村山洋史氏の「つながり」と健康格差: なぜ夫と別れても妻は変わらず健康なのかの書評

習慣化

タバコを吸わない、アルコールを飲みすぎない、運動する、太りすぎないといったライフスタイルが健康や長生きに良いのは誰でも知っていますし、皆さんも納得できると思います。しかし、それら以上に長寿に影響するライフスタイルがあったのです。それが「社会とのつながりを持つこと」でした。(村山洋史)


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「行動の模倣」と「規範の広がり」が肥満を伝染させる

村山洋史氏の「つながり」と健康格差: なぜ夫と別れても妻は変わらず健康なのかがとても興味深い内容だったので、今日はこの本の書評を書きます。村山氏は健康でいたければつながりを強化すべきだと述べています。タバコやアルコールよりもよいつながりを持っている人の方が健康で長生きできることが、多くの調査結果から明らかになっています。

まずは、つながりと肥満についての有名な研究を見ていきましょう。ハーバード大学の元教授であるニコラス・クリスタキスは、アメリカのフラミンガム心臓研究という世界的に有名な調査のデータを用い、5000人以上の人が持つつながりを分析しました。その結果、驚くべき「肥満の秘密」が明らかになったのです。
●ある人Aが肥満だった場合、約50%の確率でその友達Bは肥満になる。
●Bの友達であるCは、Aと直接関係がなくても20%の確率で肥満になる。
●さらに、Cの友達であるDは、10%の確率で肥満になる。

AとBと直接関係がなくてもつまりAとC、Dは直接知り合いでなくても、A→B→Cは20%、A→B→C→Dは10%の確率で肥満が伝染していくのです。では、どうやって肥満は伝染していったのでしょうか?理由のーつは「行動の模倣」です。身近な人の行動を私たちはついつい真似てしまいます。これは脳科学でも証明されており、ミラーニューロンという脳内の神経細胞が関与しているのです。ミラーニューロンは、自分が何かの行動をした時だけでなく、自分が体験していなくても他者の行動を見ただけで活性化し、脳内で再現する特徴があります。肥満の友達が高力ロリーな料理を食べているのを見ると、同じような行動を取り、もりもりと食べてしまうのです。

もうーつの理由は「規範の広がり」です。肥満の友達がいることで、肥満に対する認識や態度が寛容になり、自分にも甘くなってしまうのです。この「伝染」は、喫煙でも飲酒などにも起こります。自分の悪い習慣をやめたければ、それを習慣にしている人と付き合わないようにするとよさそうです。

私は以前、アルコールに依存していましたが、11年前の断酒をしました。酒をやめるときに飲む人との距離をおき、飲まない人たちとの関係を強化しました。飲まない人との時間を増やすことで、酒のない環境をつくりだし、つらい断酒に成功できたのです。

この伝染は悪い習慣だけでなく、良い習慣にも起こります。笑いや幸福感といったポジティブな側面も伝染することがわかっています。笑顔が伝染するのもミラーニューロンのなせる技です。笑顔を習慣化するとナチュラルキラー細胞ががん細胞を攻撃することが明らかになりました。笑顔の人と付き合うことで、行動が模倣され、自分も笑顔になれ、がんのリスクを低下できるのです。

このように健康・不健康は、自分自身の行動や意志のみで決まるわけでなく、周囲の人々の振る舞いや考え方に知らず知らずのうちに影響を受けているのです。やることはとてもシンプルで、自分のためによいつながりを強化すればよいのです。

孤独になりがちな日本人はつながりを強化すべき!

戦後、私たち日本人の生活は西洋化し、糖尿病、高血圧、脂質代謝異常などの生活習慣病の患者が増加し、社会問題になっています。生活習慣病の予防・改善のためには、禁煙、適切な食習慣、定期的な運動、十分な睡眠や休養などが求められます、要はいかに健康的な生活を送るかがポイントになります。当然、病気を防ぐためには、個々が意識を高く持ち、実践していく必要があります。しかし、「いうは易く、行うは難し」で、多くの人がついつい食べすぎたり、飲みすぎたりしているはずです。仕事が忙しければ、睡眠時間も減ってしまいます。そんな時こそ、家族や友人の支えや励ましを求めるべきです。

一人の力ではなかなか実践できなくても、一緒に運動してくれる仲間や食事を気遣ってくれる家族などの存在はありがたいものです。つまり、生活習慣病の予防に重要となる健康的な生活習慣は、一人の力ではなく周囲の支えが重要になるのです。また、生活習慣病と同様、メンタルヘルスも昨今の公衆衛生上の課題です。例えば、うつ病などは日本では中高年でも発症頻度が高いといわれています。身近な人との心地よい関わりは心理的ストレスを軽減し、うつ病に対する予防効果があります。日頃から、心の健康を保っておくために、よい人間関係を築いておくことが重要です。このように、健康課題が「感染症の抑止」から「生活習慣病の予防」「良好なメンタルヘルスの維持」にシフトしてきている中で、つながりの重要性が高まってきたのです。

