田中宏隆氏のフードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義の書評


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フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義
著者:田中宏隆、岡田亜希子、瀬川明秀
出版社:日経BP

本書の要約

2025年までに世界700兆円に達すると言われる超巨大市場「フードテック」。この成長著しいマーケットに欧米のベンチャーが参戦し、健康や環境破壊に対するソリューションを提供しています。コロナパンデミックがもたらす課題にもフードテック企業はすばやく対応し、存在感を増しています。

フードテックとは何か?

味や機能が進化している裏には、サイエンスと食の融合、フードビジネスとしてのプラットフォームの勃興、そしてライフスタイルの中での「顧客体験」に価値創造の主軸が移りつつあるという事実がある。この転換についていけなければ、日本の食産業はグローバルで加速するイノベーションの主導権を決して握れない。(田中宏隆、岡田亜希子、瀬川明秀)

2016年以降、アメリカでフードテック革命が起こり、多くのベンチャーがイノベーションを起こしています。2025年までに世界700兆円に達すると言われる超巨大市場「フードテック」で、日本企業は出遅れてしまいました。著者達はこのままではiPhoneの二の舞になり、日本企業は競争力を失うと危惧を抱いています。

食を巡る世界のトレンドが大きく変化し、新しいビジネスが次々と生まれています。特に食のシーンにデジタル技術(特にIoT)やバイオサイエンスなどが融合することで起こるイノベーションであるフードテックでは、有望なスタートアップが多く続々誕生し、ビヨンド・ミートのようにIPOをし、多額の資金を集める会社も出てきています。アメリカではフードテックを扱うVCが200を超えており、ベンチャー企業の資金をサポートしています。

肥満などの健康や気象の変化をもたらす環境破壊などを解決するために、多くのフードテックベンチャーが欧米で立ち上がっています。また、生活者の食の価値の再定義がこの動きを加速しています。同時に、先進国の生活者と企業も食べ物の大量生産、大量消費を前提とした生活が成り立たなくなっていることを感じ、テクノロジーを活用することで、生活者の多様なニーズに答えようとしています。

パンデミックで見えてきた食の課題とは?

新型コロナウイルスによる世界規模のパンデミックで、人々の健康、生活、産業活動すべての側面でディスラプション(崩壊、混乱)が起こっている。「食」の環境も様々な影響が出ている。いまだ未曾有の危機が続く中、世界のフードテックコミュニティーでは、「新型コロナ禍で私たちが学ぶべきこと」「どんなアクションをとるべきなのか」など議論が活発化している。

今回の新型コロナウイルスのパンデミックは多くの国の食文化に影響を及ぼしています。レストラン・外食産業の売り上げが激減し、その一方で食品スーパーやアマゾンなどのEC、ウーバーイーツなどのデリバリー業者が売り上げを伸ばしています。

コロナウイルスによる食の破壊は、社会問題を引き起こしました。アメリカでは、新型コロナウイルス感染者のうち、黒人の死亡率が高いことが問題視されています。調査会社エーピーエム・リサーチ・ラボによる20年4月16日時点での統計によると、感染者数10万人当たりの死亡率は、白人が4人、ラテン系が4.1人、アジア系が5.1人なのに対し、黒人は14.2人に跳ね上がっています。黒人には貧困層が多く、安価な加工食品を多用する食生活から肥満・糖尿病の持病を抱えている比率が高いことが要因の一つとしてあげられています。そのため、一部の黒人たちは自らの健康を見直し、フードテックのサービスやプロダクトを利用していると言います。

食料供給の視点で考えてみても、現在の「工業的畜産」の在り方には多くの課題があります。技術進化によって狭い場所でも大量の家畜を育てられるようなりましたが、動物と人間との距離が縮まったことで、新たなウイルスへの接点も増えたことが問題になっています。今後は「感染症対策」として、食としての動物への依存度を減らすべきという意見もあり、代替肉を購入する消費者も出始めています。

ニールセンによる米国の購買データによると、20年3月最終週の米国における植物性代替肉は、鮮肉で前年比256%増、加工肉製品で同50%増となっているそうです。この5月には、植物由来の人工肉や乳製品を製造・開発するインポッシブルフーズが小売店での販売や、D2Cでの提供も開始しています。

■アフターコロナで注目される5つの領域
1、Food as medicine 医食同源
2、Home cooking for Reconnect & Relax 
外食がしづらなくなる中で、家庭での調理機会が増えることがビジネスチャンスになります。料理がリラックスや家族や友人とのコミュニケーションの手段になります。ライブストリーミングとしての料理教室などエンタメとしてのサービスが話題になっています。
3、代替プロテインの拡大
4、Food waste Solution フードロス対策
外食向けの農家が苦戦する中、急速冷凍技術でフードロス対策を行う動きが出ています。レストランもファンベースでの経営が注目され、顧客から応援される店舗が生き残っていくはずです。
5、Frontline solution 最前線ワーカー支援  
従業員の感染対策のためのフードロボットの活用

世界中の人々が、ロックダウンや外出禁止を経験する中で、新たな生き方を模索しています。リモートワーク、ソーシャルディスタンスが私たちの働き方や食生活を一気に変えてしまいました。レストランで食事を安全に楽しむという体験が過去のものとなる中で、食に関わる企業は新たな動きを始めなければなりません。様々な課題を解決するために、テクノロジーやバイオだけでなく、食の領域でもイノベーションを加速させる必要があります。

お金をいくら稼いでも、食べ物が豊かでなければ、身体的にも、精神的にも、社会的にも、どうやってウェルビーイングを保つことができるだろうか。世界70億人の毎日の食を豊かにするために、食の価値を広げ、社会に定着させていく。世界中でインキュベーションを実践していく。世界にいるフードテックコミュニティーとつながりながら、Food Sovereignty(食料主権)を目指す。パンデミックという日常の大転換が起こった今だからこそ、皆が動き出すべきだ。

著者達はコロナパンデミックの今こそ、フードテックでイノベーションを起こすべきだと言います。欧米に先行される中、日本にもデイブレイクスナックミーなど勢いのあるフードテックベンチャーが登場しています。長寿社会、健康に気を使う国民性などマーケットを考えると、多くのアドバンテージを日本企業は有しています。ベンチャーと大手のコラボから強力なプロダクトやサービスが生まれることを期待しています。

本書にはウイズ・コロナの危機を乗り越えるためのビジネスのヒント、フレームワークを使ったフードビジネスのトレンドや海外の最新のケーススタディが数多く紹介されています。今後、植物性代替肉のインポッシブルフーズやビヨンドミート、キッチンOSのイニットやサイドシェフ、ラーメン自販機のヨーカイエクスプレス、全自動ハンバーガーロボットのクリエーターなどの最新のケーススタディも本ブログで紹介していきます。

この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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