おうち茶道のすすめ(水上麻由子)の書評

おうち茶道のすすめ
水上麻由子
二見書房

本書の要約

利休は茶の道に残したのは「問い」だと著者は指摘します。おうち茶道を習慣化することで、私たちは自立した精神で自らに問い続けることができるのです。自宅で内省の時間を持つことが、おうち茶道の醍醐味なのです。お家茶道によって、私たちは心の平穏と健康を得られます。

現代人に茶道が必要な理由

茶の湯はもともと男性中心の文化で、家元(流派の本家として代々の芸道を受け継いでいる家の当主)や内弟子(家元の家に住み込んで家事の手伝いなどをしながら芸事などを学び、伝承の”役を担う弟子)の先生たちは皆男性です。(水上麻由子)

戦後、花嫁修業の代名詞になった茶道は、いつしか女性の文化だと思われるようになっていますが、その歴史をさかのぼれば、男性のものであったことがわかります。その茶道をビジネスパーソンに普及させる活動である「ビジネス茶道」を2017年から主宰しているのが、本書の著者の水上麻由子氏です。

茶室に赴こくことで、自分自身のための静寂な時間を持てます。この時間が仕事で忙しいビジネスパーソンによい影響を及ぼします。私も仕事帰りにビジネス茶道を何度も体験しますが、デジタルギアから離れることで、集中力を取り戻せました。

茶室という空間にいることで、脳の疲れを癒やすことができるだけでなく、視覚に偏りがちな五感を取り戻せます。禅の知識や、歴史、文化などの教養を深めることで知性を磨くことができます。参加者との茶室での交流によって、普段とは異なる人脈も得られます。

茶道は日本の伝統的文化でもあるにも関わらず、最近では近寄りがたいものになっています。茶道は敷居が高く、作法が細かくてむずかしいと考えてしまいますが、茶道の魅力を考えれば、まずは茶室に出かけ、体験することです。その体験の場が、日本橋室町コレドで毎月開催されているビジネス茶道なのです。しかし、この数年のパンデミックでこの数年は、ビジネス茶道もオンラインで開催されていました。

そんな状況を打破し、茶道を身近なものにするために、今回水上氏は自宅で簡単にできる「おうち茶道」を提案しています

現代の私たちは、茶を飲もうと思えば、その場所を茶室に変えられます。自宅で茶を点てる時間を持つことで、意識をいまここに集中して取り組めます。在宅でのオンライン業務に疲れた脳を茶を点て、飲む時間を持つことで癒やすことができるのです。

おうち茶道のコンセプトとは?

新しい生活様式が求められる時代に合わせた、新しい方法で茶道の本質を広く知ってもらう時がきたのではないか。

日本茶には健康に良い成分がたくさん入っています。茶道を難しく考えるのではなく、コロナ時代のスーパー健康フードと捉え、日々、自宅でお茶を点てながらいただくことで、健康を取り戻せます。

最近、欧米では、茶葉を食べるとビタミンCが摂取できることやコーヒーに代わるリフレッシュドリンクとして抹茶が注目されています。抹茶にはリラックス作用のあるテアニンが含まれているため、心も落ち着きます。抹茶に含まえるポリフェノールには、高い抗酸化作用もあり、若返りにも効果があります。

特に「エピガロカテキン」には高い抗酸化作用があり、活性酸素の除去にも効果があることがわかっています。抹茶にはビタミンEも含まれており、動脈硬化予防や老化防止にもつながります。抹茶を自宅で飲むことを習慣にすれば、健康や老化防止によい影響を及ぼします。

おうち茶道の作法の基本コンセプトは「マイペース・マイフェイバリット・マィスペース」です。

自分のべース、自分の好み、自分の揚所で楽しむ茶道が、おうち茶道です。おうち茶道によって、自分との対話の時間を持てるようになります。お茶を点てる時間が内省の時間となり、集中力も鍛えられます。オンライン会議で疲れた自分の心を癒やすだけでなく、抹茶を飲むことで、健康も取り戻せます。

利休は茶の道に残したのは「問い」だと著者は指摘します。おうち茶道を習慣化することで、私たちは自立した精神で自らに問い続けることができるのです。自宅で内省の時間を持つことが、おうち茶道の醍醐味なのです。



この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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