脳はライブワイヤードとして日々変化する?脳の地図を書き換えるの書評

brain figurine

脳の地図を書き換える 神経科学の冒険
デイヴィッド イーグルマン
早川書房

本書の要約

脳に送る情報量が増えると、脳内の地図はより広い領域を形成することになります。脳は私たちの思考や行動を制御する重要な器官であり、情報の処理と記憶のために活動しています。ライブワイアリングの特徴を理解することで、脳の働きをより良くできます。年齢に関係なく、脳を健康な状態に維持することができるのです。

脳の領土地図は書き換えられる!。

脳の領土地図が書き換われば、それがあなたの課題遂行能力に結びつく。(デイヴィッド・イーグルマン)

デイヴィッド・イーグルマンの脳の地図を書き換える 神経科学の冒険を再読しています。今日は前回の記事をフォローする形で本書の魅力を伝えたいと思います。

スタンフォード大学の神経科学者であり、「脳の可塑性」という講座を教えるデイヴィッド・イーグルマンは、脳の領域が互いに競い合い、独立していることを指摘します。彼によれば、脳は日々変化し、自らの陣地を広げようとしていると言うのです。

脳の機能や体積が年齢とともに低下することは、過去の多くの研究で示されてきましたが、最近の研究では、脳の変化は個人によって異なることが明らかになってきました。 例えば、ハーバード大学の研究では、年を取るほど脳が活性化する条件があると報告されています。つまり、年齢を重ねることで脳が強くなる可能性があるのです。

このような結果は、私たちの脳が柔軟性を持ち、常に変化し続ける能力を持っていることを示唆しています。 脳の変化は、単純な細胞の減少だけではなく、神経伝達の経路や結合の再編成など、さまざまな要素によっても引き起こされます。したがって、脳の機能は年齢とともに低下するというよりも、個人の生活環境や生活習慣、学習や新しい経験などの要素によっても大きく影響を受けるのです。

また、脳は代償能力を持っているため、一部の神経細胞が失われても他の神経細胞がその機能を補うことができます。これは、脳が柔軟に変化し、新たな経路やつながりを作り出す能力を持っていることを示しています。 したがって、年を取っても脳が活性化する可能性があることは希望を持たせるものです。

脳は私たちの体の一部を失った場合にも、その領域を乗っ取ろうとします。たとえば、視覚を失った場合、脳は隣接する領域を使って視覚情報を処理しようとします。脳は自分の領域を守るために、柔軟に変化しようとしているのです。

また、脳は夢を通じても自らの可塑性を示しています。夢を見ることで、脳は新たなつながりや情報を得ることができます。眠っている間は、視覚野の活動が低下するため、その領域が他の機能に乗っ取られる危険性があります。しかし、夢を見ることで脳はその危険性を低くし、自らの領域を保護しているのです。

私たちの脳は、新たな知識や経験を通じて常に変化しています。例えば、好きなレストランの場所や上司に関する噂話、新曲など、私たちが耳にする情報に脳は反応します。このような刺激を受けることで、脳は自らの領域を拡大し、柔軟に対応しているのです。

脳の可塑性についてのデイヴィッド・イーグルマンの研究は、私たちが学び続けることの重要性を示しています。年齢や記憶力の低下に自信を失っている人も多いかもしれませんが、脳は常に変化し、新たな領域を開拓しようとしています。私たちは脳の可塑性を活かし、効果的な学び方を見つけることができるのです。

脳内地図は、常に経験や目標に反応し、何度も書き換えられています。これがその人が持つ脳構造に影響を与え、絶えず変化し続ける理由なのです。 私たちの脳は、私たちの経験や目標に応じて常に変化しています。これは、私たちが新しいことを学び、新しいスキルを習得するたびに、私たちの脳の構造が変わるからです。

入力に応じて脳が自らを再編成する。とはいえ、パイプラインに流れ込んでくる情報がすべて等しく重要なわけではない。脳にとっては、その持ち主がどれくらいの時間を費やしているかがすべてだ。

ヴァイオリニスト、イツァーク・パールマンの驚くべき物語があります。ある日のコンサートが終わった後、彼を熱心に支持する常連の観客が彼にこう言ったそうです。「あなたのように演奏できるなら、私は全てを捧げる価値があるでしょう」。

彼はその質問に淡々と応えました。「私は全てを捧げてきました」 パールマンの日課は厳格で、毎朝5時15分にベッドから身体を引きずり出し、シャワーを浴び、朝食を摂るのです。その後は午前中の練習に4時間半を投じ、昼食の後に運動をし、さらに午後の練習に4時間半を費やします。これらの訓練は毎年、一日も欠かさず行われ、コンサートがある日だけは午前の練習だけになります。

