世界最高のリーダーシップ 「個の力」を最大化し、組織を成功に向かわせる技術
フランシス・フライ, アン・モリス
PHP研究所
世界最高のリーダーシップの要約
フランシス・フライとアン・モリスは、リーダーシップの鍵はエンパワーメントにあり、その核心は「信頼・愛・帰属」の3要素だと指摘します。これらを満たしたリーダーだけが卓越した存在になれると説き、組織を強くできます。さらに未来を創造するリーダーには、戦略の策定と文化の構築が不可欠だと強調しています。
エンパワーメントが優れたリーダーに欠かせぬ理由
「リーダーシップの主役はリーダー本人(つまりあなた)ではない」ということだ。リーダーに求められる資質は、他者をエンパワーし、彼らの才能を解き放つ能力だ。効果的なリーダーになりたいのであれば、まず自分の外に目を向けなければならない。(フランシス・フライ, アン・モリス)
ハーバード・ビジネススクール教授のフランシス・フライとリーダーシップコーチのアン・モリスは、多くの企業を分析した結果、リーダーシップの成功は「エンパワーメント」に左右されると指摘しています。
彼らが関わったウーバーなどの企業では、リーダーが自己中心的になることで、部下との信頼を築けていなかったといいます。 しかし、リーダーが権限を委譲し、メンバーの意見を尊重することで、組織は活性化しました。
著者の2人は、「リーダーシップの主役はリーダー本人ではなく、組織全体である」と述べています。リーダーの役割は、環境を整え、個々のメンバーの才能を引き出すことにあります。 優れたリーダーに求められるのは、他者をエンパワーし、才能を最大限に発揮させる能力です。
効果的なリーダーになるためには、自分自身の行動に注目するだけでなく、チーム全体の成長に目を向ける必要があります。 リーダーの日常業務は、一見すると地味なものかもしれません。期待通りの成果を上げられていないメンバーと率直に話し合うこと、新しい才能にチャンスを与えることなど、日々の積み重ねが組織の成長につながります。
理想的なリーダーシップとは、リーダー不在でも組織が円滑に機能し続ける仕組みを作ることです。そのためには、戦略を策定し、チームが自走できる文化を築くことが欠かせません。メンバーの成長を支援し、それぞれの才能を最大限に引き出す姿勢が、組織の持続的な発展につながるのです。
リーダーの仕事は、周りのメンバーが最高の力を発揮できる環境をつくりだすことだ。それは彼らと一緒に前線に立つときだけにとどまらない。自分がその場にいないとき、そして(これがリーダーにとって究極のテストだ)自分がそのチームを完全に去ってからも、自分の残した文化が永続するようにしなければならない。
著者たちが提唱するリーダーシップの定義とは、「自分の存在によって他者をエンパワーすること。そしてその影響力が、自分の不在の状況でも続くようにすること」です。
優れたリーダーに求められるのは、他者をエンパワーし、才能を最大限に発揮させる能力です。効果的なリーダーになるためには、自分自身の行動に注目するだけでなく、チーム全体の成長に目を向ける必要があります。
リーダーが最も効果的に他者をエンパワーするためには、「高い基準と深い献身」と呼ばれる資質を備えることが不可欠です。これらは単なるスローガンではなく、実際の行動として示されるべきものです。リーダー自身が模範を示し、周囲に対して高い基準を設定すると同時に、メンバーの成長に真剣に向き合うことが求められます。
戦略と文化が重要な理由
信頼、愛、帰属──この3つが、エンパワメント・リーダーシップのコア・コンピタンス(核となる強み)であり、これらを達成した人だけが卓越したリーダーになれる。
著者たちは、「すべては『信頼』から始まる」と述べています。人間が信頼するのは、次の3つの要素によります。
①オーセンティシティ
本当の自分を出していると感じられる人
②ロジック
判断力や能力があてにできる人
③共感
自分を気にかけてくれると感じられる人
信頼が失われるのは、大体においてこの内のどれかが崩れたことで説明できます。これら3要素の内、相手の立場になって、どの要素が揺らいでいたのかを考えることが重要です。スマホを手放し、相手の話を傾聴することがリーダーには求められます。これだけで部下との信頼関係を変えられれるのです。
最高の人材を維持するリーダーシップにおいて、信頼の重要性は計り知れません。メンバーが安心して意見を述べ、自由に行動できる環境が整ってこそ、組織の最大限の力が引き出されます。
リーダーの求める基準が高く、明確であれば、私たちは努力してその基準に到達しようとします。そして、リーダーに対する完全な信頼があれば、基準に到達する可能性はかなり高くなるのです。これは一種の愛のムチであり、厳しさと愛情に同等の重きが置かれています。
基準と献身(ウェルマックス)のマトリックスは、次の4つに分けられます。大抵のリーダーは「忠誠」か「厳格」に入ります。
・正義 基準高い × 献身高い
・厳格 基準高い × 献身低い
・忠誠 基準低い × 献身高い
・放置 基準低い × 献身低い
高い基準を求めながら、他者への献身も忘れない(正義)リーダーは稀な存在ですが、私たちは意識してこの境地を目指さなければなりません。 人間の成長を最も効果的に促したいのであれば、むしろ献身したいという自然な欲求を活用するのが一番です。 実践は簡単で、誰かがまさに自分の望むような行動をしていたら、ただそれを具体的に指摘し、子供と接する時のように心の底から褒めればいいのです。
ネガティブなフィードバックをするよりも、ポジティブな点を見つけ、それを褒めるようにしましょう。どの行動が素晴らしかったかを具体的に伝えれば、相手もその行動を繰り返すことができます。
それぞれのメンバーが自分らしさを発揮できる組織こそが、成功を収めます。そして、その恩恵を受けるのはマイノリティに属する人々だけではありません。
個々のオーセンティシティ(本来の自分らしさ)が尊重される包摂的な環境では、すべてのメンバーが成長し、より良い成果を生み出せます。 包摂的なチームを構築する際は、直感に従いながらスピード感を持って行動することが重要です。できるだけ多くのことを同時に進め、素早く実践することで、勢いが生まれます。挑戦を重ねる中で障害を乗り越え、学びを得ることで、チーム全体の成長につながります。
多様な組織を構築し、維持するためのステップは以下のとおりです。
1、多様な才能を引き寄せ、選別する
2、成功の機会を平等に与える
3、厳密で透明なシステムで、最高の人材を昇進させる
4、最高な人材を維持する
このような仕組みを整えることで、多様性を尊重しながら持続可能な成長を実現できます。
リーダーは顧客、株主、従業員、サプラーイヤーの全てが利益を得ることが可能だと信じ、行動すべきです。アップルのティム・クックはこれを実現することで、アップルの時価総額を世界最高水準に高めたのです。
組織を動かすためのレバーのーつが戦略だとするなら、もうーつのレバーは「文化」だ。そしておそらく、文化のほうが戦略よりも大きな声でメッセージを伝えることができる。戦略では伝えきれなかったことがあったなら、それが何であれ、文化は容赦なくその空白を埋めるだろう。リーダーが部屋にいないとき、チームのエンゲージメントを左右するのは文化だ。
リーダーが部屋にいないとき、チームのエンゲージメントを左右するのは文化なのです。文化は組織の隅々まで届くことで、行動の指針になるのです。
理想的なリーダーシップとは、自身が不在の状況でも組織が機能し続けるような影響力を持つことです。そのためには、メンバーの成長を促し、彼らの才能を最大限に引き出す姿勢が求められます。その際、戦略と文化が欠かせないという著者のメッセージに共感を覚えました。
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