生きるのがラクになる「心の洗い方」―――ゆっくり、じっくり――禅が教える「生活の知恵」(枡野俊明)の書評

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生きるのがラクになる「心の洗い方」―――ゆっくり、じっくり――禅が教える「生活の知恵」
枡野俊明
三笠書房

本書の要約

日々の生活の中で、わたしたちは心の中にさまざまなネガティブな感情を積み上げています。これを時々洗い流さねば、心の病に陥ってしまいます。日々、自分の成長を実感すること、自分を主人公にすることで、人生をより豊かにできます。先人の教えが詰まった禅語を学ぶことで、心を洗う方法を学べます。

洗心が欠かせぬ理由

禅には「洗心」という言葉があります。心に積もった塵や埃を払う、曇りや汚れを洗うということです。そのことによって、悩みや苦しみから解き放たれるとするのが、禅の基本的な考え方です。 (枡野俊明)

日々の生活の中で、わたしたちは心の中にさまざまなネガティブな感情を積み上げています。これを時々洗い流さねば、心の病に陥ってしまいます。

曹洞宗徳雄山建功寺住職の枡野俊明氏は、禅宗の厳しい修行をしなくとも、日頃の生活の中で工夫を重ねることで、心を洗うことは可能だと述べています。今日は本書の中からいくつかの禅語を紹介しながら、洗心の仕方を学ぼうと思います。

禅語の「他は是れ吾に有らず」は、自分自身がやらなければ何も起こらない、他人のしたことは自分がしたことにはならない、という意味ですが、きっかけも自分が踏み出さなければ生まれません。わたしたちは行動を先延ばしにしがちですが、小さな一歩を日常に取り入れることで、心のもやもやを減らせます。最初は「ほんの小さなこと」でかまわないので、まずは行動をスタートしましょう。

私はこのブログを12年前に始めました。実は半年ほど、ブログを書くことを先延ばしにしていました。様々な言い訳を考え、行動することを躊躇していたのです。しかし、周りのブロガーのアドバイスに従い、毎日書く、少しでも書くをルールにようやくブログをスタートできました。

ブログを書くとを決め、それを習慣にすることで、私は自分を変えることができました。12年前の2月に小さな一歩を踏み出さなければ、今の私はなかったと当時の自分に感謝しています。

映画にもなった「日日是好日」とは、どういう意味なのでしょうか?

著者はどんな一日も大切な一日で、その日にしかできない体験を味わうことで、多くの学びを得られると指摘します。

人生にも、晴れの日もあれば雨の日もあります。順境から逆境に転じ、いつかまた順境に入っていく。そんなことの繰り返しです。そのどこにいても、そのときでなければできない経験と出会うのです。順境では生きる自信が得られるかもしれないし、逆境で不屈の忍耐力が培われるかもしれない。どれひとつとってもかけがえのない経験です。禅語の「日日是好日」は、すべてがよい日という意味ではありません。

わたしたちは、その日にしかできない経験を通して、生きる力をもらっているのです。そう考えることで、苦しい日々も乗り越えられます。

主人公の本来の意味とは?

比較するから心が騒ぎ、悩みを背負い込むことになるのです。禅は比較をするな、と教えています。比べるから、どちらが上とか下とか、よいとか悪いとか、得とか損とかという分別が出てきて、悩んだり迷ったりするのです。

他者との比較が、わたしたちの心を曇らせます。自分と他人を比べて落ち込んでいては、本来の自分の力も発揮できませんし、限りある時間を無駄遣いしてしまいます。あるいは度が過ぎると嫉妬心が芽生え、他者の足を引っ張ることを考え、やがてはその人をを攻撃するような感情が生まれることさえあります。

著者は、他者との比較をやめ、本来の自己を取り戻すべきだといいます。「主人公」という言葉ははもともとは禅語だそうです。唐代の禅僧である瑞巌和尚は、毎日自分自身に向かって「主人公」と呼びかけ、また自分で「ハイ」と返事をしていました。主人公とは自分という存在を自ら意識することなのです。

人間一人ひとりの主体的な人格を日頃から意識し、本来の自分を取り戻すことで、自分が本当にやるべきことが見えてきます。他者との比較に時間を使うのをやめ、自分の成長のために努力を重ねましょう。 「本来の自己」に目覚めると比較から離れ、自分の本来の仕事に集中でき、足りないものがあれば、それを補おうとするはずです。

他者と比較するのはやめ、「自分」との比較を心がけることで、自分を成長させられます。過去の自分と比べて、進歩していないのであれば、それは自分の努力が足りなかったと考えるべきです。日々、自分の成長を実感すること、自分を主人公にすることで、人生をより豊かにできます。先人の教えが詰まった禅語を学ぶことで、心を洗う方法を学べます。


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