ウェルビーイング設計図: たった1枚の図で最高の人生はデザインできる(夏井大輝)の書評

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ウェルビーイング設計図: たった1枚の図で最高の人生はデザインできる
夏井大輝

ウェルビーイング設計図: たった1枚の図で最高の人生はデザインできる(夏井大輝)の要約

『ウェルビーイング設計図』は、脳科学・心理学・行動経済学の知見をもとに、誰もが実践できる人生デザインの指針を示した一冊です。健康・時間・お金を軸に、人生を豊かにする順序と仕組みを体系化し、PUABフレームワークで「時間の質」を高める方法を提案します。筋トレや思考習慣、好奇心を持った挑戦を通して、自分の価値観に基づく生き方をデザインする力を養うメソッドを教えてくれます。

ウェルビーイングを高める方法

誰でも正しい「思考」と「行動」を繰り返せば、あなたらしく生き生きとした人生を歩むことができます。結局、充実した人生を送れている人と、そうでない人の差は、ほとんどここにしかありません。(夏井大輝)

人生をより豊かに生きるために必要なことは、いったい何なのでしょうか。健康でしょうか。お金でしょうか。自由な時間でしょうか。それとも、やりがいや生きがいを感じられる目的を持つことでしょうか。

この永遠のテーマに対して、夏井大輝氏はウェルビーイング設計図: たった1枚の図で最高の人生はデザインできるの中で、極めて実践的な答えを提示しています。まさに、人生という大きな旅路をどのようにデザインするのか、その地図を一枚の図に凝縮したような一冊です。

著者はウェルビーイングを、「健康を基盤に、自由とウェルネスが調和し、人生を満ち足りたものにし続けること」と定義します。そして、その複雑に感じられる人生設計を、一枚の設計図に落とし込み、人生を3つのフェーズ──健康基盤フェーズ、選択実行フェーズ、選択拡張フェーズ──で整理しています。

この流れを可視化することで、私たちの行動と選択に、明確な順序と意味が生まれます。 設計図の最初に位置づけられているのが「健康基盤フェーズ」です。

人生を設計するうえで、まず整えるべきは間違いなく健康です。食事、睡眠、運動、筋トレといった日常の習慣が、思考力や行動力、そして創造力の源になるからです。私も18年前に断酒し、健康を意識し始めてから、幸福度が高まりました。

著者の運動に関する考察は、非常に科学的で説得力があります。筋トレを行うことで、脳の前頭前野が活性化し、意思決定力や集中力といった認知機能が高まること。有酸素運動を取り入れることで、記憶を司る海馬が刺激され、学習能力や記憶力が向上すること。そして筋肉を鍛えることによって、ミトコンドリアの生成が促され、体全体のエネルギー生産力が上がること。

これらの効果がエビデンスに基づいて丁寧に説明されており、「運動が心身のパフォーマンスを底上げする最も確実な方法である」という著者の主張に、深い納得感を与えてくれます。

中でも印象的なのは、著者が筋肉を「人体最大の臓器」として捉えている点です。筋肉は単に身体を動かすための組織ではなく、マイオカインやドーパミン、テストステロンといった「感情化学物質」を分泌し、私たちのメンタルやモチベーションに直接的な影響を与えているという視点です。

これにより、筋トレは体力づくりにとどまらず、感情や思考、行動にまで波及する全身スイッチとして機能することがわかります。

加えて、著者が強調するのが「作業興奮」というメカニズムです。小さな行動を起点に、脳内の側坐核が刺激され、やる気の源であるドーパミンが分泌される。この仕組みによって、最初の一歩こそ重く感じるものの、一度動き出せば行動が次の行動を生み出し、自然と加速がついていくという感覚が生まれるのです。

「コンディション」という土台が整うことで、ようやく「思考」や「行動」のフェーズに本格的に進む準備が整います。ここで鍵となるのが、著者が提唱する「時間的ウェルネス」という新しい視点です。自由な時間が適切であれば、私たちの幸福度は高まることが明らかになっています。

人生の充実度を決めるのは、与えられた時間の量ではなく、その時間をどう使うかという質なのです。 自由時間が少なすぎる「時間貧困」の状態でも、逆に時間を持て余す「時間過多」の状態でも、私たちの主観的な幸福感は下がってしまいます。

重要なのは、時間そのものではなく、それを自分の価値観や目的に沿って使えているかどうか。どれだけの時間を持っているかではなく、その時間をどのように選び、活かすかにこそ、ウェルビーイングの本質があるのです。

人生を豊かにするPUABフレームワークとは?

