イーロン・マスク(ウォルター・アイザックソン)の書評

black Tesla steering wheel

イーロン・マスク
ウォルター・アイザックソン
文藝春秋

イーロン・マスク(ウォルター・アイザックソン)の要約

イーロン・マスクの特異なマスクの人格と経験を考慮に入れることは、彼のビジネス上の成果とアプローチを解釈する上で重要です。彼の過去の経験や家族との関係が、彼の野心やビジョン、そして彼の成功に対する執念に影響を与えていることが分かります。 一方で、マスクの二面性は時に問題を引き起こしていることも事実です。

共感力を持たないイーロン・マスクの強みとは?

ふだんから優しくするとか温かく接するとかに必要な感情受容体も、好かれたいと望むもとになる感情受容体も持ち合わせていない。周囲と共感できるようには頭の配線ができていないのだ。下世話な言い方をすれば、くそ野郎になりがちなタイプなのである。(ウォルター・アイザックソン)

ウォルター・アイザックソンは、スティーブ・ジョブズやレオナルド・ダ・ヴィンチなど、歴史に名を残す人物の詳細な伝記で知られています。彼の執筆する伝記は、その人物の生涯を深く掘り下げており、彼らがどのようにして世界に大きな影響を与えたかが理解しやすいものです。これにより、読者はこれらの偉人たちに親しみを感じ、彼らの業績をより身近に感じることができます。

そのアイザックソンが今回取り上げたのが、イーロン・マスク。 今までの伝記とは異なり、マスクへの2年間の密着取材から、マスクの思考や行動スタイルが明らかになっています。そこに家族や仲間のインタビューが織り込まれる構成になっているのが、類書とは異なるアプローチになっています。

猛烈ないじめを受けたため、マスクは子供のころからコミュニケーションが苦手だったと言います。彼は読書に救いを求め、膨大な書籍から知識を得ていきます。

ロバート・ハインラインやアイザック・アシモフなどのSFが好きだったマスクは、妄想力を鍛え、壮大なビジョンを描くことで、AIや宇宙でのビジネスに取り組むことができるようになりました。マスクは、これらの作品を通じて、自身の創造力や起業家精神を育んだのです。リスクを取るという冒険者スピリットも子供の頃に養われていったのです。

マスクの共感力を持たないという特性が、彼のイノベーションの源泉になります。読書、工学や物理学、コーディングに集中することが、のちの起業に良い影響を与えたことは間違いありません。

イーロンも機嫌がいいときは、これほどクールでおもしろいヤツはまずいないって感じだったりします。でも機嫌が悪くなると、すごく陰険になるんです。そういうときは、とにかく逃げるが勝ちです。(ピーター・ライブ)

アイザックソンがイーロン・マスクの人格を「ジキルとハイド」に喩えることは、マスクのキャリアと彼の個性の複雑さを理解する上で興味深い視点を提供します。 マスクの独特な人格形成には、遺伝的要因だけでなく、家族との関係、特に父親との複雑な関係が大きく影響しているとされています。

実際、マスクが南アフリカからカナダへの移住を決めた理由の一つに、暴力的な父親からの逃避があると述べていることは、彼の人生やキャリア上の重要な決断に大きな影響を与えていると考えられます。このような困難な背景は、マスクのイノベーションへの取り組み方やリーダーシップスタイルに影響を及ぼしている可能性があり、彼のビジネス戦略やリスクをとる姿勢にその二面性が表れているかもしれません。

マスクの特異なマスクの人格と経験を考慮に入れることは、彼のビジネス上の成果とアプローチを解釈する上で重要です。彼の過去の経験や家族との関係が、彼の野心やビジョン、そして彼の成功に対する執念に影響を与えていることが分かります。 一方で、マスクの二面性は時に問題を引き起こしていることも事実です。彼の強い意志や傲慢な一面は、一部の人々から批判を浴びることもあります。

マスクがイノベーションを起こせた理由

マスクはペンシルバニア大学で物理学を学びました。特にロビン・レンとの実験や太陽電池に関する卒業論文は、後のビジネスに役立つことになります。これらの学びが彼のビジネス、特にテスラやソーラーシティに関連する事業の基盤となりました。

さらに、マスクはゲーム会社でのインターンシップを経験します。この経験を通じて、彼は単にお金を稼ぐことよりも、大きな野望を実現することの重要性を認識しました。この経験が彼の後のキャリアにおける動機と目標を形作るのに役立ちました。

人類に大きな影響を与えることがしたいと考えました。思いついたのは3つ。インターネットと持続可能エネルギーと宇宙旅行です。(イーロン・マスク)

3つのうちインターネットは、マスクが大学院を卒業するころには手遅れであったため、彼は持続可能エネルギーと宇宙にフォーカスします。

子供の頃のSFへの妄想と学生時代の学びと体験が組み合わさることで、テスラやスペースXが生まれていったのです。マスクはすべての経験を未来の自分のために活かすという姿勢を持ち、それが彼の成功へとつながっていきました。マスクのこれらの経験は、彼がビジョンを持ち、自身の野望に向かって進むことの重要性を示しています。彼は学んだこと、経験したことをすべて次のステップに活かし、数々の成功を手にします

マスクの直情的で非常識なアプローチ、決してあきらめない姿勢が、テスラやスペースXに驚異的な成長をもたらしました。例えば、彼の「マルチプラナリティ」の思考法や、大胆なビジョンを持つことで市場の常識を覆すことができるという信念、現場力が敗北寸前のチームを牽引したのです。

本書はイーロン・マスクの成功の背後にある複雑かつ得意な人間性や彼のビジョンに対する情熱を深く理解するための重要な資料になっています。アイザックソンのインタビューと洞察力によって、マスクの実態が明らかになったのです。

本日は上巻の起業前のエピソードから本書を解説しましたが、次回はTwitterの買収劇を中心に紹介しようと思います。

 

この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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