アルバロ・フェルナンデスとエルコノン・ゴールドバーグの脳を最適化する ブレインフィットネス完全ガイドの書評

リタイア後の資金のために数十年間投資しても、そのリタイア後の人生を楽しむためになによりも大切な脳の健康と認知力に投資せずにいたら、すべての努力が水泡に帰してしまうこともある。(アルバロ・フェルナンデス、エルコノン・ゴールドバーグ)

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脳の働きをよくすることで人生がもっともっと楽しくなる!

アルバロ・フェルナンデスエルコノン・ゴールドバーグ脳を最適化する ブレインフィットネス完全ガイドを読了しました!著者はよく発達した健康的な脳が、人生のどんな局面においても大切な役割を果たしてくれると述べています。ヒトの脳は、学び続け、適応し続けることで、進化してきたのです。

私たちの思考や感情、行動のパターンは、その人ごとに異なります。注意力やワーキングメモリなどの認知機能や感情機能の集まり方によって、私たちは自分の行動を決めています。脳の中で相互に結びついたニューロンのネットワークが、私たちの次の行動を促しているのです。ヒトの脳は学習や体験による刺激に応え、生涯にわたって変化・再編成していくことがわかっています。これを脳の可塑性と言いますが、遺伝だけでなく、新たな学びや体験が脳を変えていく重要な要素になっているのです。

感情は、生理的・身体的体験と心理的・認知的体験を併せ持っている。感情は動機に深くかかわっていて、時として行動に先立ち(たとえば、怒りを感じて→相手に抗議する)、時として行動に続く(たとえば、だれかを助けて→幸福感を感じる)。感覚は感情の一端を担っていて、その感情に気づかせたり、感情を特徴づけたりする。認知力と感情は、脳が正常に機能する上で欠かせないものだ。

ロバート・シルウェスター博士は感情、注意力、認知についての整理がわかりやすく、秀逸でした。感情はある出来事やものが、私たちにどれほど重要かを教えてくれるシステムです。注意力は、その人にとって重要なものに焦点を当てさせ、重要でないものから焦点を逸らせる能力です。そして、認知作用は、そこにあるものがなんで、どうしたらよいかを私たちに教えてくれます。認知技術は目的を実現するための技術なのです。

シルウェスター博士は最近、ミステリー小説を積極的に読んでいるそうです。ミステリー小説を読むと脳に様々な刺激を与えることができ、脳が進化していることを実感したそうです。良質なミステリーには巧妙な筋書きがあり、複雑な背景を携えた人物が登場します。著者が描いた完璧なストーリーの要素をすべてを記憶し、エンディングを予測するには前頭葉を使う必要があります。筋書きはもつれ、反転し、人物像は変化します。場所や時間軸もからんでくるといった具合に複雑なストーリーを楽しむために、脳はフル回転しているのです。

本書のジェームズ・ズール博士のインタビューを読みましたが、学習サイクルには次の4つの段階があるそうです。
第1ステージ:具体的な経験をする
第2ステージ:その経験を検証して自分がすでに持っている情報とのつながりを見出だす
第3ステージ:仮説を立てる
第4ステージ:その仮説を能動的にテストする
能動的に第4ステージに踏み出すことで、私たちは新たな経験をします。そこから、次の学習サイクルが始まるのです。このステップを繰り返すことで、私たちは成長していきます。

脳内での働きからいえば、(感覚野を活性化させて)情報を得て、(後連合野のなかで)その情報に意味を与え、(前連合野のなかで)その意味から新しいアイデアを生み出し、(運動野を使いながら)そのアイデアを実行しています。以上のことから、私は、学習には、収集、分析、創造、実行の4つの柱があるのではないかと考えました。これが、本来的な意味での”学習”だと思います。しかし、この方法で学ぶには、努力すること、今いる快適なゾーンから出ることが求められます。(ジェームズ・ズール)

自分を突き動かす動機をもち、学ぶ当事者になることで人生は変わります。日々、自分に刺激を与え、進歩していると自己評価を与えることが重要です。

ズール博士もニューロンのつながりを増やすことで、脳はいくつになっても変わり続けると指摘します。

何歳になっても学習は重要な意味を持っています。学び、新しい環境に適応できる脳を持っているからです。学校にいるときだけでなく、単ぶことは人生の本質であるとも言えるでしょうね。脳は何歳になっても変わりうることがわかっています。ニューロンは、同じ場所が繰り返し使われると新しいつながりを増やしていくので、実際、学習に限界はないと言えます。なので、いくつになっても、自分を学習へと動機づけていく能力を開発すべきだと思いますよ。

すでに学んでいることとこれから学びたいことの間のつながりを強化しましょう。自分の脳を庭と考え、良き園芸家になって神経細胞間のネットワークをしっかりと耕していくのです。

マインドフルネスも脳に効果がある!

