世界を動かすイノベーターの条件 非常識に発想し、実現できるのはなぜか?(メリッサ・A・シリング)の書評

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世界を動かすイノベーターの条件 非常識に発想し、実現できるのはなぜか?
メリッサ・A・シリング
日経BP

本書の要約

イノベーターは、自分の信念と理想に基づいて行動し、既存の枠組みや期待を超えて新しい価値を生み出す人々です。私たちは、彼らの持つこのような独自の視点や価値観を尊重し、その可能性を最大限に引き出すことで、新しいイノベーションや価値を社会にもたらすことができるようになります。

メリッサ・A・シリングが明らかにしたイノベーターの共通性とは何か?

どのイノベーターも普通とは違う、奇癖とも言える特質をいくつかもっており、それがアイデアの創出と、その実現を追求する熱意の両方に重要な影響を及ぼした。たとえば、私が考察の対象にした人々のほぼ全員が、少なからず社会から孤立した生き方をしている。(メリッサ・A・シリング)

ニューヨーク大学スターン・スクール・オブ・ビジネス教授のメリッサ・A・シリングの著書では、世界を変えたイノベーターたちの共通点や、彼らが持つ特有の特性を深く探求しています。彼女は、このような人々がどのようにして自らの限界を超え、未知の領域へと挑戦しているのかを明らかにしています。

イノベーションには非常識な発想が必要です。世界を動かすイノベーターは、常識にとらわれずに新しいアイデアを思いつきます。彼らは既存の枠組みや規範に疑問を持ち、それを超えるような斬新な発想を生み出します。彼らは自分自身に挑戦し、限界を超えることに恐れを感じません。

よくイノベーションは「ちょうどいい時代に、ちょうどいい場所にいたから」だと説明されますが、何度もイノベーションを起こしたイノベーターは非常識な発想をさまざまな要素から実現しています。彼らは創造力に富み、柔軟な思考を持っています。

また、彼らは失敗や挫折から学び、それを次のチャレンジに生かしています。彼らは困難な状況でも諦めず、粘り強く取り組むことができます。その上で、彼らは運をも味方にするのです。

イノベーターは時期や場所、人的ネットワークを巧みに利用していることは事実です。彼らはトレンドや市場の変化を見極め、適切なタイミングで行動します。また、他の人々とのコミュニケーションや協力を通じて、アイデアを実現するためのサポートや情報を得ています。

私たちがイノベーターのような非常識な発想や創造力を育むためには、いくつかのポイントがあります。まず、既存の規範やパラダイムに疑問を持ち、常に自分自身に挑戦することが重要です。また、ひとりになる時間を作り、集中して考えることも大切です。アインシュタインやキューリー夫人など多くのイノベーターが孤立になることを選んでいます。子供の頃から一人の時間を楽しみ、読書や学ぶことに情熱を傾けていました。

彼らは孤独で創造的な時間を過ごすと同時に他者とのコラボレーションを起こすことで、イノベーションを起こしました。

要するに、トレードオフの関係にあるわけだ。孤立はイノベーターが独創的なアイデアを生み出すことを可能にするが、そのアイデアを実行するには強い結束力をもつ人的ネットワークをもっているほうが有利になる。

例えば、スティーブ・ジョブズは技術の天才、スティーブ・ウォズニアックとともにAppleを立ち上げ、初めてのAppleコンピュータを作り上げました。その後も、デザインの巨匠ジョナサン・アイブとの協力によって、iPhoneやiPadといった革命的な製品を生み出していったのです。

アインシュタインもまた、彼の理論を数学的に表現するために、ミケーレ・ベッソーやマルセル・グロスマンのような才能ある数学者たちの助けを得ました。

イーロン・マスクやトマス・エジソンは、彼らのビジョンを実現するための技術的な挑戦に取り組む専門家たちを取り囲んでいました。彼らの研究室や企業には、それぞれのアイデアや発明を実際に形にするための技術的知識やスキルを持った人々が集まっていたのです。

これらの例から、一人の才能やビジョンだけで大きな成功を収めるのは難しく、それを実現するためのチームやパートナーシップが極めて重要であることがわかります。革新的なアイディアやビジョンを持つリーダーと、それを具体的な形にするための専門家や仲間との協力は、歴史の中で多くの偉業を生み出してきました。

自己効力感を高め、目標を達成できる自信を持つことも必要です。 彼らは並外れた自信を持った上で、壮大なビジョンを抱いていました。大きな目標を持つことで、自分自身を鼓舞し、アイデアを実現するための努力を続けることができます。また、仕事や活動の中でフローを感じることも重要です。

自分が楽しんで取り組める仕事や活動を見つけることで、創造力を発揮しやすくなります。 世界を動かすイノベーターは、単に非常識な発想を持つだけでなく、そのアイディアを具体化し、実現するための特別な能力を持っています。彼らの非凡な力の背後には、個人的な経験や信念、そして独自の思考プロセスがあります。

そして、彼らの成功の背後には、非常識な発想だけでなく、深い好奇心、持続力、そしてリスクを恐れない勇気があることを示唆しています。 シリングは、イノベーションを生み出すための環境や条件、そしてイノベーター自身が持つ心理的な特性についても詳しく説明しています。

