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ROCKONOMICS 経済はロックに学べ!
著者:アラン・B・クルーガー
出版社:ダイヤモンド社
本書の要約
ロックミュージシャンはCDやサブスクで収益を上げていると考えがちですが、実際はライブパーフォマンスで稼いでいます。彼らはモノやサービスではなく体験を販売する「体験経済」を先取りしているのです。著者はロックという事例を経済の側面から分析することで、経済学を身近な学問に変えてくれました。
経済学をロックから学ぼう!
音楽は典型的な「体験経済」の一部だ。手に取って触れる製品やサービスよりも体験を売ることに頼った経済の一分野である。ぼくたちのGDPのうち、体験を生み出し、販売することで得られる部分の割合はどんどん高くなっている。経済の残りの部分だって、体験をどう創って売るか、音楽業界からとてもたくさんのことを学べるはずだ。(アラン・B・クルーガー)
世の中が複雑になる中で、経済も複雑になっています。経済にまつわることをしっかり理解することが、生きる上でもとても重要になっています。ちゃんとした仕事について働き、貯蓄を行い、資産運用することも、幸せになるために避けては通れない道になっています。経済学を味方にすることは正しいと考えている人は多いのですが、経済学はとっつきにくく、難しい学問であるために積極的に学ぼうとしません。
プリンストン大学教授で経済学者のアラン・B・クルーガーは身近なロックで経済学が学べると考え、本書を執筆します。ミュージシャンの成功事例を学ぶことで、私たちは人生の課題を乗り越えられるようになるのです。
音楽は経済的に言ってどちらかというと小さな産業で、2017年の音楽への支出は世界全体でたった500億ドル、つまり世界のGDPの0.06%にすぎませんでした。北アメリカでプロスポーツに遣われるお金は、音楽業界全体に遣われるお金の3倍を超えています。
アメリカ人は音楽よりもタバコに5倍を超える額を遣っています。タバコ会社はアメリカ人が録音された音楽に遣うよりもたくさんのお金をタバコの広告に使っているのです。アメリカ人がスポーツジムの会費分だけで、録音された音楽の売り上げ全部を超えてしまいます。
しかし、そんな小さな音楽業界を見ることで、私たちは意思決定や経済的な結果に情緒が果たす役割がどれだけ幅広いかを理解できます。ロック業界を学ぶことで、行動経済学についての知見を増やせるのです。
ミュージシャンが聴き手と心の絆を深めようとどんな努力をするかを見れば、経済学者はとてもたくさんのことを学べます。研究によると、歌を聴けば聴くほどその曲が好きになる可能性が高くなり、好きになればなるほどその歌い手のレコードを買う可能性が高くなります。
経済学と音楽は持ちつ持たれつなのだ。音楽業界を見れば経済がどう機能するのかわかるし、経済のいろんな力がぼくらの生活をどうやって左右するのかがわかる。そして経済学者は、音楽業界を研究することで経済や人の振る舞いについて新たな洞察を得られる。それがぼくのロックな経済学だ。
今日、音楽業界で遣われるお金のだいたい半分は録音された音楽に流れ、だいたい半分はライヴ・パフォーマンスに流れています。
この30年で、コンサートの総売上金額のうち、アーティストのトップ1%が持っていく割合は2倍以上になっています。1979年から2017年の40年弱で、アメリカ全体の所得分布において、トップ1%の家計が占める割合は2倍になりました。1979年、トップ 1%の家計は国民所得の10%を占めていましたが、2017年にはそれが22%になっています。
Winner takes allに世の中がシフトする原因のーつにデジタル技術の発展があります。ビル・ゲイツ、マーク・ザッカーバーグ、ラリー・エリソン、マイケル・ブルームバーグ、ジェフ・ベゾスの5人の財産を合わせると世界の人口全体が持つ財産の半分近くになりますが、彼らが大金持ちになれたのはデジタル技術の恩恵を受けられたからです。
成功する企業は最適なタイミングで、人々が求めるプロダクトやサービスをリリースしますが、ロックミュージシャンも同じです。音源をいいタイミングに世に出せるかどうかが、彼らの成功を左右します。
ロックミュージシャンの成功事例を見習おう!
