住んでみた、わかった!イスラーム世界 目からウロコのドバイ暮らし6年間 (松原直美著)の書評

ドバイの書籍を探している中で見つけた一冊が
住んでみた、わかった!イスラーム世界 目からウロコのドバイ暮らし6年間
松原直美著)です。
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年間3000万人以上の観光客を世界一戦略で引き寄せるドバイですが
その国民性や宗教観、考え方などは、情報がとても少ないため
日本にいるだけでは、なかなかわかりません。
しかし、著者の松原直美氏は2006年からドバイで暮らし
UAE国立ザーイド大学にて日本語指導と空手道(千唐流)を教えていました。
そのため松原氏は現地の学生やその家族との交流を通じて
ドバイの国民たちの生活を体験していますから
本書の話にはリアリティーがあります。

例えば、UAEの人は香り好きで
特に香水はみんなを楽しませる道具になっていて
男女共に愛用しているなどという話は興味深く読めました。
人を香りで楽しませるという考え方は、日本人のお香にも通じて
ドバイの方々に親近感がわきました。
また、数字の1はアラーが唯一の神であるから好まれる!
UAEは7つの国で構成されているから「7」が好きなどという話は
本書を読んで初めて知りました。

私が特に興味を持ったのは、イスラーム教の「喜捨」です。
イスラーム教には5つの義務があると言われています。

■信仰告白(シャハーダ)「神はアッラーのみ」と証言すること。
■礼拝(サラー)一日五回神に祈ること。
■喜捨(ザカート)収入の一部を施すこと。
■断食(サウム)ラマダーン月の日中、飲食や性行為を慎むこと。
■巡礼(ハッジ)マッカのカアバ神殿に巡礼すること。

その喜捨についてのレポートが秀逸なので、以下引用します。

喜捨とはイスラーム教徒に義務づけられた五つの行いのうちのひとつです。喜捨には、預金の一定割合を捧げなくてはならない制度に基づく強制的な喜捨と自由な意志で行う喜捨の二種類があります。UAEでは人々が気軽に喜捨を行えるようショッピングモールや公共施設の出入り口に寄付金を入れる箱が用意されています。その箱が大学にも進出してきたのです。学食に置かれた装置の側面は透明なので、どのくらい寄付金が集まっているかを見ることができます。5ディルハム(約150円)や10ディルハム(約300円)札がたくさんたまっています。学生がちょっと寄付をしたい、というには程よい金額なのでしょう。日本では、国民が払う税金の中に国内外への援助資金が含まれています。一方、UAEは日本と税制が大きく異なり、国民が政府に支払わなくてはいけない課税項目が少ないです。

日本でもコンビニエンスストアやショッピングセンターで
寄付のボックスを見かけますが、あまり盛んとは言えません。
しかし、UAEでは大学でも喜捨が行われるなど
貧しい人に対する貢献の意識が高いようです。

その分、社会に対する喜捨が奨励されており、多くのUAE人が高額の喜捨をします。喜捨だけでなく、自分の施設や土地を公共のために提供することもあります。たとえば水飲み場の提供です。ドバイのまちなかには公共の水飲み場がたくさんあります。それらは繁華街ではなく、住宅街に多く見られます。「なぜこんな人の集まらないところにいくつも水飲み場があるのだろう」と疑問に感じたので、公務員のムニーラさんに質問したら明快な答えを与えてくれました。「その水飲み場は、水を欲するすべての人々に提供しているものです。誰かが水道の水を飲んだり使ったりすればするほど、水飲み場を設置した人が多くの善行を重ねたことになり、その人は楽園により近づくと考えられます」。この説明で、水飲み場の多くが住宅街にあることが理解できました。水飲み場は、たいていその近くの家の人が設置したものです。設置した人だけでなく、その家庭で既に亡くなった人、ずいぶん昔に亡くなった人も含めて、彼らが楽園に行くことを目的として作られたということです。亡くなった人でも、その人が残した財産を公衆のために使うなどの手段で、神が最後の審判を下す日まで善行を積めるのです。水飲み場の水を使っているのは、たいてい近隣で働く建設作業員、メイドやその子供、運転手などです。利用者にとってもありがたく、設置者にとっては利用者がいることがありたがいという、一石二鳥の水飲み場です。木を植えたり、モスクや学校、病院を作ったりしても善行が積めるそうです。

中東というと日本ではすぐにイスラム国がイメージされますが
ドバイの人たちが、私たちと同じ優しい人間であることがここからわかります。

ドバイは今後イスラムのハブとして、日本でも注目を集めるはずです。
その切ってもきれなくなるドバイについての入門書が
住んでみた、わかった!イスラーム世界なのです。
ドバイのリアルな情報が楽しめる一冊なので
UAEやドバイに興味のある方は、ぜひお読みくださいませ。

イスラム教や中東の報道は、日本ではとても恣意的ですが
日本のメディアの情報だけでは、イスラムの実態はわかりません。
現地を知っている人、体験した信頼できる人たちから
しっかりと話を聞くとよいでしょう。
今後、イスラム圏の人口が増加し、ビジネスの相手先になることを考えると
しっかりと情報を入手したほうが良さそうです。

今回、私もマーケッターの視点で、ドバイの今をお話しすることになりました。
昨年12月に私がドバイを訪問した時の話や
今後ドバイで可能性が高まるデリバリービジネスについて紹介するセミナーを
3月12日(木)19時に開催します。
日本の食ビジネスをDubaiへ ~注目する出前ビジネス~というテーマで
ドバイでの出前ニーズ、スキームおよび展開手法をご説明します。
ぜひ、ドバイでのビジネスに興味のある方はこちらのセミナーにご参加下さい。

今日もお読みいただき、ありがとうございました。

  

この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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