例えば、彼らは周囲の環境や文化に影響されず、自らの信念や価値観に基づいて行動することができます。これは、彼らが新しいアイディアや視点を持ち込むことができる一因として挙げられます。 また、彼らは失敗を恐れず、それを学びの経験として捉えることができます。このため、彼らは繰り返し試行錯誤を続けることができ、結果的に画期的な発見やイノベーションを生み出すことができます。

失敗や批判に直面しても、自分のビジョンが極めて重要で、高潔かつ価値のあるものと信じていることで立ち直りが早くなります。この考え方は、成功への道で不可欠な要素です。彼らには恐ろしいほどの粘り強さによって、ビジョンを実現していったのです。

さらに、著者のシリングはイノベーターが持つ情熱や献身性、そして彼らが追求する目標の大きさについても触れています。彼らは自らの目的やビジョンに対して強い情熱を持ち、それを実現するために全力を尽くします。

イーロン・マスクがイノベーションを起こせる理由

イーロンがときおり「不可能事に挑む男」と評されるのは、一見不可能に見えることを進んで引き受けるからである。時代を画するイノベーターの多くがそうした目標を引き受けるのは、彼らがみな障害を乗り越える自分の能力に高い信頼を置いているからで、そのために一般人なら決まったものとして受け入れるルールを容認しない。

イーロン・マスクの名前は、今や「不可能」という言葉を定義しなおすシンボルとして認知されています。彼の成果は、不可能を信じていなかった彼自身の信念の力から生まれています。

私たちがイーロン・マスクの物語から学ぶことができる最も大切なことは、彼の限界知らずの探求心と、既存の枠組みや制約を受け入れない姿勢です。彼は、新しい問題や挑戦を楽しむことで、それが自身の「領域」外であっても気にせず取り組んできました。

これは、私たちが日常的に見ている「これは私の仕事ではない」という考え方とは真逆のものです。 私たちの社会は、専門家やベテランを尊重し、新参者やアウトサイダーに対しては疑問の目を持つ傾向があります。

しかし、マスクのようなアウトサイダーは、その新鮮な視点から革命的な変化をもたらすことができます。彼らは、業界の慣習や「常識」とされるものに囚われることなく、真のイノベーションを追求してきました。 これからの私たちの挑戦は、イーロン・マスクのようなアウトサイダーの価値を理解し、彼らがもたらす可能性を最大限に引き出すことです。

私たちが持つべきは、異なる視点や背景を持つ人々の意見や考えを受け入れ、共に新しい価値を生み出すオープンな姿勢です。 総じて、イーロン・マスクのような人物を見て、私たちも自らの制約や限界を乗り越え、新しい挑戦に挑む勇気を持つべきです。彼の存在は、どんな障害があっても夢を追い求める力と、その夢を現実に変える可能性を示してくれます。

自身の問題解決と目標達成の能力に対する信頼を「自己効力感」と呼ぶ。抜きん出た自己効力感をもつ者だけが、普通の人間が挑むものより大規模で複雑な問題を追求できる。

イーロン・マスクは、困難な状況下でも自らの信念と能力を信じ続けることの大切さを象徴しています。2008年は彼にとって極めて厳しい年でした。テスラの経済的危機、スペースXのロケットの連続的な失敗、そして私生活での離婚問題など、どれ一つとっても人を挫折させるほどの大きな障害でした。

しかし、彼はこれらの問題に真正面から取り組み、解決へと導きました。 多くの人々が直面する危機の中で投げ出すか、あるいは方向を変えるかもしれませんが、マスクは異なっていました。彼の自己効力感、つまり自分の行動が状況を変え、目標を達成する力があるという信念は彼の行動を駆り立てました。この信念が彼に、一つ一つの障害をクリアする努力や戦略を模索させ、その結果として今日の彼の成功へとつながったのです。

イノベーターは自分のアイデアやビジョンに絶対的な自信を持ち、その実現のためにはどんな障害や困難にも立ち向かう勇気と意志を持っています。彼らは、未来の具体的なビジョンを明確に持ち、そのビジョンを実現するための長期的な計画や努力を怠りません。たとえ、報酬が得られないとしても、彼らはその理想を粘り強く追求し続けます。このような強固な信念と意志は、外部からの厳しい批判や圧力にも揺るがない強さを彼らに与えています。

日本の社会において、他者に同調する、空気を読むことは重要なコミュニケーションスキルとして見なされていますが、イノベーターたちは、社会の一般的な期待や価値観にとらわれず、自分の直感や信念に従って型破りな行動を続けます。彼らは、他人の理解や承認を求めることなく、自らの方法で問題を解決し、目標に向かって進み続けます。この姿勢を見習うことが、日本の大企業がイノベーションを起こすことの第一歩になると感じました。

偉大なイノベーターから私たちは多くの学びを得られます。異端的な発想や創造性を育み、創造的なアイデアを実現するのに必要な粘り強さを発揮し、有利な状況を生み出していくには以下のアクションを実践するとよいと著者は述べています。
・規範やパラダイムを疑問視する
・ひとりになる時間を増やす
・自己効力感を高める
・壮大な夢を描く
・フロー見つける
・知的技術的リソースにアクセスできる機会を増やす

イノベーターは、自分の信念と理想に基づいて行動し、既存の枠組みや期待を超えて新しい価値を生み出す人々です。私たちは、彼らの持つこのような独自の視点や価値観を尊重し、その可能性を最大限に引き出すことで、新しいイノベーションや価値を社会にもたらすことができるようになります。


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