ユニークな行動を取れる人がいつも考えていること
池田貴将
サンクチュアリ出版
ユニークな行動を取れる人がいつも考えていること (池田貴将)の要約
変化を望む人にとって、特別な才能や大きな決断は必要ありません。大切なのは、感情を起点に小さな行動を継続し、自分の内的動機に従って目標を設定することです。思考パターンの見直しやフィクション的発想を取り入れることで、行動の連鎖が始まります。著者の池田氏は小さな一歩を踏み出し、それを習慣化することで、自己変容を生むと説いています。
人から選ばれるユニークな存在になるために必要なこと
無個性的な人は「ズレること」を不安に感じ、ユニークな人は「ズレること」に耐性があるということ。この「ズレ」の蓄積が「らしさ」となり、やがては「唯一無二の人物」や「この件ならあの人しかいない」と言われるような存在になっていく、というわけである。そして今、こうした人物が社会やビジネスのあらゆる場面で求められている。(池田貴将)
日々 同じような日常が繰り返される中で、「自分を変えたい」と感じている方は少なくないはずです。しかし、特別な才能があるわけでもなく、大きな変化を起こす勇気も持てないと感じることも多いのではないでしょうか。周囲には、なぜか自然とユニークで魅力的な行動をとる人たちが存在し、自分との差に戸惑いを覚えることもあるかもしれません。
実際、このような感覚を抱く人は決して珍しくありません。特に40代・50代といったミドル世代では、長年の経験から培われた価値観や行動パターンが定着しており、新しい一歩を踏み出すことに慎重になる傾向があります。その結果、現状を変えることなく時間だけが過ぎてしまう可能性もあります。
そのような中で参考になるのが、リーダーシップや行動心理学の研究者の池田貴将氏のユニークな行動を取れる人がいつも考えていることです。本書では、特別な才能や大きな出来事に頼らず、日々の小さな選択を積み重ねることでユニークな行動が生まれるプロセスを、心理学と行動科学の視点から丁寧に解説しています。
自己理解を深めること、そして感情との付き合い方を見直すことの重要性を示しており、変化を求める読者にとって現実的な指針を提示しています。
著者は、感情を行動の出発点とするアプローチを提唱しています。たとえば「この感情をどう受け取れば最も前向きか」と自問することで、感情の扱いが容易になり、失敗を恐れるのではなく「そこから何を学べるか」に意識を向けることが可能になります。
さらに、無意識の思い込みを検証する習慣や、「痛み」と「快感」の結びつきを意図的に再構成する技術なども紹介されており、再現性のある行動変容が実現可能であることが示されています。こうした理論の実践例として、著名な起業家たちの独自の思考と行動が取り上げられています。
イーロン・マスクは「ファースト・プリンシプル思考」に基づき、常識ではなく物理法則から物事を構築していくアプローチを採用しています。ロケット開発においても、「高価であるのが当然」という前提にとらわれず、「原材料のコストはいくらか」という視点から出発し、結果的にSpaceXの低コスト化を実現しました。
さらに、マスクは「火星移住」「完全自動運転」「脳とAIの融合」といったムーンショット目標を掲げ、逆算による計画遂行を徹底しています。また、必要に応じて自ら工場に寝泊まりし、現場の問題解決に直接関与するなど、経営者としての姿勢が社員の意欲にも影響を与えていることは注目に値します。広告に頼らず、自身のSNS(X)で情報を発信するというスタイルも、情報の伝播とブランド価値の形成において大きな効果を上げています。
一方で、Amazon創業者のジェフ・ベゾスは、「10年後も変わらないもの」に注目し、そこに資源を投下するという「逆算思考」を実践しています。低価格かつ迅速な配送というニーズは、今後も変わらないという仮説に基づき、物流インフラへの先行投資を行ったことが、Amazonの競争力を支える基盤となりました。
また、企業規模が拡大しても「Day1の精神」を掲げ、スタートアップのような柔軟性と挑戦を社内文化として維持し続けています。失敗を恐れずに取り組んだFire Phoneの事例が、後のAlexaにつながったことは象徴的です。 彼らに共通しているのは、派手さや奇抜さではなく、自らの価値観や思考フレームに基づいた賢明な判断と行動を積み重ねている点にあります。
人生を変える方法は、小さな行動にあり!
