専門家の大罪-ウソの情報が蔓延する日本の病巣(池田清彦)の書評

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専門家の大罪-ウソの情報が蔓延する日本の病巣
池田清彦
扶桑社

本書の要約

日本のメディアでは専門家のウソがまかり通っています。「専門家」は政治家や官僚の意見を主張する際の権威付け、エビデンスとして利用されていると考えたほうがよさそうです。職業としての専門家の情報を鵜呑みにすることはリスクが高いと考え、自分の頭で考えるようにしましょう。

専門家のウソを信じるな!

権力やマスコミが必要としているのは、専門家が提供する最先端の知見などではなく、行政に都合がいい情報の「権威づけ」なのである。だから、意見を聞くのはとりあえず「専門家」と呼べる人物であればそれで十分だし、自分たちの主張を貫くためなら、そうやって呼んできた専門家の発言さえも、都合よく切ったり貼ったりする。 そしてそのからくりに気づかない世の中の人たちは、「専門家がそう言ってるのだから間違いない」と思い込み、すっかり騙されてしまうのだ。(池田清彦)

メディアに出演している専門家の意見には気をつけたほうがよいと著者は言います。 カネの絡む分野では行政や企業と癒着しやすく、専門家が彼らのスポークスマンとして使われています。一方、行政や大企業の意向に反する研究成果はメディアに取り上げられないことが多いのです。

極端な話ですが、メディアが望みの結論を導いてくれる専門家を呼べば、番組の思いどおりの結論が出せるようになります。多くの情報・ニュース番組にはお抱えの専門家が存在しますが、番組の思惑とその専門家の意見に乖離があまりありません。結論ありきの番組を信じることで、私たちはいつの間にか洗脳されてしまうのです。

政府の審議会などでも反対勢力の専門家が多数派にならないようにあらかじめ数を調整しておけば、自分たちが欲しい結論を引き出せます。「専門家」は自分たちの意見を主張する際の権威付け、エビデンスとして利用されていると考えたほうがよさそうです。職業としての専門家の情報を鵜呑みにすることはリスクが高いと考え、自分の頭で考えるようにしましょう。

専門家を養成するシステム自体が、権力に迎合するようになっていることも、事態を硬直化させる原因だ。要するに、現代の専門家はニュートラルな立場から発言するのが難しい状況に陥っているのである。 そういう意味では彼らも被害者であるとも言えるが、その肩書を信じ込み、不利益を被っている人も少なからずいる以上、決してその罪が軽いとは言えない。

環境問題と健康問題に関しては空気がつくられやすく、メディアや政府に反対する意見はスルーされがちです。 結果、環境問題と健康問題にはたくさんのウソがはびこるようになっています。

医療の専門家が日本人を不幸にする?

大多数の専門家が声をそろえて発する、正しそうに見える「医学常識」や「健康常識」のほうにある。なぜならそこには、専門家にとって都合のいい「ウソの常識」もたくさん含まれており、それを正しいと思い込まされたせいで、健康になるどころか、かえって不健康になることもあるからだ。

医療や健康においてのウソは私たちの健康に悪影響を及ぼします。その情報を信じた人たちの健康が害されたり、命を脅かされてしまうのです。

日本の政府や大企業の官僚組織でほとんど無意識のうちに前提とされているのが「無謬性の原則」です。そこには「ある政策を成功させる責任を負った当事者の組織は、その政策が失敗したときのことを考えたり議論したりしてはいけない」という信念があります。

例えば、日本では新型コロナをなかなか2類から5類に引き下げません。5類に引き下げていろんなことがうまくいってしまうと、「かつて5類に引き下げることに反対したことが間違いだった」と認めざるをえなくなります。政治家や官僚はこれを徹底的に避けるために、5類への引き下げを先延ばししています。

「さっさと5類にしておけばこんなことにはならなかったのではないか」と他の専門家から批判されるのを嫌い、正しい政策が行われないのが今の日本です。消費税の引き下げに反対し、積極財政を行わないために、日本が成長しない国に落ちぶれたのもここに原因があります。

前に決めたことが「無謬」(誤りがない)だってことにするためには、絶対に「変えないこと」を貫くほうがいい。

実際に基準を変えなければ、「5類に引き下げたら何が起こるのか」は仮定の域を出ることはないので、比較されることはありません。

濃厚接触者の隔離期間を短縮するなどの中途半端な対応を続けながら、失敗を隠そうとしています。このまま感染が落ち着けば、「やはり2類相当の指定感染症から外さなかったのは正しかった」と主張できます。

自分たちの安全を守るための思考パターンが日本の政治家、官僚、専門家に染みついています。エビデンスに基づいた柔軟な対応こそが科学的な態度であり、そのための助言とか警告をするのが本来の専門家の役割ですが、御用学者はそれをすることはありません。報酬と保身のために、自分の態度を変えることはほとんどありません。

今の政治に寄り添うのは、上からコントロールされた多様性のない専門家ばかりで、このままでは日本はいつまでも状況の変化に対応することができない非科学的な国家から脱することができないと思う。パンデミックそのものは遅かれ早かれいつかは終わる。

コロナパンデミックが終焉しても、ウイルスとの戦いは続きます。今のままでは、今回と同様のドタバタ劇が演じられる可能性が高いと著者は指摘します。

日本の健康診断にも問題があります。健康診断もがん検診も死亡率を下げられないことが、外国での調査で明らかになっています。現在、欧米では健康診断を義務付けている国はありません。最近ではがん検診も廃止の方向に向かっていると言います。

例えば、アメリカでは前立腺がんの検診はやめたほうがいいと政府の公的機関が表明していますし、肺がんも、検診したほうが肺がん死亡や総死亡数が増えることがわかり、欧米では行っていません。

過去の常識にとらわれた日本人だけが、何の根拠もないのに健康診断とがん検診を受診しています。日本では、ほとんどの医療従事者は健康診断やがん検診は有効だと信じ込まされているため、変化が起こらないのです。健康診断が無効だということを知っている専門家=業界の利権のために健康診断やがん検診を推進している専門家たちが日本人を不幸にしています。無駄な時間とお金が使われるだけでなく、検査結果から余計な診療が行われたり、薬が処方されています。


 

この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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