エリック・バーカーの残酷すぎる成功法則の書評

変わり者になることを厭わない者があまりにも少ないこと、それこそがわれらの時代の根本的な危機なのだ。(ジョン・スチュアート・ミル)


photo credit: Franckfbe Sir Winston Churchill via photopin (license)

エリートから成功者が生まれない理由

翻訳本の良い点は著者の主張が、論分やエビデンスによって
しっかりと裏付けられていることです。
経済行動学、心理学や脳科学の翻訳本は
著者の主張が論理的に語られ、それがエビデンスや論文によって
担保されているので、それを信じることができました。
しかし、自己啓発本では著者の考えや体験が正しいのかどうかを
検証できていないものが多かったため
何が正しく、その情報を信じていいのかが明らかではありませんでした。
著者の成功体験に再現性があるものの方が実践する価値があります。

そんな自己啓発本のカテゴリーについに良書が登場しました。
ブロガーのエリック・バーカーが、世の中に流布する成功ルールを
全てエビデンスベースでで分析・検証し
一冊の書籍残酷すぎる成功法則にまとめてくれました。

本書を読むことで、私たちは正しい成功法則を理解でき
自分が何をすればよいかがわかるようになったのです。
自己啓発本に誤りがあった場合にそれに気づけ
間違った木を目指さなくてすみます。
(本書の原題はBREAKING UP THE WRONG TERRです。)

今日は第1章の「成功者はエリートコースを目指すべきか?」について
考えていきたいと思います。
残酷なことに高校時代のエリートから成功者が生まれないことが
データ上明らかになっているのです。

ボストン・カレッジの研究者カレン・アーノルドは
1980年代、1990年代にイリノイ州の高校を首席で
卒業した81人のその後を追跡調査しました。
彼らの95%が大学に進学し、学部での成績平均はGPA3・6で
とても優秀な結果を残しました。
(3・5以上は非常に優秀とされ、2・5が平均、2以下は標準以下)
さらにそのうちの60%が1994年までに大学院の学位を取得しました。
彼らの90%が専門的キャリアを積み
40%が弁護士、医師、エンジニアなど、社会的評価の高い専門職に就いたのです。

彼らは堅実で信頼され、社会への順応性も高く、多くの者が総じて恵まれた暮らしをしていた。しかし彼らのなかに、世界を変革したり、動かしたり、あるいは世界中の人びとに感銘を与えるまでになる者が何人いただろう?答えはゼロのようだ。(エリック・バーカー)

首席たちの多くは仕事で順調に業績を重ねますが
大きな成功を彼らは目指していないのです。
彼らの圧倒的多数はリーダーシップを発揮するのではなく
会社のシステムに同化することを選びます。
学校で優秀な成績をおさめる資質そのものが
一般社会でホームランバッターになる資質と
相反するという調査結果もあります。
学校の成功体験は、複雑で予期せぬ現実の前では変革を起こせないのです。

高校でのナンバー1がめったに実社会で成功しないのには
以下の2つの理由があります。

第1に、学校とは、言われたことをきちんとする能力に報いる場所だからだ。学力と知的能力の相関関係は必ずしも高くない(IQの測定には、全国的な統一テストのほうが向いている)。学校での成績は、むしろ自己規律、真面目さ、従順さを示すのに最適な指標である。

優秀な生徒は規則に従い、学校のシステムに順応します。 
彼らは自分がクラスで一番勤勉だっただけで
一番賢い子はほかにいたことを認めています。
首席だった被験者の大半は学ぶことではなく
良い点を取ることを自分の仕事と考えていたのです。
残念ながら、ここからは世の中を変革するようなアイデアや
リーダーシップは生まれてきそうにもありません。

第2の理由は、すべての科目で良い点を取るゼネラリストに報いる学校のカリキュラムにある。学生の情熱や専門的知識はあまり評価しない。ところが、実社会ではその逆だ。

高校ではゼネラリストになることが優秀の証ですが
会社ではスペシャリストが求められています。
抜きん出た何かを持っていないエリート達は
社会に出た後のすごい結果を残せないことがわかっているのです。

一体誰が成功するのか?

優秀な人間は仕事でも私生活でも万事そつなくこなしますが
一つの領域に全身全霊で打ち込目ません。
どんなに数学が好きな学生でも、首席になりたければ
歴史や化学でも優秀な成績を取るために
数学の勉強を途中でやめなければなりません。
学校のシステムは専門知識を磨くことには向いていないのです。
特定分野で抜きんでることは難しく
自分の強みを意識せずに社会に出て行ってしまいます。

一方、社会では特定分野でのスキルが高く評価され
ほかの分野での能力はあまり問われないという現実があります。
定められた道筋がない社会に出ると途端に
優等生たちはしばしば勢いを失ってしまいます。

ハーバード大学のショーン・エイカーの研究でも
大学での成績とその後の人生での成功は関係がないことが裏づけられました。
700人以上のアメリカの富豪の大学時代のGPAは
なんと「中の上」程度の2・9だったのです。

ルールに従う生き方は、成功を生まない。良くも悪くも両極端を排除するからだ。おおむね安泰で負のリスクを排除するかわりに、目覚ましい功績の芽も摘んでしまう。ちょうど車のエンジンにガバナー(調速機)をつけて、制限速度を超えないようにするのと同じだ。致死的な事故に遭う可能性は大幅に減るが、最速記録を更新することもなくなる。

成績優秀者が成功しないとしたなら
いったいどういう人が成功するのでしょうか?

本書ではチャーチルやグレン・グールドなど
自分の欠点を強みに変えている人たちが紹介されています。

ユニークな資質とは、日ごろはネガティブな性質、欠点だと捉えられていながら、ある特殊な状況下で強みになるものだ。

チャーチルはナチスの時代だからこそ
自分の偏執的な国防意識を強みに変え
ナチスの実態を見抜くことでイギリスの首相になれたのです。
タイミングと環境がマッチしなければ
彼はここまで成功できなかったはずです。
このように自分の弱みに思えることが強みになることもあるのです。

多くの人たちは最良を目指しますが
変人を目指す方が成功の確率が高まると
エリック・パーカーは指摘します。

私たちは「最良」になろうとしてあまりに多くの時間を費やすが、多くの場合「最良」とはたんに世間並みということだ。卓越した人になるには、一風変わった人間になるべきだ。そのためには、世間一般の尺度に従っていてはいけない。

自分の一番の個性こそが最良を作り出すのです。
そして、自分の強みに環境を掛け合わせることが成功を引き寄せます。
勉強でAが取れたからといって、それを生かす環境がフィットしなければ
仕事での功績に転換できるわけではありません。
成功するためには、自分をよく知り、強みを見つけることです。
その際、その強みが生かされる場所を探しましょう。

自分をよく知り、正しい”池”を選択する。すなわち、自分なりの強みを見きわめ、それを最大限に活用できる場所を見つけるのである。

私は広告会社をやめた後、自分の強みを徹底的に考えました。
マーケティングと人を元気にできることが自分の強みだと気づき
ベンチャー支援や起業のためのコーチングが
自分の力を発揮できる場所であることを見つけました。
強みを探すだけでなく、そのための正しい池を探しましょう。

まとめ

成績優秀者はジェネラリストになってしまうため
彼らには抜きん出た強みがなく、平均的な人生を送ることになります。
成功するためには自分の強みを明らかにすることが必要で
専門分野に特化し、変人になるぐらいの情熱を持って、行動する必要があります。
強みを持つだけでなく、それを生かせる環境で勝負することで
私たちは成功を手に入れられます。

今日もお読みいただき、ありがとうございました。

      

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この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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