ダイエットを成功させたければ、多様性の視点を取り入れよう!


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多様性の科学 画一的で凋落する組織、複数の視点で問題を解決する組織
著者:マシュー・サイド
出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン

本書の要約

世の中にはさまざまなダイエットの手法が溢れていますが、多くのダイエットは標準化されているため、多くの人が結果を出せずにいます。最近の研究によって、自分の体内環境に合わせ、食事を改善することで、ダイエットも成功し、健康を取り戻せることが明らかになってきました。

ダイエットと多様性の関係とは?

特にダイエット方法には流行りすたりがあり、それぞれ矛盾する内容であることも多い。一見、多様性ともここまで見てきたことともなんら関係なさそうだが、決してそんなことはない。しかも現代社会にとっては非常に重要で、我々の将来に大きく関わる問題でもある。(マシュー・サイド)

マシュー・サイド多様性の科学 画一的で凋落する組織、複数の視点で問題を解決する組織書評を続けます。『タイムズ』紙の第一級コラムニストである著者のマシュー・サイドは、多様性という視点を取り入れることで、さまざまな社会課題を解決できると言います。

マシューはダイエットと多様性について考察する際に、ワイツマン科学研究所の計算生物学者のエラン・シーガルの研究を参考にします。エランの次の言葉を読むと、何がダイエットにおいて正しいのかがわからなくなります。

2012年には、米国心臓協会と米国糖尿病学会が、減量や健康のためにダイエット炭酸飲料を勧めました。するとダイエット炭酸飲料の消費量が劇的に増えました。しかしその後の調査では、学会の発表とは真逆のデータが出ています。また1977年には、アメリ力政府が「脂肪は体に悪くて、食物繊維は体にいい」と発表しました。すると国民は脂肪の摂取を減らし、食物繊維を多くとるようになりました。しかしそれとほぼ同時に肥満が、男性ではそれまでの3倍、女性では2倍に増えたのです。(エラン・シーガル)

肥満は今や社会問題になっており、多くの人がダイエットに励んでいますが、その方法については諸説が溢れかえり、何を信じていいいのかわからなくなっています。アメリカ人においては、やや肥満である可能性がほぼ70%、肥満である確率は約40%に達しています。2014年には、成人で19億人(世界人口の39%)を超える人々がやや肥満、6億人が肥満になっています。この人たちの多くは、正しいダイエットを行っておらず、肥満人口を減らせずにいます。

エラン・シーガルはダイエットを行うことで、逆に体重を増やしている人がいると言います。

さまざまな情報が錯綜している状態で、こうした肥満傾向を食い止めることはできません。ダイエットをする人の多くはリバウンドを繰り返しています。実際ダイエットの影響については、体重の減少より増加との関連を示すデータが数々出ています。

エランはダイエットの研究を重ねるうちに、ダイエットが人間の多様性を無視していることに気づきます。

最近では、GI値を使ってダイエットをする人が増えていますが、これが逆効果になっていることがわかりました。血糖値の上がりやすさを表すGI値は、食品に対する被験者の平均的な反応でしかありません。実際には同じものを食べてもまったく異なる反応をする人がいるはずです。標準化されたGI値を参考にして食事をすると、かえって体に悪くなるとエランは考えたのです。

2017年、エランは共同研究者とともに2種類のパンを使った実験を行いました。一般的によく売られている白いパン(健康ロビイストが悪魔呼ばわりするパン)と、手作りの茶色いパン(全粒粉を使い、サワー種という天然酵母で発酵させた、健康オタクが愛するパン)を使ったのです。

ダイエットや食事療法をしていない健康な被験者を選び、ランダムに次の2つのグループに分けました。
①白いパンを毎日1週間食べる。
②茶色いパンを同様に食べる。
どちらもそれ以外の小麦製品をとってはいけない。また朝食はパンのみにする。昼食と夕食には好きなものを一緒に食べてかまわない。

実験後は両グループとも2週間の休憩期間をとり、その後は互いに実験内容を入れ替えました。 被験者のパンに対する反応は、炎症反応や栄養吸収度などを含めて細かく測定し、血糖値の変化を注視しました。血糖値は、たんに体重ばかりでなく健康状態そのものに大きな影響を及ぼすことを考慮し、この実験を行ったのです。

2種類のパンの違いは、血糖値の変化にも、その他の臨床的指標にもまったく現れませんでした。つまり市販の白いパンも手作りの茶色いパンも、実質的に同じ反応を示していたのです。 しかしこれこそ平均値のマジックでした。個人の反応を見ると結果は驚くべきものでした。