音楽家の脳は、訓練によってその形状が変化します。この変化は画像化することで明らかになります。特に、運動野の手に関連する部分を注視すると、音楽家の脳には一般人の脳には見られない特殊な折り畳みがあり、これはギリシャ文字の「Ω(オメガ)」の形に似ています。何千時間もの練習を積み重ねることで、音楽家の脳は物理的な形状を変えるのです。 しかしながら、それだけではありません。脳は音楽家に多くの教訓を教えてくれます。パールマンの話は、その最良の例かもしれません。

脳はライブワイヤードとして日々進化する。

私たちはライブワイヤードな生物だ。脳内のニューロン(もっと広くいえば体内の全細胞)は生存のための果てしない戦いの中にいる。

自分にとって大事なことに集中し、目標を達成したり、報酬を得ることで、脳は変化します。著者は脳の変化を表現するために、”ライブワイヤード(livewired)”という言葉を提唱しています。この言葉は、脳を単純なハードウェアとソフトウェアの概念に分けて考えるのではなく、より一層進んだ視点から「ライブウェア」、つまり生きているハードウェアとして脳を理解するという意味合いを持っています。

脳は学習したり新たな体験をしたりすることで、それに対応する領域を日々拡大しています。脳は外部からのデータを取り込み、臨機応変に自らの配線を変更し、それに適応するのです。脳にデータが送られれば、脳はそれに反応し、自らの配線を変更し、新たな行動を行おうとします。 脳はライブワイヤードとして日々変化しているのですから、自分のやりたいことを明確にし、脳のその領域を鍛えることで、私たちは結果を出せるようになるのです。

驚くべきことに、事故や先天的な異常で五感や身体機能の一部が損失した人々は、その機能配置を一定の範囲で再構築する能力を持つようです。さらに、脳の一部が欠如していたとしても、残りの脳部分が情報処理全体を適応的に再配分する能力があると言われています。そのため、脳の半分が欠けていても日常生活に支障をきたさない人も存在するのです。

脳の神経回路が常に変化し続けることは、脳卒中や他の脳のダメージからの回復にとって大きな希望を与えてくれます。脳の腫れが治まった後、真の回復作業が始まるのです。 この回復作業は数ヶ月から数年にわたり、大脳皮質が自己を再編成するという形で行われます。

この過程を通じて、失われた機能を回復することができる場合もあります。 脳の神経回路が再構築される過程では、新たな接続が形成され、失われた機能を補完するための新たな連携が生まれます。これにより、脳は時間をかけて回復し、機能を再建することができるのです。

言語技能を喪失したケースでは、その後の回復が見られることが少なくありません。ほとんどの人の言語機能は左半球に局在しているため、左半球に卒中を起こすと発話や言葉の理解ができなくなります。しかし、しばらくすると言語機能が戻り始める場合がしばしばあります。

言語技能を喪失することは、人にとって非常に困難な状況です。言語は私たちがコミュニケーションを取るための重要な手段であり、日常生活において欠かせない存在です。しかし、幸いなことに、言語喪失は必ずしも永遠ではありません。

ほとんどの人の言語機能は左半球に局在しているため、左半球に卒中を起こすと、言葉を話すことや理解することができなくなることがあります。これは失語と呼ばれる状態であり、言語機能の障害が原因です。しかし、驚くことに、しばらくすると言語機能が戻り始めることがあります。

脳内の領土を保持できるかどうかは活動の度合いにかかっていることである。土地を失わずにいるためにはつねに活動する力が必要だ。入力が減少したらニューロンは接続の仕方を変えて、活動が起きている場所を探す。

脳内の領域を維持するためにはニューロンの活動の度合いが非常に重要であることがわかっています。脳は我々の情報を処理し、記憶を形成する中心的な器官であり、その全ての機能はニューロンの活動によって実現されています。

ライブワイヤリングには以下の7つの特徴があると著者は指摘します。
①世界を反映する。
脳は自らを入力情報に適合させる。

②入力情報を受け入れる。
流れ込んでくる情報を脳は何であれ活用する。

③どんな装置でも動かす。
たまたまどんなボディプランの内部にいようと、 脳はその体を操る方法を学習する。

④大事なことを保持する。
自分にとって何が大事かに基づいて脳は資源を配分する。

⑤安定した情報を閉じこめる。
脳領域間には柔軟性に差があり、それは入力情報の種類に応じて決まる。

⑥競うか死ぬか。
脳領域の生存闘争から可塑性が生まれる。

⑦情報を求める。
脳は世界に関する内部モデルを構築し、予測が間違っていたらそのつどそれに合わせて自らを修正する。

脳に送る情報量が多ければ多いほど、脳内の地図で広い領域を得ることになります。脳は私たちの思考や行動を司る重要な器官であり、情報の処理と記憶のために活動しています。ライブワイアリングの特徴を押さえることで、脳の働きをよりよくできます。私たちはインプットを続けることで、いくつになっても脳を良い状態に保てるのです。


 

この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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