すぐやる脳(菅原道仁)の書評

A pair of headphones that are gold and red

すぐやる脳
菅原道仁
サンマーク出版

すぐやる脳(菅原道仁)の要約

「とりあえず始める」という行動が、脳のやる気スイッチを押す鍵となります。思考や計画だけでなく、実際に体を動かし行動を起こすことが、やる気を生み出す直接的な源泉なのです。自己暗示をかける、スモールステップに分け、行動する、ドーパミンを分泌させるという3つのステップですぐやる自分になれるのです。

ドーパミンコントロールで先延ばしがやめられる??

「脳が怠惰であること」は非常に理にかなったことなのです。(菅原道仁)

私たちは「怠惰」なのではないと脳神経外科医の菅原道仁氏は指摘します。実は、エネルギーを節約しようとする本能が有るため、私たちは先延ばしを選択すると言うのです。「すぐに行動しない」「動かない」「考えない」といった傾向は、体力を温存するための自然な反応です。(菅原道仁氏の関連記事)

脳は体重の2%の重さしかないのにもかかわらず、人間の体の中で最もエネルギーを消費する器官です。1日必要なエネルギーをなんと20%も使用するため、休息を求めるのは当然のことと言えます。

では、どうすれば「すぐに行動できる」ようになるのでしょうか。

「やりたくない脳」を「やりたがる脳」に変えるには、ドーパミン・コントロールしかありません。

鍵を握るのは「ドーパミン」というホルモンです。仕事、家事、勉強など、始めるまでに時間がかかることがよくありますが、いったん始めると急にエンジンがかかり、一気に進めることができます。これこそがドーパミンの力なのです。

重要なのは、ドーパミンは「行動を始めてから」分泌されるということです。分泌が始まると、さらにやる気が出てきます。この現象は「作業興奮」と呼ばれています。 つまり、行動を起こすことが大切なのです。最初の一歩を踏み出せば、脳内でドーパミンが分泌され、自然とモチベーションが高まっていきます。

ドーパミン・コントロールは、先延ばし癖を克服し、行動力を高める効果的な方法です。この手法を活用することで、私たちは自分の脳内化学物質をうまく操り、生産性を向上させることができます。

ドーパミン・コントロールの具体的な方法は、3つのステップから成り立っています。これらのステップを順番に実行し、繰り返すことで、行動を起こしやすくなる習慣を身につけることができます。

ステップ①自己暗示をかける
自分自身に対して肯定的なメッセージを送ることで、脳に行動の準備を促します。例えば、「私はこの仕事をうまくこなせる」「今日は集中して取り組める」といった言葉を心の中で唱えます。この自己暗示により、脳内でポジティブな反応が起こり、行動への抵抗が少なくなります。

優柔不断で有るという自分のレッテルを外し、すぐやる自分をイメージしましょう。自分のへの期待値を高めることでドーパミンがより多く出るようになります。

ステップ②スモールステップに分けること
大きな目標や複雑な課題は、時として圧倒されて手をつけられなくなることがあります。そこで、その目標や課題を小さな部分に分割します。このブログでもお馴染みのサラミスライス法を行うことで、目標を達せきでいます。

私もこの書評ブログを書く際、まずは本を読み、メモを取り、アウトラインを作る、書き始めるというステップを意識しています、これにより、各ステップが達成可能に感じられ、行動を起こしやすくなります。

ステップ③ドーパミンを分泌させる
目標を達成できると脳内で快楽物質であるドーパミンが分泌されます。例えば、タスクの一部を完了したら、「よくやった」と自分を褒めるのです。この小さな達成感が次の行動へのモチベーションとなります。

ドーパミンは、実際の報酬を得る前にも機能することがあります。これは私たちのモチベーションや行動に大きな影響を与える重要な特性です。この性質を理解し活用することで、日常生活やビジネスシーンでの生産性を大幅に向上させることができます。

