チャットGPTvs.人類 (平和博)の書評

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チャットGPTvs.人類
平和博
文藝春秋

本書の要約

生成AIを最大限に活用し、正しい答えを得るためには、専門知識と高度なスキルが必要です。生成AIは、私たちが質の高い「問い」を設定し、それに対する質の高い「答え」を得るために役立つことができます。しかし、生成AIの進化によって、人々が自身の仕事を奪われる可能性も考えられます。 そうならないためには、問いの力を養う必要があります。

生成AIは「もっともらしいデタラメ」を生み出す可能性がある!

生成AIの「もっともらしいデタラメ」は、社会に現実的なインパクトを及ぼす。(平和博)

Chat GPTなどの生成AIは、文章のつながりから次の言葉を選び出す技術を持っています。この技術は、純粋に機械的な処理を通じて達成されますが、生成AIが文章の意味を理解したり、情報が真実かどうかを判定することを意味するものではありません。

生成AIは、確率的な方法に基づいて操作を行い、「もっともらしい」答えを生成します。しかし、生成AIは大量の学習データに基づいて訓練されているため、出力されるのは無造作なでたらめではなく、「もっともらしいでたらめ」でしかないのです。私たちはここに留意し、生成AIを使う必要があります。この特性を理解しないと簡単に騙されてしまう可能性が高まります。

実際に、ChatGPT-2を用いた調査により、人々が生成AIに騙される可能性が明らかになりました。この調査では、本物のレポートと架空のレポートを半々に割り当て、合計560本のレポートを用意しました。これらのレポートの中から、それぞれ56本ずつを計10人のサイバーセキュリティ専門家に提示し、判定した結果、架空のレポートが280本存在していることがわかりました。驚くべきことに、専門家の中には220本(78.5%)の架空のレポートを「本物」と誤って判定していたのです。

生成AIが再パッケージ化した情報が元の情報より劣化すると、インターネット上の情報品質が低下する可能性があります。これは、情報の信頼性や精度の低下につながり、混乱を招く可能性があります。したがって、AIによって生成された情報を利用する際には、情報の信頼性を確認する手段や、人間の判断を組み合わせることが重要です。

AIの能力を最大限に活用するためには、AIの限界を理解し、その出力を慎重に扱う必要があります。AIはツールであり、私たち人間がその使用をコントロールし、判断する役割を果たすことが重要です。

生成AIは非常に便利なツールですが、常に情報の正確性と品質に注意を払う必要があります。 生成AIを利用する際には、次の3つの点に留意するようにしましょう。

①情報の信頼性を確認する手段を持つ
生成AIが提供する情報を鵜呑みにせず、情報源の確認や他の信頼できる情報との照らし合わせなど、情報の信頼性を確認する手段を持つことが重要です。あたかも正しそうな情報に騙されないためには、自分の知識や体験を向上する必要があります。

②専門家やメディアの判断を組み合わせる
AIの出力を受け取った場合でも、専門家やメディアの見解もチェックし、AIの回答を検証や補完することが重要です。人間の洞察力や専門知識は、AIが持つ能力と組み合わせることで、より信頼性の高い情報を得ることができます。

③教育と意識の向上
生成AIに関する情報やその特性について学び、その利用に関する教育と意識の向上を行うことが大事になります。AI技術は進化し続けていますので、最新の情報にアクセスし、常に学習と理解を深めることが求められます。

生成AIが進化する中で、ファクトとフェイクの区別がますます困難になっています。私たちは真実の情報を入手することに対して意識を向けなければなりません。Chat GPTやBardの普及により、誤った情報が簡単に広がり、信憑性が不明瞭な情報が日常的に私たちに降りかかってきます。そのため、私たちは情報を受け取る際には慎重であり、ファクトチェックの重要性を理解する必要があります。

フェイクニュースに黙らされないために必要なこと

コンテンツ生成AIの主導になるとすると、バイアスの問題はさらに新たな局面に入る。「AIが選ぶ」から「AIが作る」への転換だ。

AIがコンテンツ生成の主役になると、バイアスの問題は新たなステージに進みます。AIがコンテンツを選ぶのではなく、コンテンツを生成するようになれば、読者は情報の「フィルターバブル」を超えて、「真空パック」のような情報の包み込みに直面することになります。 これは、生成段階でのパーソナル化により、アルゴリズムのバイアスがニュースフィード全体の問題から、個々のコンテンツレベルのバイアスへと変化するためです。

検索と連動した生成AIなら、リアルタイムでネット上のフェイクニュースも取り込んでしまう。生成AIから生成AIへの伝言ゲームで、フェイクニュースのエコーチェンバー(反響室)が作られ始めている。

このような状況下で、読者はメディア空間のバイアスや歪みをどのように修正すればよいのでしょうか? この問題に対する一つの解答は、エンドユーザーがAIが生成するコンテンツに対する理解と批判的思考を持つことです。情報の生成にどのようなプロセスがあるのか、どのようなデータが使用されているのか、そしてそれらがどのように自分の見える情報空間を形成するのかを理解することが重要です。

また、生成AIのバイアスを理解し、それに対して警戒する能力も欠かせません。AIの判断は、学習データに含まれるバイアスを反映することがあります。それを認識し、それに対する適切なフィルターを持つことで、私たちはAIが提供する情報の価値とその限界を理解することができます。 さらに、複数の情報源から情報を取得し、それらを比較検討すべきです。