最近、私たちは、1か月間(日に30分、1週間に5日、計11時間)のマインドフルネス瞑想が、注意力や自己調整力を改善するメ力ニズムを発見しました。マインドフルネス瞑想が、前帯状回に出入りする電気信号を伝えている白質に変化を起こすのです。(マイケル・ポスナー)

今、話題のマインドフルネスも脳に良い変化を与えてくれることがわかっています。行動を自主的に制御するシステムにおいて大切な領域の前帯状回に瞑想がよい影響を及ぼします。瞑想を2週間行なったあとの被験者の脳を調べると、前帯状回内で情報を伝達する神経線維が増えていることが確認できたそうです。

神経線維の増加によって、ポジティブな気分でいることが多くなり、ネガティブな気分でいることが少なくなるという報告もあるなど、瞑想が脳の状態を改善してくれます。4週間の瞑想を行うと神経線維を覆う膜であるミエリン鞘の質が向上します。このミエリン鞘には、神経線維を伝わっていく電気信号が漏れないように絶縁する役割があり、これによって自己調整にかかわるネットワークの効率性が向上するのです。

2004年にリチャード・デビッドソンやアントワーヌ・ルッツたちの研究からも瞑想の素晴らしさを理解できます。修練を1万時間以上積んだ瞑想者はガンマ波(ある焦点に注意を集中させる働きにかかわっている脳波)の活性が高いこと、瞑想すればするほどガンマ波が活性化することが明らかになりました。また、2012年のルーダースらの研究によって、瞑想者たちが記憶のコントロールセンターである海馬の容量を増加させていることもわかりました。ホルゼルは、8週間の瞑想を行なえば、大脳皮質の灰白質密度を高める可能性がだれにでも出ると述べています。私も3年前から、瞑想を取り入れていますが、集中力がアップしたり、ネガティブな感情を減らすことができるなど効果を感じています。これらの研究結果を読んで、瞑想をもっと続けていこうと思いました。

脳を変えることで私たちの行動が変わり、人生が豊かになります。多くの病気を予防できるのです。

脳を変えることは、行動を変えることを意味します。多くの病気が予防できるということを私たちは知っていますが、病気予防には意識的な行動が欠かせません。そのため、行動を変えることが病気予防の要になります。心血管系の病気、がん、糖尿病などはすべて、ふだんの行動から影響を受けます。とくに、ストレスにどう対処するかです。発がんリスクについて言えば、日焼け止めを塗るかどうか、タバコを吸うかどうかが影響します。現在の行動が長期にわたるとどんな結果をもたらすかを理解し、行動を変化させる必要があるのです。(ロバート・ M・ビルダー)

アルバロ・パスカル=レオーネ博士も脳と健康の関係について語っています。脳が健康であれば生涯にわたって、私たちは知力を維持できます。人生100年時代を楽しむためには、脳の健康を維持しなければなりません。脳の健康を保つことで、身体全体を健康にできます。私たちの脳は外の世界と相互作用しているだけでなく、なにかおかしなところがないか内部世界を監視しています。健全な身体を保つことは健全な脳を保つために大切ですが、同じように、健全な脳を保つことが健全な身体を維持してくれます。

脳には1000億のニューロンがあります。それぞれのニューロンには、ほかのニューロンとつながるおよそ1万のシナプスがあります。私たちは全部で100京(10の18乗)のシナプスを持っていて、ニューロン間で、毎秒100京の情報を処理することが可能なのです。このことからわかるように、健康的な脳は、複雑でダイナミック、そして効率的なシステムです。健康的な脳の主な特質のひとつは、修正され続けること、つまり可塑的であり続けることにあります。(アルバロ・パスカル=レオーネ)

世界の変化は急激で、私たちの遺伝子はその変化に対応できずにいます。その都度、遺伝子を書き換えていては間に合わないために、私たちの祖先が「神経可塑性」を生み出したのです。健康的な脳とは、適切な可塑性を持った脳を持つことで、変化することが欠かせません。有益な形でこの可塑性を促すには、新しい技術を習得させるなど、脳になにかチャレンジを課すことが大切です。たくさんの本を読み、知的活動に従事している人は、ダンスの練習などの身体的活動を増やしましょう。反対に、身体活動が多い人であれば、読書とか、母国語とは違う言語を学ぶとよいそうです。脳を進化させるためには、自分が今までやったことのない技術を選ぶ必要があるのです。また、学び続けることも大切です。

レオーネ博士は良質な睡眠と運動を心がけるべきだと述べています。

たとえば、質がよい睡眠はとても大切です。力ロリーの摂りすぎはよくなくて、バランスのとれた食事と適切な体重を維持することは心がけたい。定期的な運動は絶対といっていいほど大切なものです。過剰な運動は必要ではなく、1日15分から30分のエアロビクスを続けるといった定期的な運動が求められます。駐車場からオフィスまで歩くのではなく、走るために外に出るのです。社会的なつながりも重要で、社会的ストレスは脳に悪影響を及ぼします。ボランティアで、だれかを援助するような活動に参加することも好ましい。オンラインでも、対面して行なうものでも、どちらでも有効ですよ。化学物質も脳に劇的な影響を及ぼすので、医者に処方される薬剤にも注意が必要です。

アーサー ・クレイマ博士も座りっぱなしの生活では脳をダメにすると言います。デスクでの作業は認知機能に悪影響を及ぼします。社会的に交流しながら、身体的刺激と知的刺激を融合させる方法が脳のためにはベストな選択だと指摘します。たとえば、ある本について友人と議論しながらウォーキングするのがよいそうです。歩きながら、本について語り合えば、一石二鳥で脳をよりよい状態に保ています。

まとめ

人生100年時代を楽しむために、脳の健康を維持する必要があります。脳はいくつになっても進化することがわかっているので、日々脳に刺激を与えるようにしましょう。新しいことにチャレンジする、瞑想、良質な睡眠、有酸素運動などが脳の状態を改善します。いくつになっても脳は変化するので、自分の脳を最適化するための行動を習慣にすべきです。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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