食欲人(デイヴィッド・ローベンハイマー, スティーヴン・J・シンプソン)の書評

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食欲人
デイヴィッド・ローベンハイマー, スティーヴン・J・シンプソン

本書の要約

超加工食品が私たちを肥満にさせています。健康な食生活を送るためには、超加工食品の摂取を控え、バランスの取れた食事を心がけることが重要です。タンパク質や繊維を豊富に含む食品を選び、食欲をコントロールすることで、健康な体重を維持することができるのです。

超加工食品とは何か?

「超加工食品」と呼ばれる分類の食品の摂取量が増えると、肥満が増えるのだ。 そして肥満が増えるほど、糖尿病や心疾患、脳卒中、特定の種類のがん、早死が増えるのは周知のとおりである。(デイヴィッド・ローベンハイマー, スティーヴン・J・シンプソン)

超加工食品は、ペンキやシャンプーと同じように、工業製品です。しかし、ペンキやシャンプーが消費者の装飾的な美学や衛生観念に訴えるために設計されているのに対し、超加工食品は消費者の味覚に訴えるために設計されています。

超加工食品は、人間の食事をよくすることではなく、製品をより効率的に製造したり、消費者への訴求を高めたりすることにあります。また、これらの産業は、ただ問題や関心を共有するだけでなく、製造上の問題を解決するために用いられる原料や工程までもが共通していることが多いです。

たとえば、超加工食品の製造には、大量の砂糖、脂肪、塩、添加物が使われます。これらの成分は、人間の味覚を刺激し、食欲を増進させます。しかし、これらの成分は、健康に害を及ぼす可能性もあります。たとえば、砂糖は肥満や糖尿病の原因となり、脂肪は心臓病や脳卒中の原因となり、塩は高血圧の原因となります。添加物は、アレルギーや発がん性のリスクを高める可能性があります。

超加工食品の製造は、現代の食品産業において一般的なプロセスとなっています。これらの食品は、大規模な機械によって製造され、ホールフードを成分ごとに分解しています。主な原材料は、工業生産された高収量作物や畜肉の挽肉やすり身です。これらの原材料は、加水分解や水素化などの化学的修飾を受けることもあり、他の物質と組み合わせられることもあります。

加工食品の製造過程では、さらに工業加工が行われることもあります。これには前揚げ、押し出し、成形などの方法が使われます。また、品質保持期間を延ばしたり、食感や風味、匂い、外観を変えるために、化学添加物が使用されることもあります。しかし、これらの添加物の多くは農産物由来ではなく、石油などの産業に由来する化学物質です。 超加工食品の製造には、いくつかの問題が存在します。

超加工食品が肥満をもたらす理由

工業的に製造されたトランス脂肪が、現在あるすべての脂肪の中で最も危険だという点で、健康管理の専門家の意見は一致している。

世界保健機関(WHO)の推計によれば、トランス脂肪の摂取が原因で、毎年世界で50万人以上が心臓病で亡くなっている。この数字は驚くべきものであり、トランス脂肪の問題の深刻さを示しています。

2005年のデンマークをはじめ、アイスランド、オーストリア、スイスなど一部の高所得国でトランス脂肪が禁止されているにもかかわらず、これだけ多い人数が心臓病で亡くなっているのは問題です。

アメリカも、2018年になってようやくトランス脂肪の使用を禁止しました。このような動きは非常に重要であり、他の国々にも広まってほしいと思います。

実際、ニューヨークとデンマークで行われた研究は、トランス脂肪の使用禁止によって心臓病による入院と死亡が大幅に減少したことを示しています。これは、トランス脂肪の有害性を改めて証明する結果です。

しかし、トランス脂肪は今も多くの低中所得国と一部の高所得国の食品の重要な一角を占めています。これは、食品の加工や調理の際にトランス脂肪が使用されることによるものです。特にファーストフードやスナック菓子などの加工食品に多く含まれています。 このような状況を改善するためには、国際的な取り組みが必要です。

世界保健機関(WHO)がトランス脂肪の排除を目指しているように、各国が積極的に取り組む必要があります。食品業界も、トランス脂肪の使用を減らし、代替品の開発に取り組むことが求められます。 また、消費者の意識向上も重要です。

トランス脂肪の摂取が健康に与える影響についての情報を広めることや、食品の表示に関する規制の強化などが必要です。 トランス脂肪の問題は深刻であり、多くの人々の健康に影響を与えています。国際的な取り組みと消費者の意識改革を通じて、トランス脂肪の使用を減らし、健康な食事環境を実現することが重要です。

超加工食品の摂取が健康に与える影響について、ユーリとカルロスの研究結果が明らかにしました。彼らは被験者を5つのグループに分け、食事に占める超加工食品の比率に注目しました。