被験者の中には、茶色いパンでは血糖値が安定し、 白いパンでは不安定だったという人もいれば、まったく逆の反応を示した人もいたのです。また2種類のパンで反応がほぼ変わらなかった人もいれば、劇的な差が出た人もいました。1つのパンに対する反応も、人によって細かく異なります。年齢、遺伝的特徴、生活習慣などさまざまな要素が関連していたのです。

その中でも特に興味深いのがマイクロバイオームです。腸内には約40兆個(最大1000種類)の細菌が生息しており、ここには人間の200倍以上の遺伝子が存在しています。それが食物の消化や栄養吸収、免疫システムなどに大きく影響していると言われています。

標準化された食事療法は、今後も欠点を抱え続けるでしょう。食物ばかり見て、食べる側の人間を考慮していないのですから。

エランは標準化されたダイエットはやがて時代遅れになると述べています。マイクロバイオームの構成は人によって異なります。このように細菌や遺伝子レベルまで、さまざまな独自要素を踏まえた上で考えれば、「標準的な」「誰にでも当てはまる」食事療法が、いかにばかげているかがわかります。

多様性が人を健康にし、幸福度をアップしてくれる!

エランはさらに研究を進めました。今回の被験者は総勢約1000人。およそ半数はやや肥満、4分の1は肥満で、先進国における非糖尿病人口の構成と合致しています。被験者には血糖値センサーを装着し、5分おきに丸1週間計測を続けました。その間摂取した食事は、おやつなどを含めて5万食を超えています。

被験者は食べたものをすべて、実験用に用意されたモバイルアプリに記録しました。被験者は基本的に食べたいものを食べてよかったのですが、朝食だけは標準化されていました。パンのみ、バターを塗ったパン、粉末状の果糖を水で溶いたもの、ブドウ糖を水で溶いたものを日替わりで摂取しました。結果、朝食の総数は5107食、その他の食事は4万6898食になりました。総カロリーは1000万カロリーにのぼり、血糖値など健康状態を示すデータとともにすべて記録されました。

今回、エランは平均値を一切計算せず、共同研究者とともに一人ひとりの被験者の反応を詳細に分析しました。被験者の中には、アイスクリームを食べて健康的な血糖値を示す人もいれば、すしを食べて乱高下する人もいた。これとはまったく逆の反応を示す人もいました。

エランの妻ケレンは臨床栄養士として大勢の患者を診てきました。彼女はこれまでずっと標準ガイドラインに沿って食事のアドバイスをしてきましたが、このアドバイスの前提が崩れてしまったのです。今では患者自身に血糖値を測るよう勧めて、自分の体に合う食事を見つけるようにしていると言います。血糖値の変化に合わせ、食事を改善することで、ダイエットも成功し、健康を取り戻せることが明らかになってきました。

エランと共同研究者はその後、血糖値の変化を予測するアルゴリズムを構築し、その時点までのデータをすべて学習させました。個人の血糖値の変化を予測する実験を被験者100人に実施しました。まず個人的な特徴(血液型、年齢、マイクロバイオームなど)を調査しました。次にそのデータをアルゴリズムに入力しました。

個々の被験者によって悪い食事と良い食事は異なったのです。悪い食事を摂った場合には、予想通り血糖値が異常に上昇しました。しかし良い食事を1週間とった場合、カロリーは悪い食事と同じでも、血糖値は正常のまま一度も乱高下することはなかったのです。エランは自分に合った食事療法を取り入れるべきだと言います。

血糖値は自分でコントロールできるという証明になりました。自分に合った食事に変えるだけで、糖尿病予備軍レベルの血糖値から正常値まで1週間で下げることもできます。

食事療法に関わるデータの欠陥は長い間放置されてきました。1人ひとりの多様性を考慮しない限り、食生活のガイドラインも、不完全なものになってしまいます。ダイエットにおいては、肝心なのは平均値ではなく、多様性だったのです。

エラン・シーガルはその後「DayTwo」(デイツー)というハイテク・ベンチャーを起業し、糖尿病患者に食事指導を行うサービスを提供しています。DayTwoに便のサンプルと血液検査のデータを送ると、マイクロバイオームと血糖値を分析してくれます。分析結果はその後アルゴリズムにかけられ、個人の体に合う食品が弾き出されるのです。

利用者は10万種類の食品と飲み物の中から血糖値の上がりやすいものと上がりにくいものを予測・検索できるデータベースを使えるようになります。今後、同社はマイクロバイオームやDNAのみならず、睡眠の時間や質、ストレス、服用中の薬剤など、個人的な要素の解析を含めた食事療法の提案を目指します。

数年後には、健康に関する測定値をディープラーニングして、カスタマイズした食事を提案してくれる「バーチャル健康アドバイザー」が現実になるかもしれません。 今後は我々の生活のあらゆる領域で、標準化から個人化への転換が起こり、私たちを健康にしてくれます。結果、幸福感や生産性も高まっていきます。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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