PDCAが「業務の質」を高めていくための枠組みであるのに対し、私が考案した「PUABフレームワーク」は、私たちの「時間の質」を高めていくための枠組みだ。

従来のウェルネス概念では見落とされがちだった「時間の使い方」に焦点をあて、著者はPUABフレームワーク(Purpose・Use・Autonomy・Balance)として時間的ウェルネスを整理しています。このフレームワークは、単なる時間管理術ではなく、自分の生き方そのものを内省し、再構築するためのステップになります。

「人生をデザインするとは、すなわち時間をどうデザインするかである」という著者の主張は、私たちが日々どんな行動を選び、何に時間を使うかを考えるうえで、大切な気づきと明確な指針を与えてくれます。

「Purpose(目的意識)」では、まず自分にとって本当に大切なものは何かを問い直すことから始まります。目的を持つことで、時間の使い方に方向性が生まれ、迷いが減ります。

次に「Use(使い方)」では、目的に沿った形で時間を配分しているかを見直し、無意識の時間消費を意識的な時間投資へと変えていきます。時間をただ過ごすのではなく、自分にとって価値ある活動に充てることが、満足感や達成感につながっていくのです。

「Autonomy(自律性)」では、自分の時間を他人や環境に流されることなく、自らの意思で選び取っているかを振り返ります。誰かの期待に応えるためだけに動くのではなく、自分にとって意味のある行動を選び続けることが、長期的な幸福感を支えます。

そして「Balance(バランス)」では、仕事、休息、学び、遊びといった異なる時間の領域が一方に偏らず、バランスよく配置されているかを見つめ直します。バランスが崩れれば、どんなに目的が明確でも燃え尽きてしまうリスクがあります。

PUABは、時間を「管理する」ためのツールではなく、自分らしい生き方をデザインするための実践的なフレームワークです。私たちが「時間が足りない」と感じるとき、その多くは時間そのものではなく、時間の質が低下していることに原因があります。

PUABを通じて、時間に対する感度を高め、何にエネルギーを使うかを意識的に選ぶことで、私たちは人生の主導権をしっかりと取り戻すことができるのです。

人生を充実させたいなら、自分にとって「意味」と「価値」がある時間を、自律的に選び取ることが欠かせません。他人の期待や社会のペースに合わせるのではなく、自分の軸で時間を使うこと。これこそが、真のウェルビーイングへの第一歩になるのです。

行動を積み重ねていくうちに、それはやがて「習慣」となり、揺るぎない自信に変わっていきます。私自身、40代後半でブログを書き始めてから15年間、毎日一日も欠かさず継続しています。書くことが日常の一部になり、書かないと落ち着かない。それがまさに、習慣が自分を支える力に変わる瞬間です。

本書が強調しているのは、行動の前提としての「思考の質」を高めることです。どんなに計画を立てても、その行動を選び取る思考が整っていなければ成果にはつながりません。集中力が途切れるときは、たいてい「今、この瞬間」に意識がないとき。未来の不安や過去の後悔ではなく、いま目の前の行動に全エネルギーを注ぐことが、思考の質を上げる鍵になります。

本書では、このブログでもお馴染みの心理学や行動科学の理論も多く紹介されています。キャロル・ドゥエックの「成長マインドセット」は、努力によって能力を高められるという信念が挑戦を後押しするという考え方です。これは単なるポジティブ思考ではなく、自分を信じて行動を継続できる“内なる推進力”を生むものです。(キャロル・ドゥエックの関連記事

