完全無欠の問題解決 不確実性を乗り越える7ステップアプローチ(チャールズ・コン、ロバート・マクリーン)の書評

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完全無欠の問題解決 不確実性を乗り越える7ステップアプローチ
チャールズ・コン、ロバート・マクリーン
ダイヤモンド社

本書の要約

問題解決には7つのステップがあります。①問題を定義する。②問題を分析する。③優先順位をつける。④作業手順を作成する。⑤分析する。⑥分析結果を統合する。⑦ストーリーで語る。この7つのステップを反復しながら実践することで、どんな難しい問題も解決できるようになります。

問題解決の7つのステップ

問題解決とは、複雑さと不確実性が高く、明確な解決策が得られない場合、また良い答えを得るための努力に見合うだけの結果が得られる場合の意思決定のことである。(チャールズ・コン、ロバート・マクリーン)

問題解決について、マッキンゼーで最も読まれた「伝説の社内資料」が完全無欠の問題解決として出版されました。「どこから攻撃を受けても守れる防弾処理を行った」という意味で、同社では「完全無欠(ブレットプルーフ)」という表現が最高の褒め言葉になっています。それがタイトルになっていることからも、本書が価値ある一冊であることがわかります。

実際、著者のチャールズ・コン、ロバート・マクリーンは、自分たちが開発したメソッドや経験値を惜しげもなく紹介してくれています。私は今年から大学でビジネスフレームワークを教えていますが、本書の思考法とケーススタディはとてもわかりやすく、共感できる内容でした。

現代の課題は複雑になるだけでなく、多くのデータを紐解く必要があります。そのため求められるスキルや思考の質の基準も高まっています。著者はこのレベルの変化をうまく乗り越える唯一の方法は、流動的で創造的な問題解決者になることだと指摘します。

OECDのディレクターのアンドレアス・シュライヒャーの次の言葉を読めば、私たちが身につけるスキルが何かがわかります。

簡単に言ってしまえば、今の世の中は、グーグルがすべてを知っているから、単にモノを知っているだけでは報われなくなりました。そうではなく、自分が知っていることを使って何ができるのかが重要なのです。このスキルの中心に問題解決能力があります。問題解決能力とは、解決の方法がすぐにはわからない問題の状況を理解し、解決に結びつけるために、認知的な処理を行う個人の能力のことです。アンドレアス・シュライヒャー

問題解決には多くのスキルと多様な種類の知性が必要ですが、本書の7つのステップを実践することでスムーズに解決策が見つかるようになります。

■問題解決の7つのステップ
ステップ1 意思決定者のニーズを満たすために、どのように問題を的確に定義するか?
ステップ2 どのように問題をばらばらに分解し、検討すべき仮説を立てるか?
ステップ3 やるべきこと、やるべきでないことの優先順位をどのようにつけるか?
ステップ4 どのように作業計画を策定し、分析作業を割り当てるか?
ステップ5 認知バイアスを避けながら、どのように問題を解決するための事実収集と分析を決めるか?
ステップ6 洞察を引き出すために、どのように調査結果を統合するか?
ステップ7 どのように説得力のある形で伝えるか?

ロジックツリーが問題解決に重要な理由

まず問題を定義し、管理可能な部分に分解し、優れた分析ツールを最も重要な部分に集中させ、そして調査結果を統合して強力なストーリーを伝えるという、シンプルでありながら厳密なアプローチを定めている。このプロセスには始まりと終わりがあるものの、問題解決は直線的ではなく、反復的なプロセスだとお考えいただきたい。それぞれの段階で問題に対する理解を深め、より深い洞察を得て、初期の答えを洗練していくのである。

最初に問題提議を深堀りします。優れた問題定義文には、次のような6つの特徴があります。この特徴を網羅した定義を作成しましょう。

特徴1 成果に焦点を当てていること。活動や中間成果ではなく、最終的な成果で表現された、解決すべき問題を明確に記述している。
特徴2 可能なかぎり具体的で測定可能であること。
特徴3 明確な時間的制約が設定されていること。
特徴4 意思決定者の価値観や境界線(求められる精度や希望の規模など)に明確に対処するように設計されていること。
特徴5 創造性や予期しない結果に対して十分な余地を許容するよう構造化されていること。問題の範囲が狭すぎると、解決策が人為的に制約される可能性がある。
特徴6 可能なかぎり高いレベルで解決すること。つまり、一部に最適化して解決するのではなく、組織全体として解決する

問題解決のプロセスには始まりと終わりがありますが、それは直線的なものではなく、反復的なプロセスになります。最初に考えた問題の定義も新たな情報が見つかったり、他のアプローチが正しそうであれば、書き換えられるべきです。

問題の優れた分解は、7ステップのプロセスの中心部にある。現実世界で起こるどんな問題も、論理的な構成要素に分解して状況の推進要因や原因を理解することなしには解決することができないほど複雑すぎる。したがって、問題の分解は問題解決の最も重要なステップである。問題を分解すれば、解決への道筋が見えてくるからだ。同時に、すべての部分がはっきりと見えるようになれば、変更するのが難しすぎる構成要素や、問題にあまり影響を及ぼさない構成要素など、取り組むべきではないことを決定できる。

最も重要なステップは、問題を論理的な方法で構成要素に分解することです。ロジックツリーを使えば、問題の構造を簡単に把握できます。

■ロジックツリーが決定的に重要な3つの理由
理由1 誰もが構成を理解できるように、問題を明確に、視覚的に表現できる
理由2 やり方が正しければ、関連するすべてのものがツリーに取り込まれるという意味で、全体論的になる
理由3 データと分析によって検証可能な、明確な仮説を導ける

ツリーを書くことで、分析に優先順位を付けることが可能になります。答えにあまり貢献しない部分に取り組むのを避け、答えに貢献する部分にのみ取り組んでいる状態=クリティカルパス上にあることを目指しましょう。

問題解決を成功させるには、単純なツールや高度なツールを使ってどのように分析するかが重要です。優れたコンサルは簡単な見積もりとヒューリスティックス、つまり経験則から問題解決を始めます。

分析結果を統合した後は、ストーリー作成に専念します。誰かに行動を促すストーリーを語れるまでは、問題解決は終わりません。

優れたチーム構造と規範は、創造性を育み、問題解決における認知バイアスに抗うのに役立ちます。自分ひとりでは気づかないバイアスが他者の力を借りることで見つかります。アジャイルなチームを組むことで、より良い解決策が短時間に見つかるようになります。

また、優れた問題解決者は、よく本を読み、新しいアイデアを受け入れ、反省し、自己批判し、粘り強く行動します。

優れた問題解決は、鋭い仮説を導く優れた問い、問題のフレーミングを決めて分解する論理的アプローチ、時間を節約するための厳密な優先順位付け、創造性を育みバイアスに抗うための強固なチームプロセス、ヒューリスティックスから始まり適切に選ばれた奥の手の分析道具に移行する賢明な分析、そして最後に調査結果を統合して行動を喚起するストーリーにする取り組みから構成される。

いくら調査結果を上手に統合しても、利害関係者が動かなければ意味がありません。問題解決のためには相手を説得する必要があります。そのために、問題解決の各ステップを統合し、行動を喚起するためのわかりやすいストーリーを作成すべきです。

本書の7つのステップをマスターすれば、どんな複雑な問題でも解決できます。本書のケーススタディを読むことで、それを実感できるはずです。


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