具体的には、「本業」や重要なタスクに取り組む前に、脳に「大きな出来事が起こりそうだ」というシグナルを送ることができます。これは別の手段、例えば短い運動、瞑想や好きな音楽を聴くことなどで達成できます。このような小さな行動が、脳内でドーパミンの分泌を促進します。私の場合は、習慣にしている読書によって、ドーパミンが上がるようになりました。

脳がこのシグナルを受け取ると、即座に反応し、ドーパミンを分泌し始めます。その結果、脳内の「ドーパミンレベル」、つまりドーパミンの量が増加します。このドーパミンレベルの上昇は、さらなるやる気と集中力の向上につながります。

ドーパミンレベルが上がると、それがさらなるモチベーションの源となり、より多くのドーパミンが分泌されるという好循環が生まれます。この循環は、タスクへの取り組みをより容易にし、生産性を高める効果があります。

これら3つのステップを「ドーパミン・サイクル」と呼びます。このサイクルを繰り返し実践することで、ドーパミン・コントロールが習慣として定着していきます。最初は意識的に行う必要がありますが、徐々に自然と行えるようになり、日常的な行動パターンの一部となっていきます。

ドーパミン・サイクルを日々の生活に取り入れることで、仕事や学習、個人的な目標達成において大きな変化が見られるようになります。先延ばしの癖が減り、タスクに取り組む際の抵抗感が低下し、全体的な生産性が向上します。イヤイヤ決断するのをやめ、積極的に決断することで報酬系のドーパミンの活動を活性化できます。

さらに、このサイクルを続けることで、自己効力感も高まります。小さな成功体験の積み重ねが、より大きな挑戦への自信につながるのです。結果として、仕事や私生活におけるパフォーマンスが向上し、充実感のある日々を送れるようになります。

ドーパミン・コントロールは、単なる生産性向上のテクニックではありません。それは、自分自身との向き合い方を変え、より前向きで行動的な生き方へと導く、強力なツールなのです。日々の小さな実践から始めて、あなたの人生をより豊かで充実したものにしていきましょう。

脳のやる気のスイッチを押す方法

作業に着手すると、なぜやる気が起こるのか。脳科学的に言うと、手(体)を動かすことで、その信号が大脳の「腹側淡蒼球」に伝わり、さらに「側坐核」(神経細胞の集団)が刺激されるから、と言われています。 つまり、「やる気スイッチ=側坐核」というわけなのです。

淡蒼球の活性化が、やる気を引き出す鍵となると著者は指摘します。そして、この活性化には体を動かすことが最も効果的だとされています。つまり、やる気が自然と湧いてくるのを待つのではなく、行動を起こすことで積極的にやる気を呼び起こすことが大切なのです。

苦手なことや面倒な作業であっても、「やる気を迎えに行く」という姿勢で取り組むことが、実は最も効果的な方法だと言うのです。例えば、気の進まない電話をかける必要があるとき、躊躇せずにすぐに行動に移すことが重要です。また、報告書作成のような大きなタスクに直面したときも、完璧を求めて先延ばしにするのではなく、まずは取り掛かることが大切です。

脳科学的には、この「とりあえず始める」という行動こそが、脳のやる気スイッチを押す唯一の方法なのです。つまり、あなたの体の動き、行動そのものが、やる気を生み出す源となるのです。

私も難しい課題を先延ばししたくなることがありますが、そんなときにはパソコンを開き、このブログの過去記事を読みながら、解決策のヒントを探るようにしています。小さな一歩を踏み出すうちに、淡蒼球が活性化され、いつの間にか仕事に没頭できるようになります。

あのスティーブ・ジョブズも、革新的なアイデアを生み出す手法として「散歩会議」を積極的に取り入れていたことは有名です。これは単なる気分転換ではなく、まさに淡蒼球の活性化を通じてやる気と創造性を引き出す実践だったと言えます。

