絆徳経営のすゝめ 〜100年続く一流企業は、なぜ絆と徳を大切にするのか?〜 (清水康一朗)の書評

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絆徳経営のすゝめ 〜100年続く一流企業は、なぜ絆と徳を大切にするのか?〜
清水康一朗
フローラル出版

本書の要約

絆徳(ばんとく)企業の最大の特徴は、働く幸せを実感する社員がいて、理念と経済合理性の両方を高いレベルで矛盾なく実現していることです。従業員と共に環境など社会をよくする経営を行なっていれば、リピーターが増加します。また、SNSやリアルでの口コミ効果で新規顧客も獲得できるようになります。

企業に成長をもたらす絆徳経営とは何か?

大事なことですが、時代が変化すれば「理想の会社像」も変化します。いち早くそれに「適応」した企業だけが生き残り、他社のモデルとなるレベルまでいち早く「体現」した企業だけが、この先の十年、三十年、百年と長く愛される企業へと進化していきます。 私たちはそんな企業を敬意も込めて「絆徳企業」と呼んでいます。清水康一朗

日本人が大事にしてきた和の精神で「絆」を結び、「理念」と「経済合理性」を両立していく――。そんな日本型の経営スタイルを「絆徳経営」と呼びます。

戦後の日本は西洋由来の利己的な成功哲学をよしとしましたが、これが日本社会に「分断」をもたらし、多くの弊害を生みました。今こそ、商売の理想である近江商人を見習い、お客様、社員、社会の三方よしを目指すべきです。顧客やパートナー、従業員との絆を結ぶこと、サステナブル経営を実践することで長期的に成長できるというのが著者の主張になります。

私たちが目指すべきは、太く短くの急成長企業ではなく、長きにわたって高収益を上げ続ける「持続可能な経営」です。何のために企業を経営しているのか?を深掘りし、自社のパーパスを明らかにした企業が、顧客から共感され、商品やサービスが売れるようになります。

また、最近のZ世代は、働きがいのある職場づくりやジェンダー平等に取り組んでいる企業を支持します。就職先もSGGs経営を実践している企業が選ばれています。このように人や環境にとって「よいこと」を好む傾向は、今後、若者だけでなく上の世代にも広がっていくはずです。

経営者は日本人が昔から大切にしてきた道徳観=「人や社会によいことをしたい」という気持ちを持ち、経営を行うべきです。この近江商人の経営哲学を実践したのが、近代資本主義の父と言われる渋沢栄一や鮎川義介になります。

絆徳哲学という概念は、鮎川義介がきっかけで始まりました。鮎川は日産自動車や日立製作所、日立金属、日本テレビ、日本水産、日本ビクターなど、現代まで続く数々の巨大企業の立ち上げにかかわり、日本の産業の礎をつくったことで有名です。

鮎川は中間層(豊かで幸せな“普通の人”たち)を増やすために、教育に力を注ぎました。 鮎川の経営哲学とは、経営者にとって中間層を増やしていくことが一番重要ということなのです。

破綻を免れるには、「雇用と教育」によって「中間層」を増やし、ピラミッド型の組織を「ダイヤ型」の組織へと進化させるしかありません。

以前の日本にはこの中間層が多く、企業の成長を支えていましたが、バブル崩壊以降、中流階級が消失し、下流シフトしています。中間層を増やすには、人を雇用し、教育して、仕事ができる人材を増やす必要があります。それができるのは企業経営者だけですから、「雇用と教育」は経営者の使命と言えるのです。トップが社員の幸せを願えば、組織はうまくいくのです。

5Kマーケティングを実践しよう!

リピート客がつかないのは、「顧客」との絆が分断されているから。社員がすぐ辞めてしまったり、幹部が育たないのは、「社員」との絆が分断されているから。SNSのフォロワーが増えないのは、「社会」との絆が分断されているから。まだ積極的に語っている人はごく少数しかいませんが、このように現代の企業を取り巻く課題は、ほぼすべて「絆の分断」によって生じているといっても過言ではありません。

顧客・社員・社会の三方との絆をしっかり結ぶことで、経営がうまくいくようになります。「絆」の強化こそが、SNSの時代の最強の資産で、三方よしの経営を行うことで、収益を改善できるようになります。

絆徳経営時代のマーケティングにおいては、相手が求める「企画」を立て、「きっかけ」を提供し、「関係」を構築し、「感動」を届け、「絆」をつくる「5Kマーケティング」を実践すべきです。

・5Kマーケティングの5つのステップ
①企画づくり(継続的な情報発信)・・・誰に何をどう届けるかを検討する
②きっかけづくり(無料体験や単品商品)・・・顧客と商品サービスを結び付ける
③関係づくり(フロントエンド)・・・対話を通して信頼関係をつくる
④感動づくり(ミドルエンド)・・・期待を上回る価値提供をする
⑤絆づくり(バックエンド)・・・継続商品によるリピートや、紹介につなげる

5Kマーケティングは人を基軸にビジネスを展開します。顧客に感動体験を与え、絆のための企画やきっかけをつくるのです

5Kマーケティングはの最初のステップは「よい企画」をつくることです。それをコンテンツやSNSで発信し、顧客との「絆」を結ぶことから始めましょう。

サブスクリプションサービスで安定的に「利益」を上げることが、令和時代の成功モデルだと著者は指摘します。サブスクで成功するためには、顧客に継続的に価値を届けて、絆を結ぶ必要があるのです。

感動とは、今までにない価値を受け取った瞬間に生まれます。

ビジネスにおける感動は偶然生まれるものではなく、企業努力をして、意識的につくりだすものです。顧客を感動させたいなら、顧客が価値を感じる体験を逆算から発想すべきです。「感動」という出口から逆算して、自社らしいストーリーを組み立てていくのです。

感動作りが上手な「ディズニーリゾート」では、情報発信もたくみです。足を運んだ顧客がSNSでその体験を発信するための仕掛けが随所にあります。キャスト(従業員)のホスピタリティの高さも感動体験になり、SNSで発信されることで、情報を受け取る人の顧客体験も高めています。顧客から褒められることで、キャストのモチベーションもアップします。

絆徳企業の最大の特徴は、働く幸せを実感する社員がいて、理念と経済合理性の両方を高いレベルで矛盾なく実現していることです。従業員と共に環境など社会をよくする経営を行なっていれば、リピーターが増加します。また、SNSやリアルでの口コミ効果で新規顧客も獲得できるようになります。このように絆徳経営と5Kマーケティングを実践することで、長期的な成長がもたらされます。


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