科学には何かしらワクワクさせるものがある。わずかばかりの事実から、あれこれ想像できるのだから。(マーク トウェイン)
うつ病患者の約3分の2にある程度の効果が見られるが、世界最高の治療を尽くしたとしても、往々にして治療には経験に基づいた推測が伴う。うつ病をわずらう知り合いは、定期的に医師の指示のもとで薬の種類と容量を見直している。薬の候補はそう多くなく、20年以上使いつづけている治療法を、医師が直観と経験に基づいて微調整しているにすぎない。その患者の病歴や遺伝的特質を踏まえて治療法を選択するのではなく、トライ・アンド・エラーの色合いが濃い。(アレック・ロス)
未来化する社会 世界72億人のパラダイムシフトが始まった(アレック・ロス著)を読むと
ゲノム技術によって、私たちの脳を明るくできることがわかります。
現在のうつの治療は医師の経験に基づいているため
薬を間違えると治療が上手くいかないという問題点があります。
メンタルの疾患で扱いがむずかしいのは、ひとつの遺伝子変異で発症するハンチントン病のような病気とはちがって、多くの因子がかかわることだ。うつ病などのメンタルの不調にかかわるリスク遺伝子は数十個から数百個ある。脳は多層構造になっているため、ガンの性向を突き止めたり、ハンチントン病の遺伝子を検査したりするよりもずっとむずかしい。
しかし、ゲノム技術の進化は、うつの治療法も変えようとしています。
うつのリスク遺伝子は複雑で、謎だらけなのですが
それでも研究者たちは遺伝子の解明を続けています。
ほんの数年前には統合失調症に作用する遺伝子はほとんどわかっていなかったのですが
今は100個ほどの遺伝子が見つかり、新薬の開発への道を開いています。
この数年でメンタルヘルスの治療でも、医者の勘に頼らなくなれば
もっと多くの患者たちを助けられるはずです。
日本にも多くのうつで悩む患者さんがいますが
この技術の進歩は、彼らやその家族にとって朗報なはずです。
うつで苦しむ患者が、この日本でも減ることを私も期待しています。
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自殺予防という分野での適用も広がりが期待される。アメリカでは、死亡者の1・4パ ーセントが自殺で、人口の4・6パーセントが自殺を試みたことがある。おじレイ・デパウロのジョンズ・ホプキンスの同僚が、双極性障害のある成人2700人のDNAを調査したとき、そのうちの1201人に自殺しようとした経験があった。おじたちは、自殺未遂者の脳に過剰に見られるタンパク質の生成元、遺伝子ACP1を特定した
また、ゲノム技術は自殺予防にも効果があることがわかってきました。
自殺大国日本にとっても、これは嬉しいニュースです。
自殺未遂者の遺伝子ACP1が見つかったことで
リスクのある患者を薬剤によって、治療できるようになるのです。
あるいは、新しい治療法が見つかるかもしれません。
自殺者が減るなら、薬物治療という選択肢も検討する必要があるかもしれません。
日本の貴重な人材をこれ以上失わないためにも、よい治療法が早く見つかることを望みます。
最後にアレック・ロスの未来予測を紹介して終わります。
ライフサイエンスという分野は、これからの数年で判明する事実に比べれば、あきれるほど少ない情報量でずっと研究が続いてきた。われわれは、トウェインの感慨を歴史的事実にしようとしている。これまで何世紀もかかって突き止めてきたことよりもはるかに多くをこれからの20年で突き止めようとしている。ゲノミクスは人の寿命を延ばし、いま年間何十万もの命を奪っている病気をほぼ打ち負かし、1兆ドル産業になるだろう。
今日もお読みいただき、ありがとうございました!
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