散歩という身体活動は、淡蒼球を刺激し、ドーパミンの分泌を促します。さらに、オフィスという固定された環境から離れ、自然の中を歩くことで、脳に新鮮な刺激を与えます。これにより、固定観念にとらわれない自由な発想が可能になり、画期的なアイデアが生まれやすくなるのです。

ジョブズの例は、「体を動かすことがやる気の近道」という先ほどの説明を裏付けると同時に、その効果が創造性の向上にまで及ぶことを示しています。彼は「とりあえず始める」という原則を、散歩という形で実践していたのです。

この方法は、必ずしも大きな発明や革新的なアイデアを求める場合だけでなく、日常的な問題解決や意思決定にも応用できます。例えば、行き詰まった時やアイデアが浮かばない時に、オフィスの周りを一周歩くだけでも、新たな視点や解決策が見つかることがあるかもしれません。

さらに、「接近勾配の法則」という原則も、この方法の有効性を裏付けています。この法則は、目標達成が近づいていると感じるほど、集中力が増す傾向を指します。多くの人が、締め切りが近づくにつれて作業のスピードが上がった経験を持っているでしょう。これは、まさにこの法則の実例です。

したがって、たとえ気乗りがしなくても、まずは作業を始めることが重要です。「作業興奮」の力を借りて取り掛かり、そして「接近勾配の法則」を活用して効率よく終わらせる。このように脳の性質を理解し、活用することで、ドーパミン・サイクルを自然に、そして無意識のうちに回すことができるようになります。

この方法を日常的に実践することで、タスクへの取り組み方が変わり、生産性が向上するだけでなく、達成感も得られやすくなります。脳科学の知見を味方につけることで、より効果的に、そして楽しみながら日々の課題に取り組めます。この仕組みを理解し活用することで、生産性を大きく向上させることができるでしょう。

「すぐやる脳」は、この脳科学の知見を日常生活やビジネスに応用する方法を提案しています。本書を読むことで、自身の行動パターンを理解し、より効率的に目標を達成する方法を学ぶことができるでしょう。

ゲーミフィケーションで続ける自分をデザインする!

脳には「可塑性」という性質があり、形を変えられる可能性が残されています。たとえば、前頭前皮質を活性化させるには、「深く考えること」が有益であることがわかっています。実際、深く考えて行動したとき、大脳辺縁系の一部である「扁桃体」が収縮して「灰白質」という部位が増えるという報告があります。つまり、「脳の構造は変えられる」ということです。

脳には「可塑性」という特性があり、これは脳が経験や学習に応じて構造的に変化する能力を指します。つまり、脳は固定されたものではなく、私たちの行動や思考によって形を変えることができるのです。 特に注目すべきは、前頭前皮質の活性化方法です。「深く考えること」が、この重要な脳領域を活性化させるのに効果的だとわかっています。

具体的には、じっくりと物事を分析したり、複雑な問題に取り組んだりすることで、前頭前皮質に刺激を与えることができます。 さらに興味深いのは、深く考えて行動することで、大脳辺縁系の一部である「扁桃体」が収縮し、代わりに「灰白質」が増加するという報告です。これは、脳の構造が実際に変化する証拠となります。

「灰白質」とは、神経細胞の集まりのことを指します。脳のイラストでよく見られる、シワシワの塊として描かれる部分がまさにこの灰白質です。この部位は、情報処理の中心地になっているそうです。高度な思考や判断、感情の制御など、多くの重要な機能を担っています。一般的に、灰白質が多いほど脳の処理能力が高いと考えられています。 これらの知見は、私たちの日常生活に大きな影響を与える可能性があります。

例えば、「先延ばし」の傾向は、ある意味で脳の初期設定とも言えるかもしれません。エネルギーを節約しようとする脳の本能的な傾向が、この行動パターンを生み出しているのかもしれません。 しかし、脳の可塑性を理解し、意識的に働きかけることで、この「初期設定」を変更することが可能です。

