ストア派哲学入門 ──成功者が魅了される思考術
著者:ライアン・ホリデイ
出版社: パンローリング株式会社
本書の要約
ストア派哲学の教えを実践することで、人生の様々な悩みを解決できるようになります。ものの見方を変えることで、正しい答えを導けます。行動をきちんと適切な方向に向ければ、結果を出せるようになります。意志の力を活用すれば、どんな困難も恐れずにすみます。
ストアは哲学の教えとは?
すべての人間のうち、英知すなわち哲学のために時間を使う者だけがゆとりのある人であり、真に生きている人である。彼らは、自分の人生を立派に守るだけでは飽き足らず、あらゆる時代を自分の人生に付け加える。過去の収穫物はすべて彼らの貯蔵庫に蓄積される。忘恩の徒でもないかぎり、これら尊い思想を築いてくれた偉人たちは、われわれのために生まれ、われわれのために生き方を描いてくれたのだと考えざるを得ない。(セネカ)
このブログでは、定期的にストア派哲学の書籍を取り上げています。ストア派とは古代の哲学で、かつては西欧で広く用いられていた市民理論でした。古代ギリシャやローマでは、富める者も貧しい者も、権力の座にある者も苦境にあえぐ者も、「善い生活」を求めてストア派哲学を実践していました。現代においてもこのストア派の教えを実践することで、人生の多くの課題を解決できます。
ストア派は、紀元前3世紀前半にゼノンがアテネで興した哲学の一派で、彼が初めて弟子たちに講義をした場所が「柱廊」(ギリシャ語のストア)だったことから、ストア派と呼ばれるようになったのです。
ストア派では、「徳」(おもに自制、勇気、正義、知恵の四つ)こそが幸福の鍵であり、悩み苦しみの多くは物事そのものより物事のとらえ方に原因がある、と考えます。
作家のライアン・ホリデイは、マルクス・アウレリウスや、エピクテトスやセネカなどの偉大な哲学者も、現代の私たちとまったく同じように、人生のさまざまな問いと向き合っていたと言います。彼らは次のような問いに対しての答えを日々考えていたのです。
■最善の生き方とは何か?
■怒りの感情にどう対処すればよいか?
■仲間同士、ほかの人間に対する自分の義務とは何か?
■死ぬのが恐ろしいのはなぜか?
■現在の苦境をどう乗り越えればよいか?
■手にした成功や権力をどう扱うべきか?
彼らは、いつも現実的で実行可能な答えを出し、その思想を3つの重要原則から体系化しました。
1、ものの見方
周りの世界をどのように見て、受け止めるか?
2、行動
何のために、どんな決定を下し、どんな行動をとるか?
3、意志
自分の力では変えられない物事に、どのように対処すれば曇りのない、納得のいく判断を下すことができるか?そして世界における自分の立ち位置を正しく理解できるか?
ものの見方を正しくコントロールすれば、澄みきった目でありのままに世界を見ることができる。行動をきちんと適切な方向に向ければ、期待した成果を収めることができる。意志の力を正しく用いれば、どんな困難にも対処できる知恵とバランス感覚を身につけることができる。(ライアン・ホリデイ)
私たちはストア派の教えを実践することで、自らを鍛えるだけでなく、周りの人をも助けることできます。何ものにも負けない強い心と目的意識が養われ、人生の喜びさえも育めるようになるのです。
エピクテトスの精神の7つの働き
人生の主な仕事とは、簡単に言えば、物事を区別し、分類することだ。どれが自分の力の及ばない外的なもので、どれが自分の意志にかかっている選択なのかを、自分自身にはっきりと言えるようになること。ならば、善悪はどこに探せばよいのか?自分ではどうにもならない外的なものには、善も悪もない。自分自身の中、自分の選択の中に、それはあるのだ……。(エピクテトス)
古代ギリシャのストア派で、後のローマ皇帝マルクス・アウレリウスに多大な影響を及ぼしたエピクテトスは、変えられるものとそうでないものを区別することが重要だと考えました。自分の力が及ぶものとそうでないものを区別することで、心の平穏を取り戻せ、今ここに集中できるようになります。
飛行機が遅延した時に、空港の担当者に怒りをぶつけても意味がありません。もっと背が高ければ、低ければ、あるいはほかの国で生まれればよかったのにと願っても、何かを変えられるわけではありません。自分がコントロールできないことに、時間を使って悩んでも結果は変わりません。
エピクテトスが言うように今この瞬間、何を選択するかは、自分で決められます。 私たちの今日一日にも同じことが言えます。自分の力でコントロールできる部分とそうでない部分を意識して区別すれば、もっと気持ちよく生きることができます。勝ち目のない闘いを挑んで時間を浪費するのをやめ、困難が起こった時にも感情をコントロールし、本当にやりたいことに時間を使いましょう。
エピクテトスは、曇りなき精神の7つの働きという名言を残しています。
精神の正しい働きというのは、選択すること、拒否すること、切望すること、忌避すること、準備をすること、目的をもつこと、同意すること、から成る。ならば、精神の正しい働きを汚し、損なうものとは何だろう?それは、精神そのものの歪んだ判断にほかならない。(エピクテトス)
エピクテトスが挙げた精神の7つの働きを著者のライアン・ホリデイは、以下のように整理します。
・選択
正しく考え、行動すること。
・拒否
誘惑を退けること。
・切望
向上しようと願うこと。
・忌避
よくないもの、悪い影響、真実でないものを遠ざけること。
・準備
目の前のもの、あるいは将来起こるかもしれないことに備えておくこと。
・目的
人生の指針となる原則、最優先の目標をもつこと。
・同意
自分の内面、および、自分の力の及ばない外的な物事について、自分を偽らないこと。
エピクテトスが挙げた精神の7つの働きを実践し、常に自分の状態をよくするようにしましょう。7つの働きから外れるものはすべて、精神の汚染であり堕落であると考えるべきです。古代ギリシャのストア派哲学を実践することで、私たちはよりよい人生が送れるようになります。
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