アンジェラ・ダックワースの「GRIT(やり抜く力)」は、短期的な成果ではなく、粘り強く続ける力こそが成功をつくると説きます。努力を続けるうちに、自分にとっての意味や目的が形づくられていく。その過程こそが、人生を豊かにしてくれるのです。(アンジェラ・ダックワースの関連記事

そして、クランボルツ博士の「計画的偶発性理論」が示すのは、未来を完全に計画するのではなく、予期せぬ出来事をチャンスに変える柔軟な姿勢です。偶然を味方につけるには、常に動き続け、あらゆる経験を意味づけする思考の柔らかさが必要です。私たちが思う以上に、人生の転機は「意図せぬ行動」から生まれています。(J.D.クランボルツの関連記事

仕事においても、近年注目されているのが、エイミー・レズネスキー博士による「ジョブ・クラフティング」という考え方です。これは、与えられた業務の枠組みをただこなすのではなく、自分なりの視点で仕事に意味づけをし直し、自らの価値観や強みを活かして仕事を再構築するというアプローチです。

たとえ環境や役割に制約があったとしても、自分がどんな想いでその仕事に取り組むのか、誰のために貢献しているのかといった“意味”を自ら見出すことで、日々の業務はまったく違うものへと変わっていきます。単に「働く」から、「どう働くか」「誰にどう貢献するか」を意識的に選び取ることが、これからの時代の働き方だと感じています。 そして何より大切なのは、そこに好奇心を持ち続けることです。

どんな仕事であっても「もっと良くできる方法はないか?」「自分らしさを活かせる場面はないか?」と問い続ける姿勢が、自分の成長を加速させてくれます。小さなチャレンジを積み重ね、たとえうまくいかないときがあってもあきらめず、自分自身の仕事のあり方を探求し続けること。それこそが、やりがいや充実感を育む源なのではないでしょうか。

私自身、これらの理論を信じて実践するなかで、仕事との関係がポジティブに変化していきました。日々の業務の中に好奇心を持ち、試行錯誤を重ねることで、以前よりも前向きに、そして幸せな気持ちで働けるようになったと感じています。どんな職種であっても、自分の手で意味づけを変えることはできる──それは、働く人すべてに与えられた力なのです。

また、資本主義社会における生き方として、著者は「労働所得と資産所得のハイブリッド戦略」を提案しています。目の前の仕事で自分の価値を高めながら、将来のために資産を育てていく。この両輪をバランスよく回すことが、経済的な安心と心の自由を生み出すのです。

『ウェルビーイング設計図』は、脳科学、心理学、行動経済学といった最先端の知見をもとに、誰もが実践可能な行動指針を提示してくれる一冊です。単なる理論では終わらせず、行動につなげられる構成になっている点が、本書の大きな魅力だと感じます。

著者はこれまでに15,000件を超える文献を研究し、独自の思索を積み重ねてきたと言います。その圧倒的なインプットと粘り強い探究心が、一行一行に信頼感と説得力をもたらしており、読み手としても安心してページをめくることができます。

とくに印象的なのが、「健康→時間→お金」という人生設計のステップを提示している点です。私たちはどうしても目先の経済的な成果に目を奪われがちですが、長期的に見れば、健康な心身がなければ時間もお金も十分に活かしきれません。この順番は、より豊かに、より自分らしく生きるための本質を突いていると感じました。

結局のところ、人生の質を決めるのは他人でも環境でもなく、日々の選択の積み重ねです。どんな価値観を軸にして、どう時間を使うのか。外の正解を探し続けるより、自分自身の内側に問いを立て、自分らしい人生の舵を自分の手で握る──その勇気が、幸福への第一歩になるのだと思います。

『ウェルビーイング設計図』は、自分の価値観や生き方を見直し、「これからどう生きるか?」を真剣に考えたい方にとって、確かな羅針盤となる一冊です。迷ったときに何度でも立ち返ることができる、そんな信頼感のある人生の伴走者のような存在になるでしょう。

最強Appleフレームワーク

 

この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

Ewilジャパン取締役COO
Quants株式会社社外取締役
株式会社INFRECT取締役
Mamasan&Company 株式会社社外取締役
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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