深く考えること、新しい挑戦に取り組むこと、継続的に学習することなどを通じて、脳に積極的に刺激を与えていくことが重要です。 例えば、難しい課題に直面したとき、すぐに諦めたり先延ばしにしたりするのではなく、じっくりと考え、解決策を模索する時間を設けることが有効でしょう。また、日常的に新しい技能を学んだり、思考を要するゲームに挑戦したりすることも、脳の可塑性を高める良い方法です。

では、すぐやることを習慣化するには、どうしたらよいのでしょうか?著者はゲーミフィケーションを取り入れるとよいと言います。

脳科学的に見ても、ゲーミフィケーション(ゲームにすること)が、脳に働きかけ、ドーパミンの分泌につながることは証明されています。脳はゲームをしたくてしたくてたまらないのです。もっと言えば、遊びたいのです。

脳科学的研究により、ゲーミフィケーション(物事をゲーム化すること)が脳に強く働きかけ、ドーパミンの分泌を促進することが証明されています。人間の脳は本質的に、ゲームや遊びを求める傾向があります。これは単なる娯楽への欲求ではなく、脳の報酬系と深く結びついた反応なのです。

ゲーミフィケーションを日常生活やビジネスに取り入れることで、「もっとやりたい」という自然な欲求を脳に呼び起こすことができます。これにより、タスクへの取り組みがより楽しく、魅力的なものになり、結果としてドーパミン・コントロールを継続的に行いやすくなります。

ジェーン・マクゴニカルは、ゲーミフィケーションを機能させる4つのメカニズムについてTEDでスピーチしています。

1. しつこいまでの楽観性
ゲームの世界では、失敗は学びの機会であり、常に再挑戦が可能です。この「しつこいまでの楽観性」を日常生活に取り入れることで、困難に直面しても諦めずに前進し続けることができます。この楽観的な姿勢は、脳内のドーパミン分泌を促し、モチベーションの維持につながります。

2. ソーシャルの構造
ゲームの多くは、他のプレイヤーとの協力や競争を通じて進行します。この「ソーシャルの構造」を実生活に応用することで、個人の成長と社会との繋がりを同時に促進できます。例えば、職場や地域コミュニティでチーム制のタスク達成システムを導入し、共通の目標に向かって協力し合う環境を作ります。

これにより、個人の達成感と同時に、社会的な絆も強化されます。人との繋がりや協力は、セロトニンやオキシトシンなどの幸福ホルモンの分泌も促進し、全体的な満足度を高めます。他人からの承認により、私たちは積極的に行動できます。

3. 至福の生産性
ゲームでは、プレイヤーは常に「ちょうど良い難しさ」の課題に取り組みます。この状態は「フロー」と呼ばれ、高い集中力と満足感をもたらします。日常生活でも、タスクの難易度を適切に設定し、段階的に挑戦レベルを上げていくことで、「至福の生産性」を体験できます。

4. 叙情詩的な意味付け
優れたゲームは、プレイヤーに壮大な物語の一部であるという感覚を与えます。日々の行動がビジョン実現のために欠かせぬ行動だと捉えるのです。ゲームのヒーローのように行動し、小さな努力を重ねるのです。この意味付けは、脳内の報酬系を活性化し、行動そのものに喜びを見出すことを可能にします。

これらのメカニズムを日常生活に取り入れることで、私たちは単なる生産性の向上だけでなく、より充実した、意味のある人生を送ることができるようになります。ゲーミフィケーションは、楽しみながら自己実現や社会貢献を達成する強力なツールとなり得るのです。

このアプローチは、個人の幸福感を高めるだけでなく、社会全体をより良い方向に導く可能性を秘めています。日々の小さな行動に意味を見出し、他者との繋がりを大切にしながら、楽観的に挑戦し続ける。そうすることで、私たちは自身の人生を豊かにすると同時に、世界をより良い場所に変えていく力を手に入れることができるのです。

最強Appleフレームワーク

この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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