生活習慣病だけでなく、心の病であるうつも人間関係を強化することで改善できるのですから、人生100年時代を豊かにするためにも自分のつながりを見直してみましょう。

TEDで有名なハーバード大学教授のロバート・ウォールディンガーによる研究によると「良い人間関係は人を健康にし、幸せにする」ことがわかっています。ここから、ロバートは次の3つの教訓を提示しています。
①社会的なつながりは有益であり、一方で孤独は命取りになる家族や友人とのつながりの多い人は、少ない人に比べて幸せを感じやすく、健康で、長生きでした。
一方で孤独を感じている人は、中年期から健康問題を抱え、認知機能も低下しやすく、長生きできなかったそうで、まさに「孤独は毒」なのです。
②大切なのはつながりの数や有無ではなく、その質である50歳でその時の人間関係に満足している人は、80歳になっても健康的だったそうです。
人間関係がぎくしゃくしている中で暮らしていると、それだけで健康に悪い影響を与えます。結婚生活を例にとると、ケンカの絶えない夫婦関係だと、離婚することよりも不健康のリスクが高くなっていました。良い人間関係を持っていることは、加齢や病気による様々な影響を和らげてくれるのです。良好な関係があなたに幸せを運んできてくれるのです。
③良い関係性は体だけではなく脳も守ってくれる。他者と親密な関係性を持っている人は、そうでない人に比べて、80歳になっても記憶力が低下しにくいという結果でした。
良い関係があなたの脳を守ってくれます。相手を信頼し、社会的なつながりをしっかりと維持することが、健康や長寿に加え、幸福感や脳(認知機能)にも良い影響を与えます。ウォールディンガーは「良い関係性は記憶力の低下を予防する」と指摘しています。

世界的に孤独が問題になっています。特に日本では中年以降の男性がひとりぼっちになりやすいことがわかっています。一人暮らしは32%、社会的孤立は29%、孤独感は26%、それぞれ死亡率を上昇させており、性別によりこの影響に違いないことが示されています。概ね、死亡率が約1.3倍高くなるという調査もあります。孤独が長生きを邪魔するのですから、もし自分が孤独を感じているなら、今すぐ行動を起こし、様々なコミュニティに参加すべきです。

多様なメンバーが含まれるグループに所属していること、色々な背景の人とつながりがあることによって、普段自分の周りにいて接する人たちとは違う考えや話題に触れることができるのです。日常生活にいつもと違う風を通すような機会があることによって、メンタルヘルスが改善し、脳が刺激されて認知機能低下が抑制されていたと考えられます。主観的健康感に関していえば自分があまり関心を持ちにくいような健康情報を教えてもらう機会となっていて、そのために主観的健康感に良い効果があったのかもしれません。

自分とは異なる人脈をつくることで、様々な情報を得られます。私は今はサラリーマンをやめて、複数の企業の役員やアドバイザーを仕事にしていますが、いくつもの会社にお邪魔することで、多様なつながりをつくれました。そこから経営やトレンドだけでなく、健康情報も得ることで、脳と体の健康を維持しています。

また、サードプレイス・ラボというコミュニティや茶道のイベントにも定期的に参加しています。毎月経営者やコンサルタントなどその道のプロの話を聞くことで脳が活性化します。2つのコミュニティのおかげで、参加者とのつながりも強化でき、自分の人生を豊かにできています。笑顔の効果やうつにならないための方法論もこのサードプレイス・ラボで学び、実践できるようになりました。ソーシャルメディアをチェックすれば、日々多くのイベントが開催されています。知識や体験を得ることを目的にするだけでなく、自分の健康のために積極的にコミュニティに参加しましょう。人とのつながりによって、私たちはより豊かに、より幸せになれるのです。

まとめ

喫煙、飲みすぎ、肥満よりも、人とのつながりが私たちの健康に大きな影響を与えることが明らかになりました。「つながり」が体を健康にするだけでなく、脳の退化を防ぎ、心を豊かにしてくれます。家族、職場、地域だけでなく、多様な人脈を築くために、様々なコミュニティに参加し、人とのつながりを広くしましょう。幸せになるためには、人とのつながりが大切であることを気づかせてくれた一冊で、皆さんに読んでもらえたらうれしい限りです。

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