本田哲也氏のナラティブカンパニー―企業を変革する「物語」の力の書評

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ナラティブカンパニー―企業を変革する「物語」の力
著者:本田哲也
出版社:東洋経済新報社

本書の要約

ニューノーマルの時代の生活者の行動変化が、企業経済や社会構造に大きなインパクトを与えています。この変化を乗り切るためには、「共体験」の価値を高め、生活者やメディアとともに物語を紡ぐ必要があります。ナラティブカンパニーとなり、生活者とともに永続的な共創構造をつくることが企業には求められています。

ナラティブカンパニーとは何か?

ナラティブとは、「物語的な共創構造」である。何らかのストーリー性をはらんだ構造の中で、企業活動──広告やマーケティングはもちろん、商品開発や人材採用に至るまで──が行われる。物語的な構造には、消費者やユーザーはもちろん、従業員や取引先や株主などのあらゆるステークホルダー(利害関係者)が巻き込まれる。物語の「聴衆」としてではない。その「当事者」として、だ。(本田哲也)

「ナラティブ」と言う言葉を最近見かけることが多くなりました。ナラティブ(narrative)とは直訳すると「物語」という意味ですが、ストーリーとは少しニュアンスが違います。物語の筋書きや内容を指す「ストーリー」とは意味合いが異なり、ナラティブは自分たちを主人公にする手法で、新たなマーケティングの手法として注目を集めています。また、ナラティブには終わりのない物語であると言う特徴があります。

本田事務所代表取締役、PRストラテジストの本田哲也氏は、ナラティブを「物語的な共創構造」だと言い、ストーリーとは以下の3つの点で異なると指摘します。
1、「演者」の違い 
企業ではなく生活者が主人公

2、「時間」の違い 
常に現在進行形で終わりがない。

3 「舞台」の違い
ナラティブの舞台は「社会全体」です。ストーリーは会社起点であり、ナラティブは社会起点であることが違いがあります。ストーリーは企業からの一方通行な物語だが、ナラティブは社会で共有される物語なのです。

先が見えない時代において、物語を紡ぎ出し、生活者と共に共創構造を作り出すナラティブカンパニーの価値が高まっています。本書にはパタゴニアやAmazonの事例が紹介されています。

「ナラティブ(=物語的な共創構造)」を生み出し、その構造の中でマーケティングや広告・PR活動を行うことで、業績や企業価値の向上を果たしている企業。

ナラティブな企業は、生活者とともにストリーを紡ぐことに長けています。特に昨年から続くコロナ・パンデミックが、以下の「3つの変化」をもたらしています。
①「共体験」価値が高まる。
②「社会的距離」の見極め
③「自分らしさ」が問われるようになる。

ナラティブカンパニーがとるべき「実践の5つのSTEP」

ナラティブカンパニーを目指すのであれば、5つのSTEPを実践すべきです。
①パーパスの設定:ナラティブの「起点」を定める
②パーセプションの形成:ナラティブの「目的」を明確にする
③ナラティブスクリプトの作成:ナラティブを「描く」
④マルチエンゲージの展開:ナラティブを「共創」する
⑤効果の測定:ナラティブを「はかる」

ナラティブカンパニーにとっては、認知拡大ではなく、バーセプションの形成や変容が「重要な目的」となります。

パーセプションの変容がそのまま行動の変容(ビヘイビアチェンジ)に結びつくからだ。 人の行動はそうそう簡単に変わるものではない。信頼できる情報に十分に触れて、その結果ジワジワと自分のモノの見方が変わっていき、最後にはコップの水があふれるかのように、具体的な行動に変化が現れる。その結果、ビジネスや事業目的が達成される。このピラミッドにおける上昇フローを、「物語的な構造」の中で起こすことこそが、ナラティブカンパニーの醍醐味だ。

バーセプションの形成を実践するには、以下の3つのポイントが重要になります。
①形成すべきバーセプションを言語化する
企業やブランドの、既存の、あるいは獲得したいバーセプションを明確に言語化します。とくにパーセプションチェンジを狙う場合は、そのビフォーとアフターを明確化するべきです。その際、バーセプションは「客観的なもの」にすべきです。

②対象がカテゴリーかプロダクトかを判断する
パーセプションを形成する対象が、「カテゴリー」 か「プロダクト」かを判断し、どちらでパーセプションを形成した方が自社のベネフィットにつながるかを考えます。

③5つの形成要素を活用する
「事象」「リテラシー」「グループ」「タイミング」「コントラスト」を考え、現在進行形で生活者とメディアともに物語を紡ぎます。

冷凍餃子が”手抜き”だと言うTwitterの投稿に対して、味の素の中の人は”手間抜き”だと反応することで、パーセプションチェンジを狙いました。冷凍技術が今のように発達する前は、「冷凍もの」と言えば「手軽だがあまり美味しくない食品」というイメージでした。男性にはまだまだ「手作り信仰」があり、女性の家事時間を減らせずにいます。

味の素の中の人は、実は2人の子を持つ母親でしたが、会社や業界が抱える課題と自分の本音から、手間抜きだと言うメッセージを発信しました。結果、公式アカウントの投稿には44万いいね!がつき、冷凍餃子がTwitterのトレンドに入るほどの反響を呼びました。

これがきっかけとなって、キー局やネットメディアでも大きく報道され、「冷凍食品は手抜き?手間抜き?」論争が巻き起こりました。 うまく出来上がった「手間抜きナラティブ」を継続させ、冷凍食品のバーセプションを変え、餃子の売り上げアップにもつなげるために味の素はすぐに動きます。主婦の代わりに味の素が手間をかけていると言うメッセージを発信しました。

工場でどれだけ手間をかけているかを、世の中に見せる 「アンサー動画」でナラティブを続けます。味の素の餃子は144もの工程を経てつくられています。キャベツを手作業で刻み、具材をこねて、研究を重ねた薄い皮に餌を包み、皮の弾力を高めるために蒸しあげるこれらの工程のひとつひとつを、高クオリティでスピード感のある映像に仕上げました。これが評判になり、味の素の冷凍餃子だけでなく、冷凍食品のイメージも良くなりました。

ステークホルダーという考えでいくと、味の素冷凍食品の従業員、とりわけ工場で働く人のモチベーションが上がりました。さらに営業担当の間でもこれを売り上げに結び付けようと言う気運が高まったのです。

ナラティブを描き出すという視点で見れば、味の素冷凍食品にはパーパスに近い考え方 冷凍食品をうまく利用していただいて、有意義な時間に使ってくださいがあった。そこに共感が生まれ、ストーリーとしてうまく展開しメディアや有識者、SNSなどがそれに巻き込まれたのだ。

先が見通せないVUCAの時代となり、ニューノーマルで変化が加速する中で、私たちの価値観も変化しています。生活者の行動変化が、企業経済や社会構造に大きなインパクトを与えています。この変化を乗り切るためには、「共体験」の価値を高め、生活者やメディアとともに物語を紡ぐ必要があります。ナラティブカンパニーとなり、生活者とともに永続的な共創構造をつくることが企業には求められています。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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