Think COMMUNITY「つながり」こそ最強の生存戦略である(クリスティーン・ポラス)の書評

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Think COMMUNITY「つながり」こそ最強の生存戦略である
クリスティーン・ポラス
PHP研究所

 

本書の要約

どれだけ大きい(またはグローバルな)企業でも、コミュニティを作ることは可能です。コミュニティを最優先して着実に育てていけば、企業は従業員と顧客満足度をアップできます。コミュニティは人々を結びつけ、情報を共有し、自主性を発揮させ、敬意を払う環境を整え、率直さを実践し、意味を与え、個人の幸福度を高めてくれるのです。

コミュニティを構築するための6つの方法

仕事において、孤独は作業のパフォーマンスを低下させ、創造性を抑制し、推論や意思決定など実行機能面に悪影響を及ぼします。私たちの健康と仕事のためには、孤独の蔓延に迅速に対処することが不可欠なのです。 (ヴィヴェック・マーシー) 

孤独は仕事に悪影響を及ぼすことがわかっています。今回のコロナ禍で多数のビジネスパーソンが在宅勤務を余儀なくされ、孤独を感じたことがあるはずです。

Think CIVILITY(シンク シビリティ) 「礼儀正しさ」こそ最強の生存戦略であるで有名なジョージタウン大学マクドノー・スクール・オブ・ビジネス准教授のクリスティーン・ポラスが、その解決策であるコミュニティの重要性を本書で明らかにしています。

著者はコミュニティを「互いの幸福に配慮し合う個人の集まりである」と定義しています。コミュニティのメンバーはアイデア、興味、距離の近さ(たとえリモートであろうと)など、様々なことを共有することができますが、特徴的なのはお互いを思いやる気持ちです。仲間への小さな思いやりを積み重ねることで、コミュニティを強くし、組織を強化できるのです。

職場でコミュニティ意識を持つと、仕事への取り組み方が74パーセント向上し、81パーセントの確率で組織に留まることがわかりました。また、仕事における充実感、そして活気に満ち、生き生きとし、成長しているという感覚が83パーセント上昇していたのです。

著者は世界中の多様なコミュニティでコンサルティングを行う中で、企業やリーダーが最善のコミュニティを構築するために、以下の6つの方法があることを明らかにしました。
•情報を共有する
•人を解き放つ  
•尊重し合える環境を作る
•率直さを実践する 
•意義を与える  
•メンバーの幸福度を高める

一人で病気について悩みがちな患者は集団診療というコミュニティに加わることで、孤独感を覚えずにすみ、同じ問題を抱えた人々の経験談を聞くことができます。患者たちは互いに「大丈夫、あなたならできる。私ができたんだから、あなただってハードルを越えられる」と声を掛け合います。それは医師から言われるより、ずっと患者の心に響くと言います。

従業員用のイニシアチブ「アワー・ピープル・ディール」によって、IT企業のシスコは成長を続けています。同社の「ピープル・ディール」は、「会社が提供するもの」と「従業員に期待すること」を明確にし、「責任の共有」を確立するものです。ここから同社は従業員と会社が互いに恩恵を受け合う、双方向の関係性を生み出しました。

シスコには、従業員の好き嫌いの感情を用いたフィードバック方法があります。年に一度、従業員が自分たちの仕事、リーダー、チーム、会社の好きな点と嫌いな点に関するフィードバックをマネージャーに報告できます。

従業員がイヤだと思っていることについて話せるようにすることで、問題が大きくなる前に解決できます。従業員がどのように苦しんでいるかがわかれば、リーダーは迅速に解決策や援助を提供できる可能性が高まります。仕事の好きな点について語ることで、リーダーはスタッフの強みやスキルを生かせるようになります。

好き嫌いを明らかにすることでリーダーと従業員はお互いをさらに知ることができ、そこから信頼感とコミュニティの感覚が育まれます。日常的に自らの強みを活用できている従業員は、より生産的でクリエイティブであり、仕事へのエンゲージメントも6倍高いことがわかっています。

コミュニティが組織を強くする理由

コミュニティ内の恐怖心を軽減させるためには、「ミスして当然」とすることです。(クリスティーン・ポラス)