唯一無二の知恵と力は、すでに自分の中に眠っている。「ごく普通の自分」と、「ユニークな自分」は、1本の線でつながっている存在である。人はいつでも、自分という存在の面白さと力強さに驚き、深い感動を味わうことができるのだ。
「痛み」という感情体験は、単なる苦しみではありません。むしろ、人生の方向転換を促す貴重なサインです。真に独自の道を歩む人々は、この痛みを燃料として行動の原動力に変える術を知っています。だからこそ、多くが足を止める場面で、新たな一歩を踏み出すことができるのです。
行動力とは、適切な感情状態を意図的に創り出せる能力にほかなりません。継続力もまた、行動を続けたくなる感情の流れを自ら設計できる力です。こうした力を持つ人々は、短期的な損得よりも、「この選択が自身の未来をどう高めるか」という視点で判断しています。
行動を継続した未来と、途中で中断した未来。両者の違いは、短期的にはわずかに見えても、時間の経過とともに大きな差となって表れます。その差異を比較する視点を持つことで、私たちの思考はより本質的な問いへと向かい、「今、目の前の行動」に対する意味づけが明確になります。
変化を実現する人には、3つの共通した思考パターンが見られます。
①「今すぐ変えなければならない」という緊急性
②「自分自身が変える責任を負う」という主体性
③「自分には変えられるだけの力がある」という自己効力感
この3要素が揃うことで、人は自然に最初の一歩を踏み出しやすくなり、その行動はやがて習慣として定着していきます。 理想の自己像を言語化し、それに整合する小さな行動を積み重ねることで、脳は新たな自己認識を形成します。
行動の背後にある理由を後から見つけ出すのが人間の認知特性であり、たとえ違和感があっても、繰り返される行動はやがて「その人らしさ」として内面化されていくのです。 すなわち、「自己像が先」ではなく、「行動が先」という構造です。
目標の本質は、成果そのものではなく、感情を行動へと転化させる“スイッチ”としての機能にあります。 目標を設定することで「やらなければならない」という義務感ではなく、「行動せずにはいられない」という自発的なエネルギーが生まれます。その感情の喚起こそが、行動と結果を生む起点となるのです。
目標設定においては、実現可能性や他者からの評価を過度に重視する必要はありません。最も重要なのは、その目標が自身の内的動機を喚起するものであるかどうかです。言い換えれば、「心が自然に動くかどうか」が行動の持続性を左右します。 現実的な制約が強く意識される場合には、あえて“フィクション的思考”――すなわち、現状に縛られない創造的仮定を導入することが有効です。
これは、「もし制約がなかったとしたら、自分は何を目指すか」という仮の問いを立てることで、目標の幅を広げ、感情との接続を促す手法です。
私自身の例を挙げると、今から18年前の44歳の時に断酒を行い、「著者になる」という目標を宣言しました。当時、それは現実からは大きく乖離した目標に見えましたが、まずは日々の発信を通じて継続的なアウトプットを行いました。
やがて、その積み重ねが出版社との接点を生み出し、出版という具体的な成果へとつながりました。 このプロセスが示しているのは、目標の達成可否以上に、そこに向かって取り組む過程が重要であるということです。
成果はあくまで通過点にすぎません。むしろ、行動を積み重ねる中で得られる経験の蓄積、視点の変化、自己理解の深化こそが、長期的に見て持続的な価値を生み出します。
実際、私自身、文章を書くことを習慣化することで、かつての「元・酔っ払い」というセルフイメージを、「著者」「書評ブロガー」といった新たな自己像へと徐々に書き換えることができました。これは偶然の産物ではなく、目標を起点に地道な行動を積み重ねた結果として、ごく自然に生じた変化だったと言えるでしょう。
目標とは、単なるゴール設定ではなく、むしろ「行動の連鎖を生み出す起点」としての機能を担っています。したがって重要なのは、その達成可能性ではなく、目標がいかに感情的なリアリティを伴い、行動を喚起する動機づけと結びついているかという点です。この整合性がとれることで、はじめて、目標は持続的な行動のトリガーとして有効に機能するのです。
行動科学の分野で知られるメル・ロビンズは、「人は5秒以上迷うと、行動しない理由を探し始める」と指摘しています。この知見は、思考が長引くと防衛本能が優位になり、行動にブレーキがかかるという認知のメカニズムを示唆しています。
したがって、変化を促すためには、迷う前に動き出す「即時性」が重要なのです。 加えて、「なぜ自分にそれが可能なのか?」という問いを自分に投げかけることは、脳を行動モードに切り替える有効なトリガーになります。根拠は曖昧であっても構いません。脳は問いに対して答えを探そうとする性質を持っており、それが内的な説得力を生み出すのです。
試していないことがあるなら、それこそが今の人生に眠る可能性である。「行動すること」を通じて、私たちはその可能性を現実にしていく。小さな変化を一貫して続けることが、やがて大きな変化を生む。
人生を構成する最小単位は「一つの行動」です。 私たちが何を考え、何を選択し、どう行動するか――その一つひとつが、未来を形づくっていきます。継続と変化は、決して大きな決断から始まるわけではありません。日々の小さな行動の積み重ねが、長期的な成果と自己変革を可能にするのです。
過去の延長線上で未来を描くのではなく、小さな行動の積み重ねが、驚くほど大きな変化を生み出します。一つの行動で劇的な変化は起きないかもしれませんが、「確かに少し変わった」という実感が、やがて大きな変化の前触れになります。私もこのブログを毎日書き続けて、15年経ちましたが、日々の執筆を継続することで、自分をユニークな存在に変えられました。
著者が強調しているのは、「今日もまた何かを始めたかどうか」が何よりも大切だという点です。どんなに小さな行動でも、今できることに目を向けて選び続けることが、未来を少しずつ形づくっていきます。
「ユニークさ」とは、生まれ持った才能ではなく、自分なりの選択を積み重ねた結果として育まれるものです。つまり、誰にでも身につけることができるスキルなのです。重要なのは、既存の枠にとらわれず、自分の思考と行動に意図を持たせること。
そして、自分の価値観を定期的に見直し、納得のいく選択を積み重ねていくことです。たとえズレや違和感を覚えたとしても、それは「自分らしさ」の現れにほかなりません。それを否定するのではなく、むしろ受け入れることで、結果として自然な差別化が生まれていくのです。
変化を望む人にとって、本書の考え方は、人生の方向性を見つめ直す大きなヒントになります。どんなに小さな一歩でも、その一歩には意味があります。日々の選択に意識を向けることで、「自分らしい行動」の輪郭は次第に明確になっていくのです。
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