ストリーミングは音楽の売り上げに革命的な影響を及ぼしている。
15年に及ぶ低迷と停滞の後の2016年、 録音された音楽の売上高はついに増加し始めた。 そして兆しを見る限り、 この上昇トレンドはもうしばらく続きそうだ。
ファンはサブスクサービスに月極の料金を払うか、
2000万人のユーザーを抱えるパンドラがユニークな実験を行っています。広告の無料版で音楽を聴く間、毎時ごとに流れるコマーシャルの数にどれだけ、ユーザーが敏感に反応するものか調べました。その結果、需要曲線の形に関して経済学が得られるもっとも強力な証拠が得られました。
広告が増える形で、邪魔というコストが増えれば増えるほど、視聴者は広告アリで無料のサービスを受け続ける可能性が低く、有料サービスに切り替える可能性が高くなったのです。
サブスクサービスの普及によって、世界中の人が聴く音楽も変わり始めています。自分の国のミュージシャンばかりではなく、私たちは様々な国の音楽が聴けるようになりました。
ほとんどのレコードは儲からないのだ。レコード・レーベルが出すレコード10枚のうち、費用に見合う以上の売り上げにたどり着くのはほんの1枚か2枚だ。音楽のレーベルは大きなリスクを背負う。ヴェンチャー・キャピタルみたいなもので、たくさんの新しいアーティストや音楽に賭け、ほんのひと握りでも大ブレイクするのが出てくれないかと祈るのだ。費用を賄うべく、レコード会社は赤字、つまり損の出る音楽山ほどを、大当たりするひと握りのレコードで援助することになる。少なくとも、成功したスターとの契約を更新しないといけなくなるまではそうだ。
レコード会社はヴェチャーキャピタルのような存在で、何人ものミュージシャンに投資し、彼らがIPOするのを支援します。投資先が売れなければ、彼らは損を抱えてしまうのです。
しかし、レコードやCD、サブスクのビジネスは儲からなくなっており、多くのアーティストたちはライブで稼いでいると言います。体験の方が価値があり、多くの有名アーティストは所得の大部分をライヴ・コンサートで稼いでいるのです。2017年にツアーに出たトップクラスのミュージシャン48組を見ると、平均で所得の80%をツアー、15%を録音した曲、5%を出版で稼いでいます。ツアーは稼ぎの大きな部分を占めているのです。
ミュージシャンと聴き手のつながりによって、人はレコードやコンサートのチケットを買います。ファンベースマーケティングを実施したければ、アーティストとファンの関係を見習えばよいのです。
消費者や企業が音楽にかけるお金や、音楽業界が支える仕事や所得で見ると、経済に対する音楽の貢献度はどちらかと言うと小さい。でも、音楽がぼくらの生活に与える影響はぼくらが音楽を聴いて過ごす時間の長さ、そして音楽が呼び起こす強烈な情感が示すように経 済的な影響なんかとは比べものにならない。消費者から見ればたぶん音楽は断トツのお買い得である。音楽はお金で測れる価値なんて超越している。聴く人の心に、つながっているという強い気持ちを呼び起こすからだ。
ロックミュージシャンたちは、経済学者が「人的資本」と呼んでいるものを育んでいます。人的資本は人にとっても国にとっても成功するのに大事な要素なのですが、多くのミュージシャンは、努力を続けています。
実際、著者が分析したところ、プロのミュージシャンが大学出だと、高校までのミュージシャンよりもはるかに多く稼いでいます。グラミー賞を取ったソングライター、ダン・ウィルソンの言葉が成功と努力の関連性を示しています。
ミュージシャンはまあまあの成功を手にするだけでも、何度も何度も頑張らないといけないし、ものすごく大きな運も必要だ。何度も何度もっていうのは、練習が要るってことでもあるけど、もうーつ、頑張り続けるからこそ運も巡ってくるってことだよ。(ダン・ウィルソン)
練習したから、音楽が完璧になるわけではありませんが、練習しないとファンを喜ばすことはできません。ライブパーフォマンスで稼ぐ時代には、練習が欠かせませんし、サプライズを与える演出が欠かせません。人的資本を充実させ、マーケティングを学び、カスタマーサクセスの視点を取り入れることで、チケットやグッズが売れるようになります。
スーパースターや、チケット価格、所得格差など本書で紹介されているロックの成功事例を学べば、経済がわかるようになるのです。ロックという身近な事例が難しい経済学の教材になるのです。
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