田口一成氏の9割の社会問題はビジネスで解決できるの書評

9割の社会問題はビジネスで解決できる
著者:田口一成
出版社:PHP研究所

本書の要約

ボーダレスグループは社会問題を解決するソーシャルビジネスに特化した会社です。グループ代表の田口氏は自らソーシャルビジネスを立ち上げるだけでなく、社会起業家を次々と生み出すエコシステムを構築しました。社会起業家のプラットフォームが大きくなればなるほど、世の中の課題が解決されていきます。

ソーシャルビジネスとは何か?

ボーダレスグループは「自分はこんな社会問題を解決したい」という志を持った起業家が集まる「社会起業家のプラットフォーム」です。(田口一成)

ボーダレスグループは、ビジネスによって様々な社会問題を解決することに挑戦しています。彼らは貧困、難民、過疎化、人種差別、耕作放棄地、フードロス、地球温暖化……社会問題を解決するビジネス(ソーシャルビジネス)しかやらない会社なのです。本書の著者の田口一成氏が2007年に創業し、着実に成長し、多くの社会問題をビジネスにすることで解決しています。2020年度の年商は55億円、世界15力国で現在約1500人が働いていると言います。

グループ内には「40の事業」がありますが、それぞれが独立した株式会社で、「40人の社長」がいます。各社が独立経営を行いながらも、資金やノウハウをお互いに提供し合う、相互扶助の仕組み「恩送り経営」を実践することで、持続的に社会問題を解決しています。

ソーシャルビジネスが取り扱うのは、「儲からない」とマーケットから放置されている社会問題です。たとえば、貧困、難民、過疎化、食品廃棄……。これらは見過ごすことのできない重大な問題ですが、儲かる分野ではないので誰も手を出そうとしません。こうしたマーケットから取り残されている社会問題にビジネスとして取り組むのがソーシャルビジネスなのです。

ボーダレスグループでは「1000人の社会起業家を生み出し、1000の社会問題を解決すること」を目標にしています。

世の中にはもっとたくさんの社会問題があります。社会起業家が少ないままでは、社会的な課題は解決できず、不幸な人を減らせません。そのためボーダレスグループでは、社会起業家を目指す社員に資金を提供し、マーケティングやバックオフィスの支援を行っています。

お客さんは最初は社会貢献という意味合いで買ってくれることがありますが、1回買うとその善意は満たされてしまい、単発的な関係で終わってしまうことも少なくありません。「社会貢献になるから買う」だけではなく、シンプルに「モノがいいから、サービスがいいから買う」という要素がないと、選び続けてもらえないのです。つまり、非効率を含んだビジネスでありながら、「これ最高だよね」と生活者が買い続けたくなる商品やサービスをいかに提供していくのか。ここがソーシャルビジネスに挑戦するビジネスパーソンの腕の見せどころでもあります。

ソーシャルビジネスと言えども、魅力のない商品やサービスでは事業は長続きしません。起業家は生活者の善意に頼るのをやめ、継続購入してもらえるように商品やサービスの質を高めなければなりません。

社会的活動を事業として成立させることができれば、公的支援に頼らず、経済的に自走できるようになります。事業が成長すれば、たくさんの雇用を生み出し、その課題解決に従事する人も増えます。事業として取り組むことでより早く、さらに大きなインパクトを生み出せるようになります。

ソーシャルビジネスの立ち上げ方

では、どのようにソーシャルビジネスを立ち上げればよいのでしょうか?著者は次の3つのステップで考えるとよいと言います。

①ソーシャルコンセプトの作成
②制約条件を整理する
③課題を解決し、キャッシュが稼げるビジネスモデルを考える。 

見えてきた社会問題の原因に対する「対策」を忠実に体現した商品・サービスをつくり、それをビジネスモデルに落とし込んでいく。この順番でなければ、ピントの外れたビジネスモデルになってしまい、社会問題を解決する社会ソリューションにはなりません。 だから、うまくいかないビジネスモデルはどんどん変えていかなければいけない。そのときの拠りどころとなるのが「ソーシャルコンセプト」なのです。ソーシャルコンセプトという社会づくりの設計図=「幹」がしっかりあるからこそ、ビジネスアイデアという「枝葉」の部分はどんどん変えていけるのです。

ソーシャルビジネスを考える場合、社会問題の深掘りが欠かせません。社会問題の「現状」「理想」「対策」を徹底的に考えることで、ビジネスのヒントが見えてきます。

社会問題の「現状」と、その課題を解決することで実現したい「理想の姿」、さらに理想と現状のギャップを埋めるための「HOW」を定義するために、この3つを徹底的に考えることから始まります。

事業に失敗はつきものですが、そこであきらめてはいけません。ビジネスの仮説が間違っていても、コンセプトが間違っていなければ、必ず成功できます。仮説を検証し、それを修正するうちに、やがて黒字化を達成できることをボーダレスグループの多くの起業家が証明しています。

従来のビジネスは、ビジネスチャンスを狙って勝負に出ます。逆に、チャンスがないと分かれば撤退するのも早い。それに対して、社会問題解決のためのビジネスは「何のために事業をやるか」が明確なので、儲からないからといってすぐにやめるわけにはいきません。ソーシャルコンセプトに沿って粘り強くやり続けていれば、ビジネスモデルは変わっていっても、いつか必ず成功します。「9勝1敗」、いや、「10勝0敗」にすることだって不可能ではないはずです。

成功した起業家は後輩たちの支援を行います。自分が受けた恩を、次のチャレンジャーへ送る「恩送り」相互扶助エコシステムによって、事業を短期間に増やしています。

このエコシステムによって成功する事業が増えることで、余剰利益が生まれ、より多くの社会起業家の誕生をサポートできます。資金だけでなく、ノウハウやアイデア、体験が共有されることで、ソーシャルインパクトを出せるようになります。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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