施するために、(通常の容疑者以外の)より大きなコミュニティを巻き込む。
⑥アクションラーニングを通じて新しい発見を普及させるためのデザインに関し、コミュニティがオーナーシップを確実に持つようにする。実践は、伝達される情報の詳細「について知っている(knowing about)」ことよりも優先される。
⑦スポンサー、外部の専門家、ファシリテーターがプロセスを乗っ取ることがないように常に警戒し続ける。かれらの唯一の役割は、(コミュニティのリーダーとの)共同開催者、または触媒としての役割です。グループ会話でのかれらの貢献は、オーケストラの指揮者としてではなく、ジャズコンボのミュージシャンとしてあるべきです。

世の中には、様々な課題が存在していますが、悪条件の中でも成功する「ポジティブな逸脱者」がいます。ポジティブな逸脱者を発見し、彼らに焦点を合わせることで、正しい答えが見つかります。ベストプラクティスでは解決できない問題も、PDアプローチを使うことで、解決できるようになります。リーダーが現場の力を信じ、PDアプローチを採用することで、自ら考え、行動できる強い組織を作れます。

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