AIの進化により、一つの視点に頼るだけでなく、より広範かつバランスの取れた視点を持つことが可能となりました。この能力は真実に近づくための一つの道となります。 特にメディア企業においては、AIがコンテンツを生成する際にバイアスを排除するためのガイドラインを作成することが重要です。

これには、AIが学習するデータの選択、AIが生成するコンテンツのレビュー、AIが生成したコンテンツをユーザーに説明することなどが含まれます。 AIがコンテンツ生成の主役となる時代において、私たちはAIの能力を活用しつつも、その限界を理解し、バイアスを排除するための努力を続ける必要があります。それを怠れば、AIに判断を頼ることで人としての思考力を失ってしまいますので、慎重な対応が求められます。

したがって、私たちがAIと協働する時代においては、バイアスを排除した有益なコンテンツを提供するためのガイドラインの整備や、私たち自身の思考力を保つための努力が求められます。AIの持つ潜在力を最大限に引き出しつつ、真実に基づいた情報を提供することが重要です。

生成AIの進化には期待と潜在的なリスクが存在することは間違いありません。フェイクニュースのエコーチェンバーを防ぎ、信頼性の高い情報環境を構築するために、努力をしなければならない時代を生きているのです。フェイクニュースを鵜呑みにせず、拡散させないことを意識しましょう。

生成AI時代に、問いの力が重要な理由

AIは思考はできないが、ある程度手順の決まった作業の自動化、高速化はずば抜けている。そのため、仕事の内容によって影響の濃淡もある。調査によると、科学的スキル、批判的思考(クリティカル・シンキング)のスキルは影響を受けにくい一方で、プログラミングやライティング(文章作成)のスキルは極めて影響を受けやすい、という。

ゴールドマン・サックスは2023年3月26日付で、生成AIの影響に関するレポートを発表しました。このレポートは、欧米のデータを基にしており、現在の職業の約3分の2が生成AIによって部分的に自動化され、4分の1が代替される可能性があることを指摘しています。さらに、世界全体では約3億人の常勤職が自動化の可能性にさらされると指摘します。

このレポートでは、自動化の可能性が高いとされる職種として、オフィス・事務サポート、法務、建築・エンジニアリングなどが挙げられています。生成AIは、これらの職種において重複した作業やルーチンなタスクの自動化を可能にし、効率の向上やコスト削減をもたらすとされています。

AIの発展により、プログラミングや文章作成のスキルが影響を受けやすい理由はいくつか考えられます。AIは大量のデータを学習しており、それに基づいて自然な文章を生成することができます。したがって、AIが文章作成を担当する場合、人々が実際に書く必要がなくなる可能性があります。このような場合、文章作成のスキルを持つ人々の需要が減少し、影響を受けやすくなるのです。

同様に、プログラミングの場合もAIの進化は大きな影響を与える可能性があります。AIは既存のプログラムを学習し、新たなプログラムを生成することも可能です。そのため、一部のプログラミングの作業はAIによって代替される可能性があります。

これにより、プログラミングのスキルを持つ人々の需要も変化し、影響を受けやすくなるのです。 したがって、AIの進化による社会的な変化に対応するためには、個々のスキルセットを見直し、AIが苦手とする分野や付加価値を持つ領域に注力する必要があります。

特に科学的スキルや批判的思考のスキルは、AIに代替されにくい特徴ですので、これらのスキルの習得や強化が重要となります。一方で、AIと協働する能力やAIが苦手なクリエイティブな分野にも注目することが求められます。

ただし、このレポートの指摘はあくまで予測であり、将来的な技術の進展や社会の変化によっても変動する可能性があります。また、生成AIが普及する中で、新たな職種やスキルが生まれる可能性もあります。過去の歴史を見れば、新しいテクノロジーによって、新しい職種が生まれてきたことがわかります。

生成AIを使いこなすポイントのーつは、回答の出来上がり、すなわち成果をイメージできるかどうかだ。文章でも、画像でも、楽曲でも、一定レベル以上の回答は、それを具体的にイメージし、逆算してAIに指示を出すことでしか手にできない。「答え」を想定し、そのクオリティを評価できるかどうか。それが、生成AIから満足のいく「答え」を得るためのカギになる。

生成AIは、私たちの生活やビジネスの様々な側面に大きな影響を及ぼしています。しかし、その力を最大限に引き出すためには、深い専門知識と高度なスキルが必要です。これは、質の高い「問い」を設定し、それに対する質の高い「答え」を求めることに関連しています。

つまり、専門家だけが有効に生成AIを操作できるわけではなく、そのようなスキルと知識を持つプロフェッショナルの重要性が増しているのです。 AIの進化により、手間取る作業や退屈な仕事が自動化され、置き換えられています。

これによりプロフェッショナルは、より重要な仕事に集中できるようになり、生産性を向上させることができます。彼らは、内容の作成から最終的な品質管理まで、エディターやプロデューサーのような役割を果たします。

しかし、生成AIの使用は、その能力と制限を理解し、それを適切に人間の判断と組み合わせることを必要とします。生成AIは便利なツールですが、それはあくまでツールであり、最終的な決定は我々人間が行うべきです。AIに仕事を奪われないためには、問いの力を鍛えるべきです。


この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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