グループ1の人々は、日常の食事の33%が超加工食品でした。これは最も比率の低いグループですが、それでも食事の約3分の1が超加工食品であることになります。一方、グループ2は49%、グループ3は58%、グループ4は67%、そしてグループ5は驚くべきことに81%もの超加工食品を摂取していました。 これらの比率はグループ全体の平均値であり、グループ5では81%を超える人が多かったことを意味します。ちなみに、全米平均では食事の57%が超加工食品でした。

被験者の食事の半分以上が超加工食品であることがわかります。 さらに、食事の超加工食品の比率がグループ1からグループ5へと上昇するにつれて、タンパク質の摂取カロリーに占める割合は18.2%から13.2%まで低下していました。

つまり、超加工食品の摂取が増えるほど、タンパク質の摂取が減少していったのです。 この研究結果からわかるように、食事に占める超加工食品の比率が高くなると、健康に悪影響を及ぼす可能性があることが示唆されます。

タンパク質の摂取量が減少することは、栄養バランスの偏りや筋肉の低下などの問題を引き起こす可能性があります。 したがって、バランスの取れた食事を心掛けることが重要であり、超加工食品の摂取を制限することは健康維持にとって有益であると言えます。適度なタンパク質摂取を含む栄養バランスのとれた食事は、健康を保つために欠かせない要素です。

人間もタンパク質比率の変化によって簡単に操作されることがわかった。タンパク質比率は、脂肪と炭水化物の摂取に大きな影響を与える。食事中のタンパク質が少なすぎれば、太るまで過食するほどの影響だ。

超加工食品には、タンパク質が脂肪と炭水化物によって薄められる傾向があります。この結果、本来脂肪と炭水化物の摂取を制御するはずのメカニズムが圧倒され、タンパク質欲が生じます。そのため、人々は必要以上に食べてしまい、健康によい摂取量を超えてしまうのです。

また、超加工食品を食べて太る理由は、繊維不足にも関係しています。工業的に生産された大量の作物は、食品加工機械によってデンプンと糖に変換される際、繊維が取り除かれてしまいます。この取り除かれた繊維は、食品に戻ることはありません。

食物から繊維を取り除くことは、食欲のブレーキを切ってしまうようなものです。 このような状況から、近年の肥満と超加工食品の関係が明らかになります。超加工食品は、タンパク質の薄まりと繊維不足によって、食欲を抑制するメカニズムを妨げてしまいます。

その結果、人々は過剰に食べてしまい、肥満のリスクが高まるのです。 健康な食生活を送るためには、超加工食品の摂取を控え、バランスの取れた食事を心がけることが重要です。タンパク質や繊維を豊富に含む食品を選び、食欲をコントロールすることで、健康な体重を維持することができます。また、食品の製造過程や成分表示を注意深く確認することも大切です。

超加工食品に見られるように、タンパク質が脂肪と炭水化物によって薄められると、タンパク質欲が、本来脂肪と炭水化物の摂取を制御するはずのメカニズムを圧倒してしまう。 その結果、必要以上に、つまり健康によい摂取量以上に食べすぎてしまうのだ。

人間が過度に加工された食品を摂取し、その結果として肥満になる理由の一つは、食物繊維の不足にあると考えられます。産業的なスケールで製造される作物は、食品加工過程でデンプンや糖に変換され、その際に食物繊維が大幅に減少します。

そして一度減った繊維が食品に戻ることは、ほとんどありません。食品から食物繊維が取り除かれるということは、食欲を抑制する力を失うことを意味します。これを考えると、近年の肥満問題が超加工食品と密接に関わっている理由が見えてきます。

また、タンパク質は価格に大きな影響を与え、タンパク質が多いほど製品の価格は高くなります。しかし、逆に炭水化物は価格を下げる効果があり、炭水化物が豊富な食品ほど、価格が安くなる傾向があります。このため、加工食品の製造者はコストを抑えるためにタンパク質を削減し、炭水化物と脂質を多く含む食品を作る傾向にあります。

そして、このような食品は消費者の食欲を刺激し、過食を引き起こす可能性があります。 食物繊維が少ない食品は、美味しく感じられる傾向にあります。脂肪、炭水化物、タンパク質、塩などの栄養素は食品に風味を与える重要な要素であり、食物繊維の比率が低いほど、食品はより美味しく感じられます。しかし、食物繊維は食物の消化を遅らせ、満腹感をもたらすという重要な役割があります。

そのため、食物繊維が少ない超加工食品を摂取すると、満腹感が得られずに過食してしまうことがあります。さらに、食物繊維は腸内環境を整え、便秘を防ぐ効果もあります。そのため、食物繊維が不足すると便秘になりやすくなります。 これらのことから、超加工食品は食物繊維が不足しているため、肥満を引き起こしやすいと言えます。逆に、食物繊維の多い食品を意識して摂取することで、より健康的な食生活を送ることができるでしょう。


 

この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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