SFプロトタイピング SFからイノベーションを生み出す新戦略 (宮本道人, 難波優輝, 大澤博隆)の書評

photography of purple and green aurora beam below grey space satellite

SFプロトタイピング SFからイノベーションを生み出す新戦略
宮本道人, 難波優輝, 大澤博隆
早川書房

本書の要約

自社のビジネスを成功させるためには、ドラえもんのようなストーリーを妄想することから始めると良いでしょう。SF的な自由な発想を活用し、ストーリーの展開を妄想することで、ビジネスに新しいアイデアや視点をもたらすことができます。結果、従業員や顧客がより魅了され、ビジネスの成長を促進することができます。

SF思考とはなにか?

SF的なビジョンありきで、それを成立させるための技術や、そこに対する対応策を探っていったほうが、VUCA(変動性 Volatility、不確実性 Uncertainty、複雑性 Complexity、曖昧性 Ambiguity)の時代と言われるいま、ほかにない独自の強みを得られるのだ。(藤本敦也 , 宮本道人,関根秀真)

SFプロトタイピングとは、未来社会を想定したプロトタイプの制作手法です。この手法は、ガジェットを用いた未来の実現や、キャラクターからの具体的な視点、プロットによる動的なシミュレーションなどの特徴があり、これらが「SF」という名前を冠する理由となっています。

SFプロトタイピングは、「バックキャスティング」という方法で実施されます。これは、未来を想定し、逆算して現在を考えることを意味します。一方、フォアキャスティング的な未来予測は、過去や現在の科学技術や社会状況から演繹して、実現可能性の高い未来を想定する手法です。

しかし、フォアキャスティング的な手法では現在からの積み上げのため、常識的な解決策が提示されがちです。それを避けるために、SFプロトタイピングのような手法が必要とされています。SFプロトタイピングでは、先にSF的なビジョンを設定し、それを実現するための技術や対応策を探ることで、独自の強みを得ることができます。

SFプロトタイピングは、自分自身で予想外の未来を予測することにより、斜め上の社会変化にも対応することができます。この手法は、新しい事業や製品を創り出すビジネスパーソンにとって特に役立つ手法です。SFプロトタイピングを用いることで、課題をこなすだけでなく、未来社会を想定して斜め上のアイデアを考え、新しいビジネスを展開するための強みを持つことができます。

私は何か新しいプロジェクトを始める前に、10年後を想定してバックキャスティングを行い、妄想をするようにしています。この方法によって、日常的なアイデアにとらわれず、より創造的な発想を生み出せるようになります。

妄想をSF的なストーリーにすることで、相手の想像力をかきたてるだけでなく、自分自身や周りの人々にとってより意味のある未来像を描くことができます。妄想を通じて、私は過去には考えつかなかった可能性を見出し、現実を超越した発想を生み出せるようになりました。

ビジョンをSFストーリーで表現する意味

「妄想」→「知覚」→「組み換え」→「表現」というプロセスを通して自分の妄想を形にしていきます。自分の内面にあった「本当はこうしたいかもしれない」という妄想やワクワクをスケッチし、絵のモチーフをつけ、最終的にはアートのようなかたちで誰かに見せていく。それをもとに対話をし、時には物語にしてみる。(佐宗邦威)

VISI0N DRIVEN直感と論理をつなぐ思考法の著者の佐宗邦威氏は、妄想を起点に未来をデザインするビジョン思考が効果があると述べています。

佐宗氏はベンチャーと大企業での活用イメージを明らかにしています。自分の内にある妄想や願望を形にするためには、まず自分の妄想を知覚し、それを組み換えて表現するプロセスを踏むことが必要です。自分が本当に望むこと、どのようなことがワクワクするのかをイメージし、それをスケッチや絵のモチーフとして表現することが具体的な方法です。

しかし、このプロセスは自分自身だけで完結するわけではありません。他人にそれを見せてフィードバックを得ることが、自分自身の好みやこだわりを客観的に見つめるためには重要です。同時に、現代社会において完全な善悪の基準が存在しないため、自分のビジョンが誰にとって良いのか、どのような立場にあるのかを考えることも重要です。これらのプロセスを通じて、自分自身のビジョンを深化させ、より広い視野を持つことができます。

ビジョン思考は、スタートアップ企業や大企業にとって非常に重要な考え方です。スタートアップ企業では、将来の展開を見据えて、どのような価値観や領域を重視するかを決定する必要があります。そのため、チームメンバーやパートナーと協力して、共有可能なビジョンを策定することが必要です。

大企業においては、SDGsやESG投資など、社会的な責任を果たすためにどのような方針を打ち出すかが求められます。この場合、数字で評価することが困難なため、「ここに注力し、投資する」という主観的な意見を取り入れる必要があります。このようなプロセスにおいて、ビジョンはなぜそうするのかを議論するための重要なツールとなります。

また、ビジョンだけでなく、それを実現するための組織能力についても視野に入れることが重要です。企業のミッションや組織文化の変革を含めたストーリーを作り出すことで、SF思考を活用し、未来をメンバーと共にストーリーにすることができます。これにより、明確なビジョンが描けるだけでなく、チームワークも向上します。

今後の企業戦略を立てる上で、大切なことは、理想的な状況を描いて、現実的に実現可能なストーリーを作り出すことです。このストーリーが、戦略そのものになります。そして、そのためには、物語の形式を取り入れることがますます重要になっています。

特に、SFは、技術や科学の側面をリアルに描写できることから、未来に関するテーマに対して、より広く受け入れられることが期待されています。特に、研究開発が必要な分野においては、SFによってプロダクトが具体的にイメージできるため、アイデアを人々に伝えやすくなります。

自社のビジネスを成功させるためには、ドラえもんのようなストーリーを妄想することから始めるとよいでしょう。SF的な自由な発想から、未来のストーリーを妄想することで、ビジネスに新しいアイデアや視点をもたらすことができます。結果、従業員や顧客がより魅了され、ビジネスの成長を促進することができます。

新しいアイデアを生み出すことは、競争力を維持する上で必要不可欠です。未来を予想し、自由な発想力を活用することで、ビジネスの可能性を最大限に引き出せるようになります。


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