絶対悲観主義(楠木建)の書評

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絶対悲観主義
楠木建
講談社

本書の要約

絶対悲観主義者になり、成功を期待しないことで、仕事に気楽に取り組めます。失敗しても、それほどダメージを受けないことで、次の行動に取りかかれます。心のツマミを思いっきり悲観の方向に回し、ベイビーステップを起こし、行動を習慣化することで、成功確率が徐々に上り、ROIが高まるのです。

絶対悲観主義とは何か?

フツーの人にとってベストだと僕が思っている仕事への構え、それが「絶対悲観主義」です。「自分の思い通りにうまくいくことなんて、この世の中にはひとつもない」という前提で仕事をする──厳しいようで緩い。緩いようで厳しい。(楠木建)

著者の楠木建氏は、絶対悲観主義者になることで、人生がうまくいくようになると述べています。多くの人は成功を目指し、緊張しながら仕事をしています。しかし、ビジネスで勝ち続けることは難しく、緊張状態だけではすぐに疲れてしまいます。

仕事に関していえば、そもそも自分の思い通りになることなんてほとんどありません。成功しようと考えることで、仕事を難しく考え、人は行動を先延ばししてしまいます。

逆に仕事で連勝するのは難しいと考え、仕事に気楽に取り組むことで、ストレスを軽減できます。何事においても「うまくいかないだろうな」と気楽に考え、ベイビーステップでアクションを起こすことが、絶対悲観主義者の思考と行動の基本になります。

広告会社で働いていた頃、競合とのプレゼンに勝つために、私は絶えず緊張して働いていました。そのストレスからアルコールに依存するようになり、健康を害してしまいました。緊張と弛緩があるから集中できるのですから、適度に休むことも重要です。若い頃にこの考え方に触れていたら、アルコールに依存することもなかったかもしれません。

年齢を重ね、失敗体験を重ねるうちに、成功するための法則が見つかりました。顧客との対話に時間をかけ。相手のためになることを提案の基軸にすることが重要だと気づいたのです。自分勝手な提案を極力減らし、相手とWin-Winになることを考えるようにしています。そのために、ゆったりと構え、顧客の幸福を考える時間を持つことを優先するようにしています。

ユニクロの柳井代表の働き方が本書で紹介されていますが、早朝から16時まで働いた後は、自宅でゆっくり休息をとるとのこと。自分に緊張を強いるのではなく、適度に休息したり、好きなことに時間を使うことで、余裕が生まれます。インプットやアウトプットに時間を使い、ゆったりする時間を持つことで、顧客のためになるアイデアが生まれます。

散歩や入浴や睡眠のさなかにアイデアが生まれるとよく言われますが、脳に緊張を強いるだけでなく、私が休息をとる意味もここにあります。

ただの悲観主義ではなく「絶対」がつくところがポイントです。仕事の種類や性質、状況にかかわらず、あらゆることについてうまくいかないという前提を持っておく。

適度に力を抜いて、うまくいかないと考えることで、多くのメリットが得られると著者は指摘します。

絶対悲観主義になることのメリット

著者は絶対悲観主義になることのメリットを紹介しています。

①実行が極めてシンプルで簡単。
やるべきことは、事前の期待のツマミを思い切り悲観方向に回しておくだけです。

結果や成果ではなく事前の構えですから、自分の好きなように好きなだけ操作できます。ここぞというときはツマミを可動領域いっぱいまで思い切り悲観に振っておく。万が一うまくいったら、ものすごく嬉しい。

仕事においては、大体は失敗するのですがら、最初からうまくいかないと考えることで、失敗を受け入れられるようになります。

②仕事へのスピードアップ。
仕事に取りかかるまでのリードタイムが短くできます。重要だと思っているタスクほど、「うまくやらなくては」「失敗できない」と構えてしまうため、なかなか行動に踏み切れません。どうせうまくいかないと思っている絶対悲観主義者はあくまでも気楽に取りかかるので、ベイビーステップを起こせるようになります。

③悲観から楽観が生まれるという逆説。
絶対悲観主義はリスク耐性が高くなり、リスクに対してオープンに構えることができます。

④失敗が現実のものになったときの耐性も強くなる。
絶対悲観主義者にとって、失敗は常に想定内ため、失敗が怖くなくなります。失敗を恐れなくなることで、好奇心の赴くまま、何にでもチャレンジができるようになります。

⑤自然に顧客志向になり、相手の立場で物事を考えられる。

⑥自分に固有の能力なり才能の在処がはっきりとする。
絶対悲観主義の構えで仕事をしていても、事前の期待が良い方向に裏切られ、ときどきうまくいくことがあります。

仕事に対して気楽に向き合える。失敗が気にならなくなり、リスク耐性がつく。たまさか首尾よくいったときは喜びにターボがかかる。相手の立場で考えられる。自分の気がラクになるからそうしているだけなのに、謙虚な人だと誤解してもらえる。自分の才能の在処をつかめる。絶対悲観主義は一石で何鳥にもなります。

絶対悲観主義者になり、成功を期待しないことで、仕事に気楽に取り組めます。失敗しても、それほどダメージを受けないことで、次の行動に取りかかれます。心のツマミを思いっきり悲観の方向に回し、ベイビーステップを起こし、行動を習慣化することで、成功確率が徐々に上り、ROIが高まるのです。


 

この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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