失敗への恐怖心を排除することで、組織に心理的安全性を育めます。失敗を恐れなくてもよい会社で働いている従業員は、自由にリスクに挑むことができ、失敗した際にも辱めを受けずにすみます。失敗を許容する文化が、従業員と会社を成功に導くのです。

グーグルでは、同じミスを防ぐために何をすべきかを文書にしています。彼らはその際、以下の4つの質問を行い、従業員と失敗体験を共有しています。
・どんなことが効果的だったか?
・どんなことが効果的ではなかったか?
・運に助けられたのはどの部分か?
・次はどんな違うやり方ができるか?
ここから従業員は学びと成長を得られます。失敗を挫折ではなく、成長と発展のためのチャンスと捉えることで、従業員のマインドセットをポジティブにできます

「尊敬」はグループに魔法のような効果を発揮します。著者とトニー・シュワルツは世界中の従業員2万人を対象にした研究を行いましたが、従業員の仕事の成果に、敬意ほど大きな影響を及ぼす行為はないということが明らかになりました。

リーダーから尊重されている従業員は、健康と幸福度が56パーセント、信頼と安全が1.72倍、仕事に対する喜びと満足が89パーセント、集中力が92パーセント高いと報告されています。リーダーから尊重されているメンバーが組織に留まる確率は、そうでない人たちより1.1倍高くなっていました。

また。敬意はエンゲージメントに明らかな影響を及ぼしており、リーダーからの敬意が大きいほど、従業員のエンゲージメントがアップします。リーダーから尊重されていると答えた人たちは、エンゲージメントが55パーセント高くなっていたのです。

礼儀正しさはパフォーマンス、コラボレーション、クリエイティビティ、個人の自発性、そして間違いを見つける力を向上させ、組織を強くします。

グーグルは社内の180のチームを調べた結果、重要なのはチームの顔ぶれではなく、メンバーがいかに交流し、作業を構築し、貢献するかだという結論を得ました。信頼と敬意に裏打ちされた心理的安全性をより強く感じている従業員は、仲間のアイデアを活用する傾向が強く、ほぼ退社することはなく、組織への定着率が高まっていました。

また敬意と安全を感じているチームにいる従業員は、会社により多くの利益をもたらし、上司から「有能」だと評価される頻度も2倍でした。

従業員を大切にしなさい。そうすれば彼らはお客様を大切にし、お客様はまた戻って来てくれるでしょう。(J・ウィラード・マリオット)

マリオットホテルの創業者のJ・ウィラード・マリオットが作り出したカルチャーが、現在も同社を成長させる一因になっています。創業者の従業員を大切にするという言葉が今も同社では唱え続けられています。

創業者の信念に基づき、マリオットとその経営陣は従業員のウェルビーイングを最優先しています。結果、エンゲージメントとロイヤルティへとつながり、さらにリテンションとより良いサービス、顧客の満足度、そして利益を向上させています。マリオットのデータでは、従業員のエンゲージメントが高いホテルほど、財務上高い成果が出ているとのことです。

マリオットはゲームアプリの「テイクケア・レベル30」を導入しています。このゲームを続けることで、従業員のウェルビーイングがアップします。
①同僚・・・従業員同士を結びつけるためのプログラム
・ハピネス・ヒーロー・カード→同僚のスキルから仕事のやり方まで、何かしらを認定するもの。
・バディ・アップ→チームビルディングのためのエクササイズ。
・オン・ザ・メンド→気分や体調が優れない人に解決策を提供するもの。
・ハイ・ファイブ・フライデー→従業員たちに、その週にあった「最高の瞬間」を90秒でチームに共有すること

②社会における会社の役割・・・多くのホテルが、自分たちのコミュニティの地域に根ざしたプロジェクトに取り組む。

どれだけ大きい(またはグローバルな)企業でも、コミュニティを作ることは可能です。コミュニティを最優先して着実に育てていけば、企業は従業員と顧客満足度をアップできます。コミュニティは人々を結びつけ、情報を共有し、自主性を発揮させ、敬意を払う環境を整え、率直さを実践し、意味を与え、個人の幸福度を高めてくれるのです。

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この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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