理想の企業では、育てているのは最も優秀な社員だけではない。すべての社員を、本人の想像以上の水準にまで育て上げるのだ。こうした組織が考えるのは、社員ひとりひとりからどれだけ搾り取れるかではなく、社員の強みをどれだけ大きく伸ばせるかということだ。これこそが、「生産性の向上」の本当の意味である。生産性の高い組織が他の組織と異なる点は何か?1番はっきりしているのは、社員に対して継続的な投資を行うことだ。(ロブ・ゴーフィー&ガレス・ジョーンズ)
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だけど、最初に行ったときに、全然そんなことないと思った。僕がこれまで経験した中で、最高の出来事だった。25年かけなきゃできないことを、たった5年で経験できたんだ。(ライス・ブラウン)
組織を強くするためにリーダーがすべきこと
組織のリーダーはついつい優秀な部下の能力を伸ばそうとしますが
メンバー全員に能力開発のチャンスを与えたほうがよいと
ロブ・ゴーフィー&ガレス・ジョーンズは
DREAM WORKPLACE(ドリーム・ワークプレイス)で指摘します。
生産性を向上するためには、メンバーに対する継続的な投資が必要なのです。
本書には2012年のロンドンオリンピックのボランティアの事例が紹介されています。
社会的弱者にも価値を見出すことで、オリンピックを成功に導くだけでなく
彼らの学ぶ意識や労働環境も改善しました。
イギリス政府が主導し、他の州当局とのパートナーシップで
運営する「パーソナル・ベスト」では、身体障害や学習障害がある長期失業者などに
ボランティア活動を通して、仕事に必要な資格を得ることを目的にしました。
ボランティアたちがさらなる学習や雇用の機会を得られるように
指導員の派遣も行い、結果を残したのです。
「パーソナル・ベスト」に登録した人数は7500人を超え
のべ5万8000時間を超えるボランティア活動が円滑に行われました。
参加者の40パーセントが、黒人および少数民族のコミュニティ出身で
22パーセントが長期にわたる障害や健康問題、学習困難を抱えていました。
「パーソナル・ベスト」の卒業生のおよそ20パーセントが
オリンピック・パラリンピックの終了後
就職先を見つけるか、さらに訓練や教育を受ける道に進めました。
放っておけば彼らは底辺から抜け出せなかったはずですが
積極的に教育のチャンスを与えることで
多くの黒人や身体障害者などの社会的弱者を救うことができたのです。
今ではイングランドの54カ所にあるセンターで
「パーソナル・ベスト」プログラムを受けることができるそうです。
「パーソナル・ベスト」委員会には、新卒者を対象にした
「スクール・リーバー」というプログラムもあります。
イースト・ロンドン・エリアおよびイギリスの他のエリアの学校の卒業生に
まず、二つの分野の業務に3カ月間ずつ配置します。
そのプログラムを終了することで
オリンピック・パラリンピックが終わるまでの期間の雇用契約を結びます。
冒頭のライス・ブラウンというカリブ系アフリカ人の少年は
結局5年もの間、委員会で働いたのですが
当初は自信がなく、組織に加わることをためらったそうです。
しかし、自分が組織に適応できると知った瞬間に考え方が変わりました。
チャンスを得ること、自分の価値を知ることで
ポジティブに行動できるようになったのです。
「パーソナル・ベスト」委員会の影響は
2012年のオリンピックとパラリンピックの実施だけにとどまらず
それをはるかに超えて広がっていきました。
イギリス政府機関や民間の職業安定所と協働して
社会的弱者などの幅広い人材のスキルを活用することで
イギリスの雇用を改善したのです。
DREAM WORKPLACE(ドリーム・ワークプレイス) ー だれもが「最高の自分」になれる組織をつくる【電子書籍】[ ロブ・ゴーフィー ] |
社員の強みを引き出すのがリーダーの仕事
カインド・ヘルシー・スナックス社のケーススタディも参考になります。
同社のCEOダニエル・ルベツキーは、社員に愛情を持って接します。
一生懸命働くことに人生をささげてきた人が、解雇されてガードマンにドアから追い出されるような企業が存在する。あまりにも屈辱的で無礼な行為だと思う。(ダニエル・ルベツキー)
社員が目の前の仕事に適合していないからといって、解雇してはいけないのです。
ルベツキーは社員の能力向上を支援するために、積極的に活動します。
社員と積極的なコミュニケーションを行い、定期的にフィードバックします。
それだけでなく社員のスキルを伸ばすために
ルベツキーは社員と一緒になって
30日計画または60日計画を作り、社員の能力開発に努めます。
優秀とは思えない社員にもチャンスを与えることで
会社と社員が「WinーWin」の関係を築き、組織を強くしています。
同社の優しさ(KInd)が世界を変える力を持っているというメッセージが響きました。
本書のハイアールの張瑞敏の働き方に関する考え方にも共感を覚えました。
私は社員のひとりひとりに、会社のために価値を創造するだけでなく、社内に自分の価値を実感できる場所を見つけられるという感覚を得るために、働いてほしいと思っている。私は社員を過剰に管理したいとは思っていない。また、ある一定の規模にまで会社を拡大させることは、私の目指すところではない。世界の大企業500社のリストは、10年ごとに大きく入れ替わる。社員のひとりひとりに活力を注ぐことができなければ、単に規模が大きいというだけになり、それでは失敗を防ぐ手段にはならない。むしろ、私がハイアールに達してほしいと願っているレベルは、グローバル化したプラットフォーム上で全社員が自分自身の価値を創造できるというものだ。これを達成できれば、ハイアールは極めて競争力の高い企業になれる?(張瑞敏)
社員が自分の価値を実感できる場所を作れれれば
顧客から共感や支持を得られるようになります。
社員がクリエイティブに働く環境をリーダーが用意できれば
おのずと会社は強くなるはずです。
組織を強くするためにリーダーがとるべき5つのアクション
本書には組織を強くするための5つのアクションが紹介されています。
■能力開発のチャンスを与える。
■社員に価値を付加することと、組織として価値を生み出すことは、競合しないことを認識する。
■スター社員はそのまま輝かせ、業績の低い社員は成長させる。
■クライアントや顧客、コミュニティ、ステークホルダーとの関係に、特別な価値を付加することについて考える。
■組織が個人に価値を付加するために、外部の機会を活用する。
能力開発のチャンスを組織のメンバー全員に与えることです。
多様な個性がイノベーションを起こし、組織を強くします。
社員に価値を与え、認めることで、働くモチベーションが高まります。
まとめ
組織のリーダーは一部の優秀なメンバーを優遇するのではなく
組織のあらゆるメンバーの価値を引き出すべきです。
エリートだけでは社会との接点は持てませんし
イノベーションも起こせません。
顧客から共感を得たいのなら、社員全員を強くすると決め
彼らの価値を引き出すための投資を積極的に行うべきです。
参考図書 ロブ・ゴーフィー&ガレス・ジョーンズの
DREAM WORKPLACE(ドリーム・ワークプレイス)
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